126.地上へ
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今後もよろしくお願いします。
通話の腕輪を切り、テイルの存在を感じた方向に向かって一直線に走っていく。方角確申があるので、いつの間にか途中で曲がってしまった、なんてことが無い。
魔力探知で地中におかしな場所が無いか探しながら走り続けて10分程経ったとき、魔力に違和感を感じる場所を見つけた。
「ここか!?」
数歩下がった場所で地面に穴を開ける。
「孔創作!瞬間補強!」
穴の深さを4mに設定して穴を開けると、運良く地下道に繋がった。穴に飛び込むと同時に、氷柱が飛んできた。
「うぉっ!?」
空中に居たので回避はできなかったが、俺には射氷の耐性があるので効かなかった。
「あっ!ハルカ!」
声のした方、射氷が飛んできた方を見ると、テイルがスライフに囲まれていた。それも、狭い空間に大量のスライフがいるせいで、だいぶ押されていた。確かに死にそうではあるが、通話の声が荒くなかったのはこのせいか。
「まったく、鞭を使えば良いじゃないか。」
そう言いながらテイルに纏わりついているヤツや足下にいるヤツの核を剣で潰していく。
「いやぁ、それが、鞭を上手く扱えなくて・・・」
マジかそれ。流輝鞭って【傀儡師】専用の武器なのに、それを扱えないのは問題だろ。今後練習の必要があるな。
テイルを巻き込んでしまうので魔法を使うわけにもいかず、一匹一匹潰していくという地味な作業が続いた。ただ、いくらスライフといえど、長時間くっつかれ続ければ溶かせれていって死んでしまう可能性もある危険な魔物だ。急いで倒しきらなれければならない。
「こいつで最後だな。」
ざくっ
辺りにいたスライフを全部倒しきり、地面には死体が転がっている。死体といっても生々しい物じゃないので別に良いが、数が問題だ。70匹以上はいただろう。スライフの体は素材として売れるので、無限収納に仕舞い込む。
「よし、それじゃあテイル、テントに向かうk・・ぶっ!ちょ、おま//何でそんな格好してるんだ///!」
スライフを倒す事と仕舞う事に集中していてテイルの格好を見ていなかったが、改めて見ると服の所々がスライフに溶かされ、結構際どい状態だった。辛うじて何も見えていないものの、この格好で街を歩いたら捕まる、そういった感じだ。
「ちょっ///見てないで早く換えの服を渡しなさいよ!」
「見てねぇよ!ほ、ほら!」
「替装!」
「・・・もういいか?」
「良いわよ。ありがとうハルカ。助けに来てくれて。」
服を替えたテイルと一緒に補強された穴を通って地上に出る。憶録道標でテントの位置を探し、歩いていく。途中でタイラメが飛び出してきたときは一瞬身構えたが、それは普通のタイラメだった。
テントの近くに来た時もメギジージンが襲って来ないか注意深く確認していたが、俺達が砂に埋もれて死んだと思い込んだのか、どこにもいなかった。
「それじゃ時間も遅いし、順番に見張りながら寝ましょう。」
「そうだな。」
前にシィ砂漠で夜を越したときは一人だったので見張りという考えが無かったが、今は二人居るうえにメギジージンの恐怖があるので、4時間ごとに見張りを交代しながら寝ることに決めた。
「じゃ、おやすみハルカ。見張り、頼んだわよ。」
がさがさ
そう言ってテイルはテントの中に入っていった。
「え?俺が先に見張りなの?」
「当たり前でしょ?じゃあね。」
顔だけテントから出して俺の質問をバッサリ斬り捨て、さっ、と引っ込んでいった。
仕方なくテントの外に残り、見張りを始める。見張り、といっても何か生き物が近づいてくれば魔力探知で気付くことができる。テントの入り口に座り込み、星を眺める。砂漠で明かりが無い場所なので綺麗に見える。
そういえばこのテントの辺りもメギジージンの能力の被害を受けていただろうに、しっかりと建ち続けているこのテントは予想以上に丈夫な作りらしい。
―――なんだか、懐かしいな。
星を眺めていたら、この世界に来る数日前に高校の林間学校で夜に見た星空を思い出した。この世界にも、星座はあるんだろうか。
「あれはパウパティ座、あっちはスカラピア座、あそこはモウラヘイラ座・・・なんちゃって・・・。」
―――俺が死んで、悲しんだ人は何人居ただろう。両親は悲しんだと思うが、ほとんど関わりの無かった親族は怪しい所だ。学校の同級生はどうだろうか。特に仲良くもない、関りも無かったんだから、5日もすれば忘れるのだろう。もっと早いかもしれない。
そんな事は俺にとってはどうでも良い。俺としてはこっちで友達も沢山でき、命の危険もあるが楽しい日々を送っているのだ。ゲームができないことを除けば、こっちの方が良いとも思ってしまう。・・・ただ、それでも、やはり地球に戻りたいとも感じる。一日、いや二日、二日で良いから帰りたい。
涙が流れかけたその瞬間、
―――っ!
「俺の感動シーンを邪魔する奴はどこのどいつだぁー!」
星空を見るために切っていた暗視を発動させ、魔力を感じた方を見ると、ベムが砂の上を滑ってきていた。
「お前かぁ!塊炎!」
テントの前が火の海と化し、暗視を切っても視界が確保される明るさになった。ちょっと力を入れ過ぎたせいか、心なしか火力が強い気がする。
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