124.メギジージン
好きな漢字は『影』のYOPPYです。
「チッ・・・テイル!一回俺を引き上げてくれ!」
「物体操作!」
テイルのスキルで俺は砂から脱出することができた。だが、このまま着地しては元も子もない。
「射氷!」
地面向かって吹雪を吹かせると、ところどころが凍った。まずは氷の上に着地、さらにジャンプ!
「テイル!」
「物体操作!」
そろそろ体の半分が埋まろうとしていたテイルが空中に飛び出してきた。なんとか二人とも脱出だ。―――しかし、凍らせた砂すらも他の砂に飲み込まれていき、氷の地面はもう無い。
「ハルカ、一瞬沈んでて!物体操作!」
テイルから恐怖の命令が下ったが、とりあえず従う。すると、テイルは空中から地面に向かって両手をかざし、空中で止まった。
「できたわ!常に砂を押していれば、空中で止まれるわ!」
「うん、流石だな。とりあえず引き上げてくれ。」
テイルは片手で地面を押し続けることで浮きながら、もう片手で俺を空中に持ってきてくれた。テイルは両手が塞がった状態ではあるが、俺への片手を解除すれば両手を使って素早い移動もできるだろうし、攻撃の回避は自分で頼もう。俺とテイル、メギジージンの三者が空中で睨み合う。
「さて、メギジージン!倒させてもらうぞ!」
テイルの操作で俺が一直線にメギジージンに向かって飛んでいく。剣を構えると、攻撃強化の効果で橙色に輝いた。
一方俺の動きを見たメギジージンは、体を赤茶色に光らせ、その巨体を一回転させて高速で泥の塊を飛ばしてきた。能力だろうか、俺が走るスピードよりも速く飛んでくる泥の塊にテイルが反応できるはずもなく、剣で防ぐしかない。
どしゃっ!どしゃっ!
俺にあたりそうだった2つだけを剣で防いだ。威力はそこまでなかったので反動は無い。剣についた泥を振り落とすために空振りする。泥が付いていると斬れないからな。
「マジかこれ・・・」
しかし、全く泥は取れる気配を見せない。メギジージンに向かってそれなりのスピードで飛んでいるので、もう時間も無い。ヤバい。どうしよう。
「テイル!一回ストップだ!塊水!」
剣が使えなさそうなので、魔法に切り替える。大量の水が剣先から放たれ、メギジージンを沈める。出した水で泥が落ちないか試したが、泥が特殊なのか落ちない。だが、巨大な水の球は収縮を始めた。―――いや、収縮しているのでない!メギジージンが飲み込み、えらから出している。魔法って、えらを通ると無効化されるのかよ。というか、空を飛んだり地面から出てきたりしたから、えら呼吸という事を忘れていた。
「だったら、塊炎!」
―――ギェィッ!
メギジージンの鳴き声とともに砂が巻き上げられ、炎は砂に遮られてしまった。砂を操る能力、恐るべし。
「それじゃあこれはどうだ?最近お気に入りの、塊輝!」
掌をかざし、キラキラと輝く魔法を想像していた俺は、放たれた光線を見て自分の魔法のくせに心底驚いた。進化しているのだろうか、光り輝く熱線が放たれた。
また砂が巻き上げられたが、砂の壁など無いかのように光線は顔に命中、メギジージンの体を反対側まで貫いた。
―――ギギァァ!
効いていそうだ。ならもう一発、違うのをお見舞いしてやろう。
「塊闇!」
今度も光線だ。ただ、闇の光線だ。飲み込まれそうな、どこまでも奥があるような色の光線は、音も無く空間を通っていき、命中。こちらも貫通し、少ししてからダメージが来たのか、苦しみ始めた。
その時、ふと思い出した。
「あー、洗浄!」
魔物の素材を綺麗にするために使う水属性魔法だ。魔力は多少消費してしまったが、泥は綺麗に落ち、さらにピカピカになっている。
これで攻め込める!魔法を受けて弱っていそうだし、一気にかたを付けよう。
「テイル!突撃!」
「了解!」
数mのところまで近づくと、ひげを使って叩き落そうとしてきた。しかし、ひげが鉄パイプほどの太さがあるためか、こっちはそこまで速くない。テイルも何とか対応してくれている。暴れるひげの隙間を縫い、目の前まで辿り着いた。
「テイル!上だ!」
「分かったわ!」
メギジージンの目の間に剣を突き立て、一気に頭の方まで切り裂く・・・ことはできなかった。剣が皮膚に触れた瞬間、地面から砂が腕のように伸びてきて、俺に巻き付いた。そしてそのまま地面まで引っ張られていく。その時のメギジージンの顔ときたら、してやったり、という感じだった。まさか魔法が効いていたのは演技だったというのだろうか?
「んなぁっ!?」
「ちょ、ちょっとハルカ!?ふぬぬ・・・!」
テイルの必死の抵抗も空しく、俺は地面まで落とされた。テイルがすぐに引き戻そうとしてくれたが、上から次々に砂が覆い被さってきて、スキルが上手く働かない。
―――ギギェィッ!
俺が沈んでいき、苦しんでいるのを確認したメギジージンは、今度はテイルに照準を合わせて突進してきた。
「うわぁっ!?ちょっ!え、えいっ!」
しゅっ
スキルで地面に引き寄せられ、何とか突進を躱したテイルだったが、攻撃は一度では終わらない。
地面の近くまで降下してきたテイルに、砂の波が襲い掛かる。捕まるのなら脱拘束が効いたかもしれないが、上から覆われて砂の質量で押されては、全く意味がない。抵抗空しく、二人とも荒れ狂う砂の海に沈んでいった。
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