123.絶望
すいません、昨日のうちに投稿できませんでした。
「射氷!」
剣先から放たれた吹雪が前方に居たタイラメ3匹を凍らせる。どさっ、という音を立てて地面に落ちた3匹は、地面が砂で柔らかいおかげで割れる事は無い。これで素材が回収できるのだ。
さて、次はどうするか―――
どしゃっ!
次の目標を決めようとして振り向いた俺の顔スレスレをタイラメが通って行った。通って行ったというよりは、打ち付けられて落ちてきた感じだったが、一体どうしたというのだ。ただ、原因はすぐに分かった。テイルがスキルでタイラメ2匹を操り、他のタイラメを叩いているのが見えた。今のが最後の1匹だったようで、俺が倒していなかった残りは全てテイルに叩かれて地面で痙攣している。最後にテイルが頭の上で両手をパン!と合わせると、他のタイラメを倒すのに使っていた2匹が物凄いスピードでぶつかり、意識を失った。
「どう?ハルカ。このスキル結構強いわよ。」
「あ、あぁ、そうだな。思っていた以上だ・・・」
「でも、今はタイラメだったから抵抗力も弱かったけど、相手が強ければ今みたいな事は無理だと思うわ。」
それを聞いた俺は内心ホッとした。下手をすればテイルのほうが俺より強いとかいうことに成りかねなかった。さすがにそれは何か悲しいしな。
地面に落ちて気絶しているタイラメ達にとどめを刺し、無限収納に仕舞っていく。最後の1匹を仕舞った瞬間、俺の中の危機感知能力が動いた。
「テイル!」
「なに?ッ、!ちょっと!何すんのよ!」
急いでテイルを掴み、できるだけ高くまでジャンプする。―――その直後、俺達がいた周辺の地面がなくなった。
「なんだあれ!?」
「なっ!?」
そこから出てきたのは、巨大なナマズだった。俺達が居た場所を砂ごと呑み込んだみたいだ。まったく、この世界の砂漠には魚介類がいるのが普通なのか?
ナマズから少し離れたところに着地し、改めて同じ高さからナマズを見る。恐らく7m?8m?いや、正確な大きさは全く分からないが、とにかくデカい。例えるなら小さなクジラのようだ。見た目は赤褐色の体に黄色の目、というところを抜けば地球のナマズと全く変わりない。
さっきの大きめのタイラメは、こいつの取り巻きだったのだろうか。
ふと横を見ると、テイルが震えている。
「ハ、ハル、カ・・・。ハルカぁ・・・」
「どうしたんだよ。あいつが怖いのか?」
「怖いわよ!あいつはメギジージン。あいつは・・・Sランクよ・・・!」
おい待て。聞いてないぞ。Sランクなんて良い思い出無いぞ。あるわけ無いぞ。しかも今はニックもいない、レオムストロフは時間で帰ったがこいつは分からない、テイルと二人だけ。生き残れるか?
その時、ナマズ、メギジージンが上空に跳び上がった。というより、空を飛びだした。なるほど、ここから分かる結論は、砂漠にいる魚介類は飛ぶ、という事だ。うん。
「テイル!やるぞ!・・・テイル?」
「無理、無理よ・・・あんなのと戦うなんて・・・無理よ・・・ここで終わりだわ・・・・・」
テイルは地面にへたり込んで絶望に顔を染めながら今にも泣きだしてしまいそうだ。
「おいテイル!やるぞ!気合い入れろ!」
「何言ってるのよ・・・あんな奴と戦って勝ち目なんてないわよ・・・Sランクと出会ったらその日が命日よ。」
「大丈夫だ!俺は一回Sランクに殺されかけたけどたまたま生きてるし、それからも強くなってる。それに、俺達は魔王軍の幹部を倒したんだぞ?大丈夫だって!」
こんなことを言っているが、俺も怖いし不安だ。だが、何もせずに死ぬんだったら戦った方が良い。もしかしたら倒せるかもしれない。本気で相手の情報を収集し、本気で倒しに行く。
「分かったわよ・・・分かったわよ!やってやる!こんところで冒険者を辞めるもんですか!」
「よし、その意気だ!―――来るぞ。」
―――ギギィィァァ!
まるで俺達を待っていたかのようにメギジージンが鳴き声を上げた。
すると、地面が揺れだした。しかも、砂漠がうねり始めた。バランスを保っているのが難しく、片手を地面に着きながら上空のメギジージンを睨む。
「な、何だこれ!?」
「これがメギジージンの力よ。砂を操る力。砂漠はあいつの独擅場よ。」
マジかよ。ナマズが暴れると地震が起きるというが、あれは地震が起きる予兆として暴れるのだ。だが今は、暴れることで起こしている。とんでもない能力だな。
次はどうくるかとメギジージンを凝視していたが、足に違和感を感じ、足元に目を落とした。すると、なんと足が徐々に地面に沈んで行っていた。テイルを見ると、テイルも少しずつ沈んでいた。脱拘束があっても物理的な問題は解除できないのか。とりあえず抜け出そうとして足を動かすが、余計に沈んでしまう。
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