11.テイル先生
一日一話のペースを守れるかどうか……辛い……
今俺とテイルはギルドの食事処で昼ご飯を食べている。ついに俺も自分のお金を手に入れたので、テイルに負担をかけることもない。でも、まだ部屋を借りるほどは……
「このフライ美味しいな。海老っぽいけど、ちょっと違う?」
「これはシャリンプ。海に住んでる魔物だけど、食用ね。」
・・・シャリンプ……シュリンプ…?
「ていうかハルカ、ハルカって常識的な事を知らないけど、なんでなの?」
あぁ、そういえば、このあいだ言おうとした時は倒れて言えなかったんだっけ。あまり広めるのもどうかと思うけど、テイルになら言っても問題ないだろう。
「テイル、このあいだ言えてなかったから今言うけど、これから話す事は全部真実だ。信じられないかも知れないけどな。」
「ハルカの言う事なら何でも信じるよ。」
「ありがとう、あのなテイル。俺は、実は、異世界から来たんだ。この世界とは別の世界。魔物も魔法もスキルも職業もステータスも無い世界だ。―――そもそも成人は20歳で、俺は17歳だからまだまだ成人は先だと思ってた、んだがな。この世界みたいなところも想像の中で作られていたんだ。だから、俺はこの世界の常識は無いし、テイルが居なかったら大変なことになってた。」
「違う、世界・・・異世界?」
「ああ。俺からしたら、ここが異世界だ。俺がいた世界で俺は一回死んだ。でも、この世界で生き返って、凄まじい力を手に入れた、ってところかな。」
「───分かった。信じる。───それと、私はハルカが異世界人だろうと信頼しているし、大切な仲間だから、いくらでも頼ってね!」
「・・・ありがとう、テイル。」
やっぱりテイルは優しいな。この世界に来て最初は訳が分からなくて、凄い不安だったけど、テイルに会えたのも本当に幸運だったな。
「ハルカ!じゃあさ、ハルカは魔法が使えなかったんだよね?魔法、使いたくない!?」
お、魔法?地球人にとっての永遠の憧れですよ!───ここまできて適性が無いから出来ませんとか言われないよな・・・?
まあ俺の事はテイルにもあまり深く考えてもらわなくても良いだろう。
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昼ご飯を食べ終わった俺達は、ギルド内の魔法練習用の部屋に来ている。ここの壁は魔法への絶対耐性があるらしく、どんなに強い魔法を当てても傷一つ付かない加工がされているらしい。共同らしいが誰もいなかったのでとんでもなく広く、天井も高い。
テイルは何かの本───魔法辞典の様なものだろう、のページをぺらぺらとめくっていく。
「まずどんな魔法が良いかなぁ───パウパティが使ってた塊炎とか簡単だと思うよ。」
「じゃあ最初はそれでいくか。よろしくお願いします!テイル先生!」
「うむ、よろしい。そもそも魔法は、体内の魔力管に流れている魔力を一点に集中して、空中での魔力の流れをイメージした状態で、放つ!魔法発動適性のある武器、例えば杖や私の流輝鞭ね。それと、掌が一番方向を操作しやすいわ。ただ、上級者になって来ると身体中どこからでも魔法が撃てて、隙が無いと言われているわ。」
───ちょっと待て、俺には魔力管なんてものはないと思うんだが。いや、MPがあるから良いのかな?
「とりあえず、やってみて。手を前に出して・・・イメージの方法としては、狙う所に光の点を思い描いて、塊炎の場合はうずまきみたいに全体から中心に向かって何本もの線が集まって、それを丸くして、放つ感じ。そこに、炎の赤色と熱さをイメージして。」
俺はイメージしながら視界の中に、光の線と、狙いどころのより光の強い点を描いていく。一度喰らった経験がある身としては、炎の熱は容易に想像できる。
「そしたら、叫ぶ!」
「塊炎!」
───なんでだろう。確かに俺は、小さな炎の塊を放とうとしたはずだ。それなのに俺の眼には、狙っていたところを中心に太い火柱が建って、その周りが火の海に呑み込まれている光景が映っている。どういうことだ。
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