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114.泥の塊

投稿時間帯が動いてしまう・・・

 俺とニックは、触れると消えるレヴィアタンにてこずっていた。レヴィアタンが意思で泥となって回避しているのならまだ活路が見出だせるが、仮に触れると勝手に発動するとなると、対処のしようがなくなるかもしれない。そうだとすると、お手上げになってしまうのだが・・・


「ハルカ、広範囲への攻撃はできるか?」


「吹雪なら。」


「よし、それを試そう。吹雪でハルカ側半分に逃げられなくしてみよう。」


「分かった。射氷(アイスバレット)!」


 俺の前180°に吹雪が吹き荒れる。ニックがレヴィアタンを狙って斬り掛かると、思惑通り、逃げ道が半分になった。


「もっと頭を働かせないと駄目ダヨー?」


 パーの手で口を隠しながらケラケラと笑い、ニックの攻撃をことごとく瞬間移動で避け続けるレヴィアタンの姿を見ていると、吹雪維持の魔力が無駄に思えてきた。

 とりあえず吹雪を止めた。


「こっちからも攻撃しないと、つまんないネ。」


 レヴィアタンは両手に持ったナイフを構え、またしても突っ込んできた。ただ、今回は物凄く速い。狙いは俺だ。


「―――っ!」


 素早く繰り出される二本のナイフを、長い剣一本で捌き切るのは不可能だ。合わせるだけでも難しいのに、片方に集中していると直ぐにもう片方が迫るのだ。剣は仕舞い、両手でレヴィアタンの腕をずらして躱し続ける。

 しかし、このままではジリ貧だ。そう思ったとき、横の方から狙い澄ました声が聞こえた。


雷磁法(アビルコノン)!」


 雷の塊は、俺の目の前、レヴィアタンがいた場所だけを通過していった。が、当たる前にレヴィアタンは泥となって消えてしまった。

 今はニックが、ニックの近くに出現したレヴィアタンを剣で追い続けている。


 そういえば、今の俺の雷魔法は目標(ターゲット)に直接電撃が入る。避ける、という概念が存在しないのだ。バルべリスは体より鎧に電流が回ったせいで無力化されていたので忘れていた。試す価値はありそうだ。


「ニック!一回攻撃中止!」


 ニックが攻撃を仕掛けて位置を移動されたら面倒なので、止まってもらう。


「あら、何か思いついタ?」


閃雷(ライトニング)!」


ばちぃっ!


 レヴィアタンの体の中心から雷の光が溢れる。当たった!

「きぃゃぁぁっ!」


 甲高い悲鳴を上げて、小さな体が電気に飛ばされて少し宙に浮く。


「ニック!追撃!」


「あ、あぁ!超攻撃(スーパーアタック)!」


 ニックは一瞬戸惑っていたものの、直ぐに動いてくれた。俺も急いで近づき、剣を振りかぶる。


「はっ!」

「おりゃっ!」


 完全なオーバーキル。肩書さえ無ければ、少し異様な格好をした幼女が鮮血を散らす見るに耐えない光景が広がる―――かと思われたが、そんな事は無かった。


 振り切られた二本の剣は、泥の塊に突き刺さっていた。そして、その泥の塊から声が発せられる。


「あはっ、楽しかったネ、お兄さんたち。今回はお兄さんたちの勝ちダヨ!」


 それはまるで、泥の中に小型スピーカーが入っているような、そんな感覚だ。


「私の体は、とっくの前に逃げてるんダ。気づかなかったでしょ?またいつか遊ぼうネ!」


 そう言うと泥は、細かい砂となって風に吹かれて消えていった。



――――――――――――――――――



 その夜、俺、ニック、リーア、イディアさんは、ギルドからの勲章を受け取る事となった。内容は、魔王軍幹部バルべリス討伐と、魔王軍幹部レヴィアタンの撃退だ。その他の戦いに参加した冒険者全員にも感謝状と報酬が支払われた。俺達への報酬やお話は後回しに、とりあえず宴が行われた。


 宴といっても、皆でロビーで夕飯を食べるだけのようなものだったが、それなりに楽しかった。戦闘での疲れも吹っ飛んだが、大体こういうのは部屋に帰った瞬間に眠りに落ちるようなものだ。


 俺は夕飯を食べ終わり、他の冒険者達が酒を呑んでいる時、一人抜け出して居住棟へと向かった。行き先は、教えられていたソフィアさんの所だ。



 呼び鈴を鳴らすと、少ししてソフィアさんがドアを開けてくれた。

 リリーの眠っているベッドの前に行き、椅子に座る。


「ハルカくん、改めて、お礼を言わせて貰うわ。ありがとう。リリーを救ってくれて。本当に、ありがとう。」


 そういってソフィアさんは頭を深々と下げた。


「頭を上げてください!その、なんか、取り憑かれたのは俺のせいみたいなところもありそうなので・・・」


「でも、救ってくれたのは事実でしょ?私は、リリーと魂を重ねた身。半分はリリーみたいなもんだからね。お礼を言うのは当然よ。」


 確かにその気持ちも、テイルが連れ去られた時の自分を思い返すと、納得できてしまう。


「それにしても、魔王軍の幹部に取り憑かれていた、なんてねぇ・・・」


「最初見た時は俺も驚きましたよ。思考も停止しましたし。」


「レヴィアタン・・・情報が少なかったらしいけど、まさかそんな事をしてくるなんてね。戦いにくかったでしょ?」


「まぁ、そうですね。でも、ニックも居ましたし。」


「―――何か、一緒に護衛をやってた時のハルカ君じゃないみたいね。不思議な感じ。」


 そりゃあ確かに、短時間にしては異常に強くはなっている。が、俺は俺だ。ソフィアさんはソフィアさんで、リリーはリリーだ。 


 その後も少し話していると、急にベッドの上の掛け布団がもぞもぞと動き出した。


「ふぁ〜あ、あれ、ソフィア?」


「リリー!大丈夫!?どこかおかしいところとかない!?」


「え?どうしたの急に。別に何ともないよー?」


 リリーもどこも悪くないみたいだ。本当に良かった。これで一件落着、めでたしめでたし。―――とは行かないのが現実だ。

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