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113.救出

誤字報告ありがとうございました。

今後もよろしくお願いします!

 影から出てきても攻撃を仕掛けるだけで、捕まえる前に直ぐに戻ってしまうので、中々タイミングが掴めないでいた。


「あんた、さっきから何を考えてるの?」


「お前に勝てるかも知れない方法を思いついたんでな。できれば止まっていてくれると嬉しいんだが。」


「ハッ、勝てるかも?期待は身を滅ぼす事を覚えときな。」 


 右拳を躱しつつ、掴・・・めない!―――後ろ!急いで前に跳び込み、体制を立て直す。左拳を流し・・・今だ!


「捕まえた・・・!」


 掴んでいる左腕を一気に引き寄せ、右腕を背中にまわす。勘違いしないで欲しいのだが、俺は日本にいた頃も決してこんな男じゃなかった。今は、そう、仕方なくだ。鼓動も、心臓が破裂しそうな程に激しく鳴っている。


 多少強引に抱き寄せる形になってしまったが、リリーは抵抗する気配が無い。少し身長の低いリリーの耳元に近付いて、そっと呟く。


「ごめん、リリー。俺が悪かった。許して、くれないか?」


 一方的だったとはいえ、俺が約束を破ったのは事実だ。謝罪の念と、戻って欲しいという願いを込めて、しっかりとリリーを包み込む。


 何時間にも感じられる数秒が経ち、ゆっくりと体を戻す。幸い、恐れていた首筋ザクッは無かった。それどころか、リリーの目には僅かながら光が灯り、焦点は合っていないものの、しっかりと俺を見ている。



 そして、ゆっくりと開いた口から絞り出されたのは、


「ハ・・・ルカ・・・?」


確実に、リリーの言葉だった。


「リリー!?リリー!大丈夫か!?今、助けてやるか、ら?」


 何故最後が疑問系になったのか。それは、リリーの行動が予想外のものだったからだ。

 リリーの両手は俺の頬に当てられ、首を固定している。そしてそのまま、少しずつ近付いてきて、


「ハルカ!」


 俺の名前を叫んだ唇は、一直線に俺の唇まで迫ってきて・・・触れ合う前に力無く倒れた。


「おい、リリー?おい!?」


 次の瞬間、リリーの影から何かが飛び出してきて、そのまま地面に着地した。

 それは、幼女だった。


 いや、出てきた場所とか、その異様な見た目とかを除けば、早く戦場から逃がそうと行動に移すのだが、そうはいかない。

 幼女は、顔は整っているものの、目は黒と青が混ざり、右目には☆マークが入っている。真ん中で青と紫に別れている髪を真っ赤なリボンを使って二か所で結い、薄い紫のフリルの付いたワンピース、さらに裸足ときた。これを警戒しないで何をする。


「あーあ、折角良い女を見つけたのになぁ。薄れちゃっタ。」


「お前が、レヴィアタンだな?リリーは、無事なんだろうな?」


 俺は真っ直ぐ、異様な幼女を睨みながら質問する。


「お兄さんさぁ、何してくれてんの?この女、一気に薄れさせちゃっテ!つまんないじゃナイ!」


 質問に答える気はないようで、頬を膨らませて怒ってくる。その姿はどこか愛らしいが、惑わされてはいけない。というか、口調が定まらない奴だな・・・。それに、薄れるとは何だろうか。とりあえず、リリーを安全な場所に移してからコイツを倒すとするか。


 通話の腕輪でテイルに呼びかける。


『今度はどうしたの?』


「味方の保護を頼みたい。戦禍のど真ん中だけど、いけるか?」


『任せて!』


 とりあえずは気絶しているリリーを抱き上げ、テイルが来るまで凌ぐとするか。―――するとそこに、ニックがやってきた。


「ハルカ、急に影が出て来なくなったんだが、何かあったのかい?」


 少しニックが見回す時間を使い、一言だけ、

「理解した。」


 影が出てこなくなったという事は、まさかあれも【影武者】のスキルの一部なのだろうか。結構強いな、【影武者】。


「お兄さんさぁ、私の楽しみを奪って罪悪感とか無いワケ?」


「残念だけど、魔王軍の幹部に対して罪悪感は感じないな。」


「じゃあ、そんなお兄さんには、お・し・お・き、必要だネ。」


 そういうとレヴィアタンは、おもむろにワンピースの裾を腰まで捲り上げた。何故急にそんな行動を起こしたのか分からなかったが、見えてはいけないものが見えてしまいそうで気が気ではなかった。幼女なので興奮することは無いが。・・・決して無いが。


 しかし、俺とニックの目に飛び込んできたのは、更に見てはいけないタイプの()()だった。太腿に付けられたベルトには、無数のナイフが収められている。その中から選んだ2本をくるくると器用に弄びながら、幼女は悪魔のようにニヤリと微笑(わら)った。


「さぁ、おしおきの時間だヨ。お兄さん()()。」


 タッ、とレヴィアタンが駆け出した。が、そのスピードはミアよりも遅く、俺達にとっては遅い部類だ。


「ニック!とりあえず止めるぞ!加重(セピア)!」


 まるで時が止まったかのように、小さな体は空中で静止した。


「へぇ、お兄さん、中々面白い魔法を使うネ。」


 レヴィアタンがコロコロと笑う。その余裕、すぐに無くしてやるよ!


「「超攻撃(スーパーアタック)!」」


 橙色に輝いた二本の剣が、レヴィアタンの体を綺麗に断つ・・・なんて上手くいかないのが、魔王軍幹部だ。剣が体に触れた瞬間、止まっていたはずのレヴィアタンは泥の塊となってボロボロと崩れ落ち、少し離れた場所に再度出現した。


 一体どうやったのだろうか?疑問符が二人の頭上に浮かび上がる。しかし、そんなことを考えている暇を与えてくれる筈もなく。


―――っ!

絶断壁(プロティシーマ)!」


ガガガガガガ!


 咄嗟に自分とニックを守る。遠くに出現したレヴィアタンにばかり気を取られていて、足元に転がっていた泥が飛んでくることは予想していなかった。


「アハ、今の対処されちゃうの?やっぱり凄いネ!楽しめそう!」


 ナイフを二本持った幼女は、無邪気とはかけ離れた、正反対の笑顔を浮かべるのだった。

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