111.解除
週休8日のYOPPYです。(理想)
「リーア!大丈夫か!」
「うん!イディアは!?」
「大丈夫だ!」
爆ぜる闇の攻撃を受けた二人は、立ち上がりお互いに大丈夫とは言っているものの、少し辛そうにしている。
「あの攻撃は、厄介だな・・・。ウワァォォン!」
ゼイアイディアが遠吠えを上げると、長くなっている茶色の毛が風を受けたように立ち上がり、一つに纏まっていた尻尾も3つに分かれた。
回り続けていても同じ攻撃が来れば意味が無いと考え、速攻に切り替える。リーアは空中から、ゼイアイディアは地上から攻め、鎧を砕く事だけを考える。
ゼイアイディアの拳は殴る毎に強くなり、バルべリスも立ってはいられない。鉈を振るっても避けられるだけで、リーアからの攻撃が入る。
「おい、犬。一つだけ教えてやる。この鎧はな、破壊不可の特殊な物なんだよ!お前らに壊せるものか!」
バルべリスの言葉が本当かは分からない。嘘の可能性を信じ、鎧に攻撃を入れ続ける。
バルべリスの攻撃は入らないものの、鎧も砕けない。そんな状態が延々と続いた。
―――しかし、そんな状況を打開するものが、やってきた。
「二人とも避けろ!塊炎!」
攻撃の反動を使って瞬時に元いた場所から離れる。大鉈を振るおうとしたバルべリスに迫るのは、不死鳥の形をした炎だ。
「っ!クソが!」
炎がバルべリスを飲み込むが、特にダメージは入っていない。黒いオーラが炎を掻き消した。
「やっぱり効かないのかよ・・・」
「ハルカさん!大丈夫なんですか!?」
「もう動けるの!?」
「もうって、3時間も経ったら骨ぐらい治るだろ。」
「いやいや普通治らないから!」
そう、俺をは回復促進と睡眠のおかげか、走れる程度には回復していた。まだ右手で剣は振れないが、ここまで粘ってくれた二人の成果と言えるだろう。
「よし、やるぞ!」
「はい!」
「任せて!」
リーアとイディアさんが左右に分かれ、俺はその間を真っ直ぐバルべリスに向かって走っていく。
バルべリスは誰を目で追えば良いのかと困惑していそうだ。
「射氷!」
「チッ、小賢しい!」
ぶぅん!
大鉈が振るわれ、闇が吹雪を喰らい尽くす。が、大きな隙が生まれた。
「ていっ!」
「はっ!」
がいん!
リーアとイディアさんが同時に左右から攻撃を入れる。鎧が砕けないなら、衝撃の行き場を無くすことで中にダメージを入れようということだ。
「―――くっ・・・人間は!?」
その頃にはバルべリスの前に俺はおらず、気配を隠して後ろに回り込んでいた。二人の攻撃で少し硬直しているので、狙いを合わせるのが簡単だ。
「超攻撃!」
ざしゅっ
「ぐぁぁぁあ!クソが!」
スカッ
どっ・・・
大鉈の軌道は俺から大きく逸れ、地面に突き刺さった。効いているか?
ずぶっ!
さらに深くまで押し込む。バルべリスの体が大きく反り、悶ている。
追撃とばかりに、イディアさんの拳がバルべリスの顔に入り、首を倒された。
今まで魔法を使ってきて、吹雪だけは執拗に防ごうとしてきたので、もしかしたら効くのではないかという淡い期待に掛けて、剣先から体内に魔法を放つ。
「射氷!」
「ギィャァァ、ア、ア゛・・・!」
かちっ
断末魔の叫び声を上げ、人間ではない仰け反り方をしたまま、バルべリスは氷漬けになった。十分だろうと剣を引き抜く。
「はーいハルカ、どいてねー。」
どこからか聞こえたリーアに声に従い、氷漬けのバルべリスから少し離れる。次の瞬間には、空から降ってきたリーアの白い毛に覆われた足が、氷を粉々に破壊していた。
「ふぅ、これでスッキリした。」
リーアといいミアといい、凍った生き物を見ると破壊したくなるのだろうか。一撃で割った時の笑った横顔からは、狂気しか感じないが。
バラバラになって倒しきったのか、空が夜から昼過ぎに戻っていく。
―――と同時に、リーアとイディアさんが膝をついた。
「だ、大丈夫か?ど、どうした?」
「いや、月が消えたので、強化が解除されるのですが、」
「さっき受けたダメージが辛かったかな。ハハ・・・」
どさっ
どさっ
そのまま二人とも倒れてしまった。急いで息を確認すると、気絶しているだけみたいだ。HP切れを起こしたのだろう。通話の腕輪でテイルを呼び、二人を救護班の元へ連れて行ってもらい、俺はニックの元へ急ぐ。
――――――――――――――――――
その頃ニックは、倒しても倒しても湧き上がる謎の影と戦い続けていた。一体一体は弱く、斬ったり、スキルや魔法を一度当てるだけで簡単に倒せるのだが、レヴィアタンの能力なのか影の出現が止むことは無く、一人では攻め込むことが出来ずにいた。
そして、ハルカが言っていた言葉、知り合いの冒険者だというのはどういう事なんだろうか。それは果たして真実なのか、真実だとしたら何故なのか、という事を考え続けていた。
戦い始めてから何時間経っただろうか。急に夜になったと思ったら、今は昼過ぎに戻った。一体何だったのだろうか。
―――ニックぅ!
「ハルカ?」
「おまたせニック!状況は?」
ここでハルカが合流した。
「今この湧き出る影の相手をしている所だ。こいつらは弱いんだが、数が多くてな。雷磁砲!」
俺の後ろに現れた奴を倒してくれた。倒してくれたのは良いが、俺は一つ大変なことに気づいてしまった。この影、魔力を感じられない!・・・相当厄介だな。
「こいつらの相手ばっかりで、まだあいつに攻撃を入れられてないんだ。」
その言葉を聞いた俺は、リリーが傷付けられていない事に、内心安堵したのだった。
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