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108.バルべリス

日本に梅雨の季節がやってきましたね。

 幹部二人に狙いを定めた俺とニックの道を塞ぐのは、魔物ではなく眷属だ。といっても、全てがレヴィアタンの眷属らしいが。

 眷属は全て、黒紫色で人型の粘土細工みたいな見た目だ。2mちょっとありそうな巨体で、顔はなく、移動速度はメディヴェドぐらいだ。しかも強力な物理耐性があるのか、俺やニックでも斬るなら3撃ほど必要だ。まぁ魔法なら問題ないのだが、MP消費は後々怖いし、同時に複数の相手が出来なくなる。


 俺とニックが足止めを喰らっていると、前衛班の何人かが眷属の相手をしに来てくれた。その中には、イディアさんとリーアも含まれている。


「おりゃっ!」

「やっ!」


―――バババババン!ババン!ババババン!


 空中を跳びながら魔力銃を撃ち込んでいく。


雷磁砲(アビルコノン)!」

射氷(アイスバレット)!」


 眷属の数が多く、吹雪まで使う事になった。ただ、加勢のお陰もあってか、少しずつ楽になってきた。補助班からの遠距離魔法も効いている。


「ニック!」

「分かってる!」


 眷属が減り、道が一瞬できたところを見逃さない。一気に幹部に近づく。

 予定通りニックはリリー・・じゃなかった。レヴィアタンの方に行く。


「バルべリス!お前の相手は俺だ!」


「ほぅ、人間が私の相手を?しかも勇者ではないとは、舐められたもんだな!」


 バルべリスは青年らしからぬ声と喋り方をするな。今まで鎧しか見えていなかったが、背中に付けていたのか、武器を取り出した。あれは・・・大鉈だろうか。こちらも真っ黒で、刃の部分が鈍く輝いている。


 こういうのは相手の動きを見るのも良いが、先手必勝だ。


超攻撃(スーパーアタック)!」


 足に力を入れ、一気に数mの隙間を埋める!動いてくる気配は無い!行ける!

「おりゃっ!」


「・・・全く、なってないな。」


ぶんっ!

  がきっ!


 俺の剣が下から振り抜かれる前に、大鉈に弾かれた。とてつもないスピードで大鉈を合わせてきたな。どれだけ腕力があれば、あんなに重い物を割り箸のように動かせるのだろうか。


 今のは防がれただけだったが、横から振られていたら上半身と下半身で真っ二つだっただろう。はぁ、相手の死角から攻めろとリーアに言ったのは俺じゃないか。これじゃまるであの時の再現だ。


 俺は深呼吸をし、一度落ち着いてからバルべリスの周りを走り始める。―――バルべリスは一切見る方向を変えない。感じているから大丈夫だとでも言いたいのだろうか。


加重(セピア)!」


 後ろに来たところで、強化された重力魔法を使ってバルべリスの体の空間座標を固定させ、一気に斬りかかる!


超攻撃(スーパーアタック)!」


がきぃん!


 俺が全力で振り切った剣は、漆黒の鎧に弾かれてしまった。


「はぁ・・・剣の扱いも雑ときた。―――貴様、弱いだろう?」


 魔力を流し続けておくわけにもいかず、魔法を解除し、バルベリスの自由が戻った。それにしても、あの鎧はとんでもない耐久性を持っているな。

 バルベリスの言葉はどういう意味だろうか。剣の扱いが雑、というのは良く分からないし、少なくとも俺は弱い方ではないはずだ。


「残念だが、弱い奴に興味は無い。おとなしく斬られるか、あの勇者をここに連れて来るかしろ。」


「それは断る。まずは俺だ。俺がおまえを倒してからだ。」


「はぁ・・・」


―――っ!

絶断壁(プロティシーマ)!」


がきっ!

   ・・・ぴしっ


 急いで後ろに跳ぶ。俺がギリギリ反応できるスピード、ニックと同じぐらいかもしれない。それに、絶断壁(プロティシーマ)にひびを入れてくる程の力。マジかよこれ・・・


塊炎(ファイアボール)!」


 炎がバルべリスに向かって飛んでいくが、当たり前のように掻き消されてしまう。


―――その時、不意に俺の頭の引き出しが輝いた。

 そうだ、バルべリスとかレヴィアタンとか、聞いたことあると思ったら、地球だ。悪魔の名前だ。

 確か、結構位の高い悪魔じゃなかったかな?いや、そうじゃないと俺が覚えているはずが無いか。脳みその隅にある知識を絞り出す。


 バルべリスは大嘘つきで戦闘狂、レヴィアタンは・・・嫉妬・・・憑依?憑依か!?


 もしかしたら、リリーは取り憑かれているだけかもしれない。できれば早くニックに伝えなければ。もしかしたら、ニックがリリーを殺してしまうかもしれない。でも、バルべリスが・・・


「お前!速く倒れろよぉ!閃雷(ライトニング)!」


「急にどうした。落ち着けよ。まぁ、そこが雑魚らしいんだがな。」


 今の俺の雷魔法は、発射を越し、目標に直接電撃が当たるまで進化した。電気は鎧に流されてしたまったが、他の魔法も強化されてるか?


塊炎(ファイアボール)!」


 俺の剣先から長い尾を引き、不死鳥の形をした炎が飛んでいく。が、これも大鉈で掻き消されてしまった。すると、


「―――チッッ!!」

 バルべリスが戦場全体に聞こえるぐらいの大音量で舌打ちをした。戦場は一瞬にして静まり返る。


「お前、雑魚ではあるが、さっきからその魔法は何だ!雑魚は雑魚らしく雑魚魔法でも使え!」


 いや〜・・・それが無理なんですよ・・・


「雑魚雑魚うるせぇ!射氷(アイスバレット)閃雷(ライトニング)!」


 さっきは電気を流されてしまったが、氷が付けば、もしかしたら!


「がぁぁぁあ!」

ぶぅん!


 バルべリスが吠え、振り下ろした大鉈による衝撃波が、到達前の吹雪を掻き消した。なんだこれ、無理ゲーだろ。―――だが、やはり敵を観察するのは重要な事だ。今の動き、物凄く隙ができる!

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