105.強酸性
アリタマのランクをC→Bに変えました。
「ハ、ハルカ?何やったの?なんか、苦しんでるんだけど・・・」
恐らくこの世界で発展したのは魔法科学だろう。俺は化学を使うのだ。もし灰が効かなったら危なかったが、ちゃんと効いてくれる。
「これはな、さっき作った木を燃やしてできた灰だ。灰は酸と反対の性質があるから、もしかしたら、ってやってみたわけ。」
テイルは良く分からないといった顔だ。まぁ今は分からなくてもいい。さっさと倒すとしよう。右手に剣、左手に灰を握り、アリタマにゆっくりと歩いて近づいていく。
───クシャァッ!
「射氷!」
アリタマの広範囲攻撃、酸を撒いてくる技は完全に対処できるようになった。塊を撃たれるとまだ避けるのが精一杯だが。
折角作った灰だ。ここは正確に行こう。
「加重!」
がちっ
アリタマの動きが止まり、体が大きいままで固定された。
「超攻撃!」
剣が橙色に光る。灰の効果があるのは5秒程度なので、早く終わらせないと勝機が見えなくなる。
「さぁ!これで終わりだ!」
灰を振りかけ、同じ位置に剣を突き刺す!
ざくっ
「塊炎!」
さらに突き刺した剣先から内側に炎を入れる。
───GsCぁぁ!!!
内側から炎が噴き出してアリタマは爆発した。素材は回収できないが、討伐成功だ。
抜いた剣は結構溶けてしまっていた。表面は中和して刃が溶けずに刺せたものの、アリタマの内側にも酸があったみたいだ。明日の為に剣を買わなければいけないな。アルバルト支部長にお金を借りよう。
「やった!倒したわ!」
「よし、帰る!テイル、付いてこい!」
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!?」
行きよりもさらにスピードを出して帰る。アリタマが居たせいか、他の魔物は帰りの通路にはいなかった。どこか分かれ道の奥とかに隠れているのだろうか。
時刻は24時過ぎ。まだリリー達が発っていないことを願おう。
――――――――――――――――――
ギルドに着いた俺は、急いで居住棟へ向かい、俺とテイルの一階下の部屋、リリーの部屋の前へ走る。テイルには依頼達成報告を頼んでおいた。
一度息を整えてから呼び鈴を鳴らす。・・・返事がない。もう一度鳴らそうとした時、横から声を掛けられた。
「ハルカ君・・・?」
「ソフィアさん!リリー知りませんか?」
「ハルカ君もリリーを探しているの?」
「も・・・?」
「私も探しているのよ。そろそろ発たないとなのに・・・」
「いつから居ないんですか?」
「昨夜一緒にご飯を食べたあとは、どこに行ったのかも分からないの。」
なんて事だ。ソフィアさんですら居場所が分からないのか。
ソフィアさんはリリーが帰ってくるまでは発たないと言っていた。
俺は一度諦め、テイルの元へ向かう。報酬を無限収納に入れ、剣を買うためのお金を借りる為に支部長に会いに行く。
「すいません、アルバルトさんに用があるので、通して貰っても良いですか?」
「ハルカ様!えぇ、勿論です。―――どうぞ。」
受付の人が裏への通路を開けてくれた。支部長室に向かい、扉をノックする。
こんこん
「すいません、ハルカです。」
『タチバナ君?入っていいぞ。』
がちゃ
「失礼します。実は、頼みたい事があって・・・」
直ぐに本題に入る。アルバルトさんは執務机に座って暇そうにしてたので、丁度良かった。
「実は、剣が壊れてしまったのですが、お金が無いので貸していただけないかと・・・」
「なんだ。そういう事なら、奢らせてもらおう。いや、急いでナシヤットに帰ってきてくれた礼金、としておこう。」
そう言って200000シェルもくれた。いや、金額も金額だが、それだけの現金を懐から出せるアルバルトさんって何なんだろう。
貰ったお金を仕舞い、俺は武器屋を目指した。
――――――――――――――――――
「いらっしゃいませー、ってハルカ様!毎度ありがとうございます!」
「そういえば、店員さんは避難しないんですか?」
「私ですか?私は今日の夜に出ます。」
いつもの武器屋に入った俺は、店員さんと一言二言喋ってから店内を見回す。今回は予算が高いので良いやつも買える。
ぐるぐると見回していると、壁に掛かっている一本の細剣に目が止まった。
「すいません、これ、振ってみてもいいですか?」
「勿論です!さすがハルカ様、お目が高い!この細剣には想像創造という魔法の設定が仕組まれていて、魔力を流す事で自在に刃の形を変えられる、最高の一本なんですよ!」
想像創造・・・どこかで聞いたような・・・。そうだ!テイルの妹のルイルが、炎を大蛇の形にしていた魔法だ。
それにしても面白そうな剣だ。動きの速くなってきた俺には、細かく動かすことのできる細剣も良いかもしれない。
振ってみた感じも、軽すぎず重すぎず丁度良い。魔力が流せるという事は魔法も剣先から放てるということだ。
「すいません、これっていくらですか?」
「少しオマケして、150000って所ですかね。」
オマケ込み150000シェル!?とんでもなく高いな。でも、溶かさない限りはしっかりしているのだろう。相手は魔王軍だ。装備に手抜きは厳禁だ。
「じゃあこれください。」
「はい!お買い上げありがとうございます!」
最後に店員さんに前回忘れてたからと握手を要求され、魔王軍との戦い頑張れ!と言ってもらい、俺は店をあとにした。
魔力銃の魔力追加と、もしかしたらリリーが帰ってきているかも知れない。俺は急いでギルドに帰るのだった。
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