表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/430

104.アリタマ

沖縄県は梅雨入りが近いらしいですね。南北に長い日本ならではの特色・・・

 一刻も早くギルドに帰る為に、俺は全力を尽くした。洞窟を猛スピードで進み、魔力の濃い方の道を選び、その都度地図を描いていく。

 俺が本気で走り始めたので、テイルは『待って!』と言っていたが、無視して走り続ける。テイルはスキルで付いてきている状態だ。あまりスピードを出すのも狭い洞窟では怖いが、そんなことは言ってられない。


 途中でイゼンポッドを2匹倒しながら洞窟を進んでいく。



―――!

「何か居るな。イゼンポッドとは違う、何か。」


「ええ。私も感じるわ。でも、どこかしら?」


 近くに強い奴がいる。いや、いるはずなのだが、姿が見えない。絶対に近いはずだ。


―――っ!上!

防御壁(プロティーガ)!」


 魔力の壁に何か液体がかかった。と、同時に防御壁(プロティーガ)が溶け始めた。防御壁(プロティーガ)絶断壁(プロティシーマ)などの魔力の壁は、壁として物が存在するため、破壊できたり溶けたりするのだ。


「酸か!?」


 5秒程で穴が空き、壁全体が消えてしまった。あの少量であそこまで強力な酸性なのか。


「ハルカ、下がって!」


 少し立ち位置を後ろに下げ、戦闘態勢を取る。暗視(ノクター)魔力探知(ディテクション)への集中力を高め、空間認知能力を上げる。


 何か魔力の高い奴が天井から落ちてきた。そいつはアリのように小さく、とても強そうには見えない。踏み潰してしまっても気付かないかもしれないぐらいだ。

だが、今の俺達にはあいつがどんな奴かが分かっている。


「出たな、ターゲット!」


「ハルカ!あいつがアリタマよ!さぁ、やっちゃいなさい!」


「お前も手伝えよ?」


ぼんっ!


 軽く爆発したような音と共に、アリタマが巨大化した。だいたい3mぐらいだろうか。見た目を簡単に言うと、黄緑色の球だ。そして、クモのような赤い6つの目と、赤い唇をした巨大な口がある。はっきり言って不気味だ。


塊炎(ファイアボール)!」


 アメタマに向かって放った炎は、不死鳥の形になり、その巨体を貫・・・かなかった。アリタマが口から吹き出した黄緑色の液体、恐らく酸だろう。で掻き消された。


「くそっ!」


「炎じゃ駄目そうね。直接叩き込まないと!雷とか!」


「分かった。閃雷(ライトニング)!」


バリバリィッ!


 よし、当たっ・・・てない。小さく縮んで避けやがった。知能が高そうだな。


ぼんっ!

―――クシャァッ!


 一瞬で大きさを戻し、アリタマが酸を吹き出した。今度は俺に向かってだ。体の大きさによって放てる酸の量が変わるのだろうか。


遠方移動(チェイラート)!」


「ありがとうテイル。」


 更に遠くの方に避難していたテイルが助けてくれた。魔力を使わないで済んだのでナイスプレイ、と言っておこう。


「よし、一気に魔法を叩き込んでみるか。射氷(アイスバレット)閃雷(ライトニング)!もう一回、閃雷(ライトニング)!」


―――クシィッ!バシィャァッ!


 一瞬凍ったものの、すぐに体の酸で溶けてしまった。体の縮小は止めれたが、雷2発は発射された大きめの酸の塊に当たって止まってしまった。

 剣で斬れば一発なのだが、剣が溶けてしまうというところがもどかしい。


 その時、俺は閃いてしまった。


「テイル、草を生やす魔法ってあるか?」


「え?草?」


「草じゃなくても、有機物なら良いんだけど・・・できれば多めに。」


「魔法辞典を見てみないと分からないわ。」


「分かった。じゃあ、テイルが探しててくれ。俺があいつの気を引いておく。」


「分かったわ。」


 テイルに魔法辞典を渡し、灯光(ライト)で注意を引きながら反対側まで移動する。


「ほらほらアリタマ!こっちだこっち!塊炎(ファイアボール)!」


―――クシャァッ!



「ハルカ!あったわよ!」


 アリタマを俺の攻撃の対応に集中させている隙に、テイルが探し終わってくれた。急いでテイルの所へ向かう。

 攻撃の為に放たれた酸は、吹雪で相殺できることが分かっているので、安心までとはいかないが話していられるのだ。


「どんなやつだ?」


「インテリア用に、成長しない木を一本生成する魔法よ。ちゃんと生きているやつを。ただ・・・」


「ただ?」


「とてつもなく難しいと思うわ。」


「問題ない。やってみる。今度は、テイルがあいつの気を引きつけてくれるとありがたいんだけど・・・」


「任せて!逃げる事は上手いから!」


 そういってテイルは、灯光(ライト)を使いながら、スキルで洞窟の壁や天井を縦横無尽に動き回りだした。今のうちだ。


 魔法辞典に書いてある魔法は、確かにとてつもなく難しそうだ。例えようのない魔力の動かし方と細かな操作が必要みたいだ。まるで、建築士が書く家の設計図の様な感じだ。



「ここをこうして、こうして・・・こう!麗樹生成(グリーンハイエント)!」


 多大な魔力を使い、淡い緑の光が俺の手の間に生まれる。その光は徐々に大きくなり、そして・・・木となった。成功だ。


 何故俺が木を欲しがったかって?そうだな。その説明がまだだった。相手は酸、つまり強い酸性だ。だからこそ剣や魔法が溶かされてしまう。ならば、アルカリ性の物を合わせて中和させれば、剣も溶けないのではないか?そういう事だ。そして、有機物が手に入った今、灰を創り出すことができるのだ。


塊炎(ファイアボール)!」


 木を燃やし、灰に変えていく。火力が強いので、良い感じの量になった。無限収納(スナフ)に仕舞って、と。さて、一回試してみるか。


「テイル!もう良いぞ!」


「了解!」


 テイルが逃げるのを辞めるのと入れ替わりに、俺がアリタマに接近していく。―――酸の塊を飛ばしてくるが、絶断壁(プロティシーマ)で防ぎ、更に接近!直接体に灰を振りかける!


―――クsYuァァ!!


 灰を掛けた部分の体の色が変わり、ダメージを受けたみたいだ。直ぐに周りから酸が回ってきて治ったが、これならイケそうだ。

感想、誤字報告、ブクマ登録、高評価、お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ