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101.大浴場

少し文章が雑になってきたような・・・気を付けなければ・・・

 夕飯の買い物をするために、薄暗くなってきた街中を急ぎ足で歩く。まずは精肉店を目指す。その精肉店の横には八百屋があるのだ。


 ソフィアさんが『明日の夜までに避難』と言っていたが、早めに避難している住人も結構な数いるのか、明かりの灯っていない建物が多い。街灯が点いているので明るいが、人も少なく、静かなので、少し不気味だ。


「えっと確かここらへんに・・・あったあっ、た、・・・嘘だろ?」


 俺の目には、既に明かりが消え閉店している精肉店が映っている。しかも隣の八百屋まで。魔銅板を見るとまだ35時過ぎ。地球で言えば18時前だ。


「嘘だろ・・・他に店なんて知らないんだが・・・」


 もしかしたら知らない店が街のどこかにあるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて彷徨う事にした。そもそもこっちの世界に来てからナシヤットの外に居た時間の方が長いので、この街の事をあまり知らないのだ。絶対に、店はある!───と、信じていたんだがなぁ・・・



ピピピピピっ、ピピピピピっ、ピピ

「はいもしもし。」


『ハルカ?いつになったら帰って来るのよ?もう38時よ?』


「いや店がやってなくてな。」


『やってない?』


「それで、他の所を探してたんだよ。」


『なら携帯食で良いじゃない。』


───ん?


『携帯食で良いから、さっさとギルドに帰って来なさいよ。ミアが夜ご飯食べに行っちゃって、今一人だから暇なのよ。』


「・・・了解。」


 携帯食でも良いなら初めからそうすれば良かっただろ!確かに、ちゃんとした料理を食べたいという気持ちも分かる。美味しい食事は人を幸せな気持ちにさせるものだ。でもさ、2時間以上も街中を彷徨っていた相手に対してその仕打ちは酷過ぎないか?



──────────────────



 ギルドに戻り、携帯食が売っている売店の様な場所でとりあえず今夜分、携帯食を二粒買う。


 部屋に戻り、携帯食をテイルに渡しつつ自分の口にも放り込む。テイルの愚痴を適当に相手しながら文字の勉強をし、最近はまっている魔法辞典を読む。つまらなかった高校の授業と違い、時間を忘れていつまででも読んでいられる。実際に使った事は無いが、徐々に俺の中の魔法の知識が増えていく。


───



──────



がちゃ


「おやすみハルカ。先寝るね。」


 ん?何故かテイルが部屋の外に居た。・・・いつの間にか風呂にでも行っていたのだろう。


───おっと、もう44時か。俺も風呂に入りに行って寝よう。



 ギルドの大浴場は本当に大きい。貸し住居に住んでいる人も、ホテルに泊まっている人も、全員が使うようになっている。この世界にも湯船に浸かる習慣があるので、感覚は日本のホテルと変わらない。


 脱衣所で服を脱いでいると、入り口の方から聞き覚えのある話し声が聞こえてきた。それも四人居るので、少し騒がしい。


がちゃ


「イディアはどうやったらあんなに細かく動けるんだよ。」

「そんなに体が大きいのにさ。」

「小さい頃から凄かったよな。」


「いや、子どもの頃はティムが一番だっただろ。」


「そうか?」

「イディアと同じぐらいだろ。」

「俺達は成長が三等分されてるからな。ハハハ!」


 やはり、獣人の男性陣だ。夕飯からの時間と、汗だくなところを見ると、夕飯の後に少し動いてきたのだろう。


「皆さん!ちょうど同じ時間ですね。」


「ハルカさん!もう寝てると思っていましたよ。」


「皆さんは、運動を?」


「えぇ。腹ごなしに、少し。」

「この時間は空いてて良かったですよ。」

「風呂、というものは初めてなので、楽しみにしてます。」


 風呂が初めて?確かに集落で借りた家にもそういった類の物は無かったな。


「狼の獣人は、基本水浴びですので。」


「なるほど、そういう事ですか。」


 それなら良い機会だ。風呂の良さを味わっていってほしい。温かい湯に浸かって体の疲れを癒す、気持ちよさを。


 先に入り、体を洗っている。少しすると四人とも入ってきたので、先に体を洗うよう促しておく。そもそもギルドに居る人が少ないので、浴場にも俺達以外には数人しか居ない。


 体を洗い終わり、四人並んで湯船に浸かる。三人ともお湯に入った事が無いので最初は少しずつだったが、今は完全に良い表情をしている。

 魔王軍はどんなだろうか、など話しているとき、俺はイディアさんの左胸にある傷跡に目が行ってしまった。


「イディアさん、それ・・・」


「ん?あぁ、これですか。」


 上から下に切り裂かれた様な三本の切り傷の跡が付いている。あれ?どっかでこの傷・・・


「これは、5年前ですかね。今のミアより一つ小さい時、魔物に殺されかけたんですよ。」


「あー、あの時は村中大騒ぎだったな。」

「そういえばあったな、そんな事。」

「イディアも生きてるのが不思議なぐらいだよな。」


「本当に運が良かったよ。森の中で、魔物に襲われたんです。」


「魔物・・・メディヴェドですか?」


「おや、ご存知でしたか。」


「ええ。俺も殺されかけましたから。」


 あの時は本当にヤバかった。レオムストロフの次ぐらいには。


「そうでしたか!いや、その頃の私はパウパティと良い勝負をするぐらいの力しかありませんでしたので、もしカルトさんが助けに来て下さらなかったら、今頃私はいません。」


「カルトさんですか?」


「あの人も少し前までは凄い強かったからな。」

「あぁ。村一だった。」

「今じゃ、衰えちゃったけどな。」


 何か、意外だ。あの人があのクマからイディアさんを助けた、ねぇ・・・


「これは、その時の傷なのです。それから私は、強くなる事に一生懸命になりました。」


 それが今じゃ村で一番強いんだもんな。血の滲むような努力を重ねてきたんだろう。何だか転生してチート能力を手に入れた事に罪悪感が・・・


「そういえば、ハルカさんはどうやってそんなに強くなったんですか?」


「あ、それ聞きたいです。」

「興味ありますね。」

「ギルドに着いたときも、凄い人気ぶりでしたしね!」


 いや、それは聞かないでくれるとありがたいんだが。それに、人気ぶりって、ナシヤットを出た頃はそんな事なかったんだってば。俺も戸惑ったんだってば。


「そ、そろそろ上がらないと、のぼせちゃいますよ。アハハ・・・」


 流石にその質問には応えられない。あの四人に嘘をつくのも嫌だし、まさか転生者だなんて言えない。言ったら信じるだろうが、何があるか分からない以上変なことを言わないほうが良い。俺は急いで脱衣所へ向かっていった。

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