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おやすみ、素晴らしき美しい世界
僕の名前は逆史光。
今、三十歳になる僕はうちひしがれながら昔をふりかえっている。
1995年、ウィンドウズが爆発的に売れ始めた頃、僕たちはある計画を夢想していた。
自分の代わりに全てを行なってくれるソフト、代理人ソフトだ。
勿論、ただ代わりをするのではなく、先読みをしてどんどん、自分の代わりをしてくれる、そんなソフトだ。
夢のような話だったが、僕らはその開発に成功した。
その最大の成功要因は、僕が未来をみる力があったからだ。
深夜二時頃、みる夢のほんとんが正夢だった。
そんな夢の連続が開発を加速させたけれども、夢では、ソフトが完全に僕らの要求をみたすまで成長したのは、今から一世紀後だった。
僕たちは真剣に相談した結果、当時、アメリカとソ連で研究が進められていた冷凍睡眠を選択した。
1999年の大晦日、僕たちは一世紀の眠りに入り、あとには生まれたばかりのエージェンシーソフトだけが残された。