第6話 光と陽菜のステータス
「みんなステータス表示してみた?」
自分のステータスを見ていてみんなをほったらかしにしてしまっていた。慌ててみんなの様子を見てみるが……四人ともまだ悩んでいるようだった。とりあえず順番に見ていくことにするか。
まずは光から見ることにした。
「光、どんなclassが表示されてる?」
光の選択肢を聞きながら閲覧スキルを使って光のステータスを確認する。
───────ステータス───────
名前:渡里光 性別:♀ 種族:人間 年齢:17
レベル:1 必要経験値:10 総獲得経験値:0
class: タイプ:カオス 状態:普通
HP:100(+12) SP:90
STR:11 VIT:10
INT:7 MEN:9
AGI:11 TEC:10
LUK:6
物理攻撃力:11物理防御力:12
魔法攻撃力:7魔法防御力:13
素早さ:12
装備:防具:★1半袖Tシャツ
★1短めのスカート
★1黒のソックス
アビリティー:★5秀才★2剣技
スキル:料理の匠Lv21、家事Lv18、剣の扱いLv32、魔力感知Lv18、元気Lv12
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おぉー、デフォルトで★5秀才がついてる。光もなかなかやるな。★5秀才は★7麒麟児の二段階下のアビリティーで成長値が100%上がるアビリティーだ。
剣技も覚えていて★2だった。剣技の★は覚えている技の強さや数で決まる。★2ということは恐らく基本の3技とクリエイトスキルを覚えている状態だろうな。
ステータスを見ると魔法に関わるINT、MENが一桁のようだし光は戦士タイプが良いだろう。
「えーと……無職、戦士、魔法使い、盗賊、僧侶、魔装剣士みたい。お兄ちゃん、どれが良いかな?」
魔装剣士? また知らないclassだ。運命の申し子みたいなユニークclassだろうか?
「魔装剣士にはどんな説明が書いてある?」
「……対応した属性以外の属性が扱えなくなる、魔装剣士系列以外に転職出来なくなる、STR・INT35%アップ、AGI・TEC15%アップ、VIT・MEN10%アップ、取得時にアビリティー★9魔装換装付加……って書いてあるよ」
これはまたステータスに大きな補正がかかるclassのようだ。運命の申し子と同じようなユニークclassと見て良いだろう。
デメリットが厳しいようだが★9魔装換装というアビリティーでなんとかなるタイプのclassなのかもしれない。
「光はステータスを見る限り戦士タイプが向いてるな。魔装の意味は分からないが魔装剣士のステータス補正は大きいからデメリットを受け入れられるなら魔装剣士がいいと思うぞ」
「魔装剣士かぁー。デメリットはいまいちよく分かんないんだけど……お兄ちゃん的になんとかなりそう?」
「魔法剣士みたいなclassだと思うしなんとかなるはずだ。転職は魔装剣士系列って書かれてるから上位classがあるだろうから問題なし。対応した属性以外の属性が使えなくなるのは、アビリティー★9魔装換装で補う感じだと予想出来る。俺が光の立場なら魔装剣士にするかな」
「じゃあ魔装剣士にするー」
光はそう言うとこちらが返事を返す前にclassを選んだ。視界に映っているclass選択画面を手で指し示して決めていた。声に出す以外の操作法の一つである。
「お、おぉー! なんか体が軽くなった!」
高いステータス補正を受けた光は体が軽く感じられたようだ。あれだけの補正を受ければ普段の体の感覚とは違って感じられるのだろう。
光は椅子から立ち上がるとその場で飛び跳ねてみせた。
そんなにはしゃいでいると勢い余って天井にぶつかりかねない。……あっ、刺さった。
「お兄様は他の人のステータスを見ることが出来るのですか?」
天井に頭を突き刺してじたばたもがいている光の姿を眺めていると陽菜が話しかけてきた。
「あぁ見られるぞ。閲覧スキルがあると他の人のステータスを見ることが出来る。まだLv1だから細かい部分は見られないけど」
「それでお姉様のステータスが分かったんですね」
なるほどと陽菜は頷いていた。さっきの俺の発言から気付いたみたいだ。光が★5秀才なら陽菜は★6天才でも持っていそうな気がするな。陽菜は頭がいいし。
「陽菜はどんなclassが表示されてる?」
光同様に閲覧スキルを使用して陽菜のステータスを確認する。
──────ステータス──────
名前:渡里陽菜 性別:♀ 種族:人間 年齢:14
レベル:1 必要経験値:10 総獲得経験値:0
class: タイプ:ロウ 状態:普通
HP:70 SP:140
STR:5 VIT:4
INT:15 MEN:13
AGI:9 TEC:11
LUK:7
物理攻撃力:5物理防御力:6
魔法攻撃力:15魔法防御力:18
素早さ:10
装備:防具:★1水色チュニック
★1水色フリルスカート
★1白のソックス
アビリティー:★6天才★3炎魔術★2風魔術★2水魔術★3氷魔術★1土魔術★1氷魔法
スキル:料理の匠Lv22、家事の匠Lv20、炎魔術の扱いLv28、風魔術の扱いLv15、水魔術の扱いLv16、氷魔術の扱いLv29、土魔術の扱いLv6、氷魔法の扱いLv3、詠唱Lv2、魔力感知Lv27、魔抗Lv2
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……ん? 俺は思わず二度見した。
陽菜はすごい種類の魔術を覚えていた。とてもレベル1の状態ではない。しかも予想した通り本当にアビリティー★6天才を持っていた。
★6天才は★5秀才のワンランク上、★7麒麟児のワンランク下のアビリティーで成長値が300%上がるスキルだ。これもレベルが上がれば上がるほど他の人達と差がつくためとても強いスキルである。
魔術は触媒を使うことによって魔法より低コストで魔法を扱えるようになるアビリティーだ。ただ触媒がないと使えないため触媒集めにさえ苦労する序盤ではあまり出番のないアビリティーとなっている。触媒が容易に集められるレベルになると魔法以上に厄介になる場合もあるため魔術を覚えている人を侮ることは出来ない。魔法は魔法適性がないと行使することが出来ないが魔術は魔法適性が無くても鍛えれば行使出来るようになるのも強みである。しかし自身の魔力のみで発動させている魔法よりも触媒を媒体にしているため魔法の形が狭まってしまうのが弱点と言えるだろう。
陽菜は★1氷魔法を覚えているため魔法の素質があるようだ。魔術も複数の種類を覚えているためレベルが上がっていくとかなり強くなりそうである。
ステータスもHP、STR、VITが低く。SP、INT、MENが高いため魔法タイプと見て良いだろう。
「……無職、戦士、魔法使い、盗賊、僧侶……魔法……幼女です……」
「……魔法幼女?」
「魔法幼女です……」
陽菜の姿を改めて見る。……幼女だな。どう見ても小学生の女の子にしか見えない。陽菜はゲームシステムの判定でも幼女の区分けになったようだ。魔法幼女、言い得て妙である。残念ながら魔法少女にしては幼かったということで魔法幼女なのだろう。21歳で麒麟児と表記されている俺も似たようなものだから何も言えない。
魔法幼女、これも聞いたことのないclassである。名前から考えて魔法タイプなのは間違いないようだが。
「魔法幼女の説明はどうなってる?」
「魔法の体現者、INT・MEN50%アップ、AGI・TEC・LUK20%アップ、取得時にアビリティー★9魔法の真理付加……と書かれています」
また強力なユニークclassのようだ。魔法タイプの陽菜にこれ以上ないclassだろう。上昇するステータスも異常に高いし間違いなく強い。
★9魔法の真理は知らないアビリティーだが魔法に関する強力なアビリティーだと予想出来る。
このユニークclassをオススメしたいところだが……陽菜が気に入るかどうか……幼女の部分を気しているようだし……。
「陽菜は……魔法タイプのステータスをしてるから魔法系のclassが良いと思うぞ。初期で魔法を覚えてるから魔法適性もある。classは魔法幼女がオススメだな。上位classがあるかは分からないがそれでも上昇するステータスがかなり高いからオススメだ」
「たしかに……ステータスを見る限りそんな感じですよね……。……お兄様が言うなら魔法幼女にしますね」
やや間があったが魔法幼女にしてくれたようだ。
陽菜はシステム判定で幼女扱いされたストレスを発散しているのか、頭を天井に突き刺したまま力尽きている光をつんつんしていた。自力で抜け出せず動かなくなっていた光はブラブラと振り子運動をしている。
……俺は見なかったことにした。