第4話 簡易チュートリアル
「まずはみんな、クエスト表示、と唱えてもらってもいいかな?」
ルミルの庭の簡易チュートリアルと比べてどこまで変化してしまっているか分からないけどとりあえずクエストに沿って説明していくことにした。
四人ともクエスト表示と唱える。
─────クエスト─────
件名:簡易チュートリアル
難易度:★
依頼主:システム
内容:簡易チュートリアルクエストです。大雑把にステータスシステムについて解説します。初めての方、初心者の方は受諾した方が良いでしょう。経験者の方は拒否しても大丈夫です。
達成条件:受諾or拒否
失敗条件:あなたの死亡
期限:なし
ペナルティー:なし
発生条件:この世界にユーザーとして認知される
達成報酬:受諾時:初心者セット
拒否時:classスキルスクロール初級
──────────────
「何か出た!」
「簡易チュートリアル……」
「ほぅ」
「……報酬が2パターンあるわね」
みんな目の前に突然現れたクエスト画面を読んでいるようだ。なんか既に父さんが分からんといった顔をしているが冗談だと信じたい。
俺は全員が読み終わったタイミングで説明を始める。
「これがクエスト画面。配信されたクエストや受諾したクエスト、その履歴が見られる画面だ。右下で点滅していたアイコン……クエストアイコンが消えたと思うけどそれは今クエスト画面を開いたからだ。他にも何種類かアイコンがあるけど大体見た目で分かるだろうしその辺の説明は省くよ」
「はーい」
「右下にアイコンが現れたときはそのアイコンの事柄に変化があったときなんだ。だから点滅したときは出来るだけ早めの確認をオススメする。赤く点滅したときは緊急事態だから即チェックだな」
「なるほど……」
この部分はかなり重要で場合によっては大惨事になりかねないことなので最初に説明した。例えばダンジョン攻略中にモンスターの異常発生などがが起きてそれに気付かなければ命に関わる。そういった緊急事態には緊急通知や緊急クエストが発生する。なので通知を早めにチェックすることはとても大事なことなのだ。
「みんなにはこの簡易チュートリアルクエストを受けてもらってそれに沿って説明していこうと思う」
「受諾、拒否で報酬が違うみたいだけど……。拒否した場合のclassスキルスクロール初級というのはそんなに重要じゃないのかしら?」
「うーん、あった方がいいのはたしかだけどみんな初心者だから受諾して基本を学んだ方が良いと思う。ゲームと違って死んだらどうしようもないからな……。classスキルスクロール初級っていうのはちょっとしたショートカットにはなるけど、長い目で見ると大差ないアイテムで今後、手には入れることも出来るから大丈夫だよ」
「たしかにそうね」
母さんは納得した表情で頷いた。
「では次にクエストの受諾。クエストの受諾はクエストの件名を言って受諾と唱えれば受諾出来る。拒否する場合は拒否って唱えれば大丈夫だ」
「簡易チュートリアル、受諾!」
四人ともクエストの受諾が出来たようだ。
光と陽菜が微妙に恥ずかしそうな顔をしているが気持ちは分かる。人前で堂々と声を出すのは恥ずかしいものだ。その内容が日常生活では使わない言葉なら尚更である。もし衆人環視の中でそんなことがあれば人によってはトラウマになりかねない。
実は慣れれれば声に出さなくても出来るようになるが何事も基本は大事だ。まずはみんなには声を出す方法でやってもらった。あとで声にしなくても出来る方法を教えるとしよう。俺は無言で受諾しておく。
クエスト簡易チュートリアルを受諾しました。
クエスト簡易チュートリアルを達成しました。
初心者セットを入手した。
ログが流れると共に脳内に女性の声が聞こえてくる。ルミルの庭の簡易チュートリアルの説明役の人と同じ声だった。
「簡易チュートリアルクエストの受諾ありがとうございます。このクエストは初心者の方へ向けたステータスシステムの簡易説明をさせていただくためのクエストです。しばらくの間お時間をいただきますのでお付き合いよろしくお願いします。
ステータスシステムとはRPGをプレイしている方にはお馴染みのシステムだと思われます。基本的には実際に自ら体験して学んでいくのが最善なのですが、経験のない人には慣れていない部分のため最低限の説明させていただくことになっています。
まずはステータスとは何かについて説明させていただきますね。ステータスとはあなたの能力を可視化した物になります。ステータスの各数値はあなたがユーザーとして認知された時点の能力から算出されております。アビリティー・スキルについても同様です。
これからステータスを確認していただきますがステータス画面の初回表示時にclass選択をしていただきます。classとはあなたのプレイスタイルを決めるものとなります。戦士なら物理方面に魔法使いなら魔法方面に強くなれます。classによってあなたの行動は大きく左右されますので慎重に選ぶことをオススメします。一度classを選択すると変更するには一部のギルド施設でお金を払うか、特定のアイテムの使用が必要になります。しつこいようですが慎重に選ぶことをオススメします。
それではステータスを確認していただきますね。ステータス表示と唱えてください」
説明役の女性が一通り語り終えると四人の様子を窺う。大体把握出来たかな?
「お兄ちゃんclassって?」
光と目が合うとやはり気になったであろうことを聞いてきた。重要な部分だしな。
「classっていうのは分かりやすく言うと職業だな。変更するにはお金がかかるし複数のclassに手を出すより一つのclassを極めた方が強くなれるから自分のやりたいことを考えて選んだ方がいいぞ」
「そっかぁ……」
光は顎に手を当てるとうーん、と悩み始めた。似合わない。
「例えば魔法使いになったら剣を使えなくなったりするのかしら?」
さすが母さんいい質問だ。実はルミルの庭ではclassによる装備制限はない。よくあるゲームでは大抵classに合わせて装備制限がかかるがルミルの庭は違う。それもルミルの庭が人気の一つの要素だと思う。
「魔法使いになっても剣を装備出来るし剣のアビリティーやスキルも使えるよ。ただ戦士系になるより剣を扱いにくくてあまり生かせないって感じだな。普段室内に籠もってる科学者が屋外に出てマラソンをするイメージ。鍛えれば科学者でもマラソン選手並みに走れるだろうけど相当な苦労が必要ってね」
「そのアビリティーとかスキルってのは?」
父さんもなんとか話についてきているようだ。
「特殊技能や能力だね。それぞれ効果が違うけど必殺技って感じの物や集中力が上がる物……いろいろあるけど普通の状態より強い攻撃が出せたり強くなれる能力って感じだな」
「お兄様はルミルの庭ではどんなclassでプレイしていたのですか?」
「俺かぁ……俺はいろんなclassをやっていたけど今のclassは魔法剣士だったかな?」
「魔法剣士……。お兄様が戦士でしたら魔法使いに、魔法使いでしたら戦士にしようと思いましたが……両方こなすなんてさすがお兄様です!」
陽菜がキラキラした目を向けている。どうしても片方だけだと満足出来なくて最終的に両方出来るclassに落ち着いちゃっただけなんだよねぇ……うん。
「いやいや……強い人たちの中では魔法剣士の人もそこそこいたからそんなにすごくはないよ。陽菜は俺に合わせるんじゃなくて自分に合いそうな物を選ぶんだよ」
「はい……分かりました」
しょんぼりしている陽菜を見て少し苦笑いがこぼれる。陽菜の傾向を考えると戦士系ではなく魔法系のclassにした方が良いと思うけどね。
「classは極めると中位class、上位classとより強いclassに変えていけるから一部のclassを除いて基本的にはそのまま同じ系統のclassで進んでいく感じ。例えば戦士系は戦士、剣士、剣聖になれるし魔法系は魔法使い、上級魔法使い、大魔法使いになれるね。勿論たくさん分岐したり条件を満たすと成れる難しいclassもある。魔法剣士は複合classで戦士と魔法使いを極めるとclassチェンジ出来るようになる」
みんな難しい顔をして唸っている。たしかにここは悩む部分だ。みんなのステータスの数値次第で向き不向きもあるだろうから、まずはステータスを見てみないとだな。