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第25話 ダンジョン捜索案

 父さんと母さんの凄みのある顔が元に戻ってきたところで信司は話を促す。


 「それで、あと残る話はダンジョンの捜索くらいか?」


 ダンジョンに気をつけようといっても肝心のダンジョンの場所が分からなければ常に警戒することになり気が休まらない。魔物暴走(スタンピード)を起こさせないためにも一刻も早く発見し対処しなければならない。また見逃さないためにも一人ではなく複数人での捜索が望ましい。


 「そうだな、あとはそれくらいだ。魔物暴走(スタンピード)っていうのが信司の予想通りのものだとしたら正直かなり不味い、この国が、いやこの世界がどうなっちまうのか想像も出来ないな。だから多少無茶をしたとしてもダンジョンの発見を急いだ方がいいだろ。そこでどういった方法を取るかなんだが……」


 父さんはそこで言葉を一旦区切るとどうやって伝えるか言葉選びに悩んでいるのか、難しそうな表情を浮かべるがそれを見ていた母さんが引き継ぐように代わりに口を開いた。


 「発見者に賞金を出すって方法が手っ取り早くて一番有効そうねっていう話をしていたのよ。たしかにお金に目が眩んだ人達が張り切って危険な目に遭う可能性は高いけれど、もしダンジョンを見落としてしまってそれが魔物暴走(スタンピード)を引き起こしてしまった場合そっちの方が甚大な被害になるわ。だからその方法を上に伝えようと思うのだけれど何か他に良い案はあるかしら?」


 魔物暴走(スタンピード)がどういうものなのか、明確なことは分かっていない。予想を元に動こうとしているのが現状だ。魔物暴走(スタンピード)が起きたとして予想が当たっていたら甚大な被害を被るのは確実であり、最悪の事態を想定して動くのは間違いではないはずだ。

 ダンジョンをどのくらいの期間放っておくと魔物暴走(スタンピード)が起こるのかも分かっていない。だからこそ迅速にダンジョンを発見しなければならないがそのための方法として発見者に賞金を与えるというやり方は理に叶っていると思える。命の危険があるにもかかわらず無償でダンジョンを探すなんて誰が協力するのだろうか。いるとしたらよほどの善人か偽善者、変人くらいのものだろう。俺は特に他の方法は思い浮かばないな……。

 信司は少し考えてみたが他に良さそうな方法が浮かばなかったため両親の案に賛成であった。そのため別の方法を考えるのではなくその案を補強する意見を挙げた。


 「特にないかな、それでいいと思う。ただ追加で意見がいくつか、まず一つ目はプラホのマップ機能にダンジョンに関するオプションを加えて欲しいということ。未探索のエリアと探索済みのエリアを識別する機能やダンジョン発見時にすぐに報告出来る機能、報告されたダンジョンをマップ上にダンジョンとして表示させる機能とかがあると助かる。あと世界融合の影響で地形が変化している可能性がある。地球側とルミルの庭側の土地をきちんと決めておかないと後で面倒なことになりそうだ」


 信司はそう言いつつプラホを取り出しマップ機能を起動させた。



 マップを起動します。

 GPS機能をオンにしますか? →はい。

 現在地情報を取得中……エラー。

 現在地情報が既存のマップデータと一致しません。

 周囲の地形情報が変更されている可能性があります、周囲の地形情報をアップデートしますか? →はい。

 人工衛星から最新の地形データを取得中……マップデータを更新中……現在地情報とマップデータの一致を確認しました。

 アップデートを完了します。

 なお既存のマップデータと最新のマップデータに複数の相違箇所が確認されたためナビ機能の使用はオススメ出来ません。

 マップデータ全体のアップデートを推奨します。



 やっぱり世界融合の影響で地形が変わってるみたいだな。マップを起動してみたらエラーが出た。とりあえず周囲の地形だけアップデートしてみたが……これってダンジョン捜索の時にみんなが一斉にアップデートしようとしてサーバーが落ちるんじゃないだろうか。寝る前にマップデータ全体のアップデートをしておくとしよう。

 アップデートが終わって表示されたマップを見てみると渡里家の敷地が元の5倍くらいに拡張されていた。渡里家の敷地はほぼ正方形だ。その形状はそのままだが面積が増えた分、元々あった道路や周囲の家々が押し出されている。家屋や倉庫などは特に大きくなっておらずそのままだったが広がった敷地を囲んでいる塀はそれに合わせるように明らかに伸びていた。また塀の入口から家までの空間は特に広がっており、どこの金持ちだよ、と言いたくなるほどに距離が開いていた。その間にはいくつかの建物があるようでミレーヌとフィオの話から勇壮の風(ヴァリアントガスト)のキャンプ場付近の建物だと予想出来た。

 まさかこんなことになっているとは……塀の部分とかどうなって伸びているんだろうか。土地が広がったから固定資産税が増えるとか無いよな……? 

 どこかズレたことを考える信司であった。

 信司は見やすいように周辺の地形のマップを立体投影で表示する。それを目にしたみんなは驚いた顔を見せる。誰だって自分の敷地が物理的に広がっていたら驚くだろう。ミレーヌとフィオは立体投影されたマップを見てその技術に驚いているように見える。ルミルの庭にも似たような現象を起こす魔法はあるが、魔力を使わずにそれを行っているということが信じられないのだろう。先程の懐中電灯と同じ電気を使った技術なのだが仕組みはとても複雑化しているためとても同じ技術だとは思えない。


 「……たしかに、マップを見る限り我が家の敷地が広がっているな。土地の利権とか、めんどくさいことになりそうだ。マップに関してもきちんと伝えておこう」


 「あらまぁ……庭から先がかなり広がっているけど、その先にある建物がミレーヌちゃん達のいた場所かしら?」


 「これは敷地の外に出ようとするだけでも時間がかかりそうですね……」


 陽菜の言葉に同意するように頷く。外との出入りだけで移動に時間を取られるのは間違いないな。何か良い解決法があればいいんだが……。



 父さんがマップに関して理解してくれたようなので立体投影を終了させるとプラホをしまい次の意見に移る。立体投影された映像が消えたときにまだ真剣に見ていたのかミレーヌとフィオが、あっ、と声を漏らした姿を見てほっこりする信司なのだった。


 「次に二つ目、いくら賞金が出るといっても短期間で国全体を捜索し終えるのは無理だと思う。そこで個人個人、または地域ごとに周辺の捜索をしてもらう。自宅の近辺であれば一人でもそこまで危険はないだろうし、社会人なら仕事の帰り道に気をつけながら帰ってもらうだけでもいい。個人で調べるには少し危険な場所や広い場所は地域ごとに協力してもらえればスムーズに捜索出来ると思う。森や山などの一般人が捜索するには危険な場所はその手の専門家や自衛隊に任せればいいと思うし、明日は土曜日だ。土日を利用すればかなりの範囲が捜索出来るはずだ。マップのアップデート次第だけどやり方の一つとして提案してみるのはどうだろうか?」


 幸いなことにこの国は土地が狭い割に住んでいる人が多く人口密度が高い。だからこそ人海戦術はかなり有効である。山も多いためそれに比例して傾斜面の多い起伏の激しい土地も多いのが難点だが、それでも人口が少ない国や広大な土地を持つ大国よりは捜索がし易いはずだ。


 「それはパパも思っていたことだな。村だと人数が足りなくて難しいかもしれんが町や市ならスムーズに捜索が進むはずだ」


 どうやらこの意見は父さんと母さんの間で既に話し終えていたようだ。


 「それなら大丈夫そうだね、最後に三つ目は賞金に関してだ。まず発見者に対する賞金だけと命の危険があるからそれ相応の金額じゃないと動いてくれる人が減ってしまう。あまり高額過ぎてもダンジョンの総数が分からないから後で支払いが出来なくなる可能性も出てくる。その辺りを加味して慎重に判断して欲しいってこと。次に解析者に対する賞金も準備して欲しいってこと。ダンジョンを見つけたとしてもどんなダンジョンなのか分からなければ危険だ。ダンジョンの情報を得るには鑑定スキルが必要で難易度の高いダンジョンであるほど求められる鑑定スキルのレベルも上がる。だからダンジョンの情報を得ることが出来た場合解析報酬とかの形で賞金を出してもらいたいんだ」


 ルミルの庭で見つかっているダンジョンの数は千を越えており未だに全部でいくつに上るのか判明していない。世界融合によって今この世界にいくつのダンジョンがあるのか、ゲームだからこそ出来た蘇生の件もある、ゲームの時よりもその数が変化している可能性は高い。この国のダンジョンの数が少ないことを祈るばかりだ。

 鑑定スキルに関しては地球の人達にはあまり期待できない、そもそも鑑定スキル自体がかなりレアなスキルでルミルの庭でも持っている人は少ない。鑑定スキルを持っていれば鑑定屋を開いて一生お金に困らず生活していけると言えばその貴重さが分かるだろう。レベルが1でスキルが充実していないことは予想できるし、ルミルの庭のプレイヤーに送られていると思われる特典らしきアビリティーによって付加された鑑定スキルはスキルレベルが1のため最低ランクのダンジョンくらいしか鑑定することは出来ない。それなりの人数の人がプレイヤー特典らしき鑑定スキルを持っていると思われるがスキルレベルが1では実用性のあるレベルになる前に魔物暴走(スタンピード)の方が先に起こりそうなものである。


 「ダンジョンの解析ね……それは思いつかなかったわ。言われてみればダンジョンごとにそれぞれ違いがあるっていうのは納得できる話ね」


 「そうなると個々の賞金額は少なくなりそうだが、まぁ仕方ないな。貰える賞金は見つかるダンジョンの数次第だろう」


 おそらく解析の賞金のほとんどは鑑定スキルの使えるルミルの庭の人達のものになるだろうなと俺は思った。

 父さんと母さんの話も一段落したようで賞金の話を最後に一旦の落ち着きを見せる。

 ほとんど俺と父さんと母さんで話を詰めてたけど……。


 「とりあえずこんなところか、他に何か意見はあるか? なければここまでの話を国に伝えてくるが」


 父さんの言葉にみんなは沈黙をもって答える。


 「特になさそうだな、よしっじゃあパパ達はこの話を偉い人達に伝えてくる。自室にいるから何か用があったら呼んでくれ」


 ぐるりとみんなの顔を見回し特に意見がないことを確認すると父さんは居間から出て行くのだった。


 「電話しているだろうから用があるときは静かにお願いね」


 母さんはそれだけ言うと父さんの後を追うように立ち上がり自室へと向かおうとするが片足が廊下に差し掛かったところで、あっ、と声を上げるとこちらを振り返る。


 「信司、寝る前にそこに転がっている光を部屋まで運んでおくのよ」


 「あぁ、分かった」


 信司が返事を返すと母さんは改めて自室へ向かっていった。信司は光へと目を向けるがそこには話し合いを始めてから結構な時間が経つが未だに仰向けに倒れたままの光の姿があった。

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