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第24話 懐中電灯と両親の話後編

 一つ目の話題が落ち着くと父さんはすぐに次の話に移る。


 「次にルミルの庭の人達の保護についてだ。ある意味地球側の人達の身の安全の話にも繋がるが、文化の違いや言葉の違いによって意志疎通が難しい。それらの問題からモンスターや件の第三者だと勘違いされて争いが起こる可能性がある。だからルミルの庭の人達を発見し次第保護した方がいいだろう。やりとりの出来る人を仲介してそのままその場所に住むか、国の方で住む場所を作ってもらいそこに移住するかのどちらかになるだろうが……。細かいところは偉い人任せになるな」


 少ない人数でバラバラに暮らすよりも一カ所に集まり一つに纏まって暮らした方が安全なのは明白だ。少数では悪意ある人に目をつけられた時に対応することが難しい。相手によっては助けを呼んだり反抗することさえも出来ないかもしれない。周囲の人達が気付いたときには既に手遅れになっている可能性だってある。纏まった集団であれば狙われてもなかなか手は出しにくいだろうし、相手は目立つことを恐れて行動出来なくなるはずだ。狙われていることが分かれば警戒するなどの対策を立てることも難しくはない。

 とは言っても人によっては事情があってその地に住みたい人や定住せずに各地を渡り歩きたいという人達もいるだろう。その辺りは偉い人に臨機応変に対応してもらうしかない。


 「他の人がどういった反応をするかは分かりませんがそれで大丈夫だと思います」


 人間の大半は安定を求めて家庭を作り、どこかに定住する生き物だ。中には少数だが明確な住居を持たず各地を転々としながら生活している人達もいる。ルミルの庭の人達のタイプは前者と後者の比率が似たり寄ったりで、地球の人達より個人主義の人達が多い。ダンジョン攻略で生計を立てている冒険者と呼ばれる人達だ。

 彼らの殆どは自らの住居を持たず、各地のダンジョン近くの宿屋などの宿泊施設に身を寄せている。着の身気の向くまま、未だ見ぬ宝を求めてダンジョンへと向かうのだ。

 彼らがダンジョンから持ち帰る数々のアイテムは強い力を秘めていたり、今の人間達には到底再現出来ないような技術で作られている物品だったりする。まさしく宝物と呼ばれる品々だ。それだけではなく、魔物を倒すことで得られる各種素材や採取で得られる薬草などの薬の材料、ダンジョンの鉱脈でしか得られない特殊な金属など、ダンジョンから得られる資源を挙げればきりがない。それらの資源は冒険者から市場に流れ、複数の人達の手を経由してやがて国全体へと行き渡る。

 ルミルの庭の発展の歴史には常に冒険者の姿があった。

 冒険者は命を担保にダンジョンへと向かう。そんな彼らの性格は十人十色、目的だって違う。だから先程の話をしたときの反応が予測できないのだ。


 「交渉を担当する人にはくれぐれも穏便に、相手の意志を尊重するように念押しした方がいい。争いになった場合、相手が冒険者ならまず勝ち目はない。もし協力してくれるルミルの庭の人がいたらその場に同席してもらった方がいいだろう」


 お互いのためにな、と信司は付け加えた。


 「そうだな、その辺りは気をつけるように伝えておくとしよう」


 父さんはそう言うと見定めるかのような視線をミレーヌとフィオに向け、スッとその目を細めた。フィオは視線を受けて居心地が悪そうに僅かに身じろぎをするがミレーヌは視線を受けてもいつも通りの表情のまま動じていなかった。そんな二人の姿を見ていた父さんは肩の力を抜くとやれやれとばかりにゆっくりと首を振りながら両手を上げた。


 「やれやれ、まだまだ若い奴らには負けねぇと思ってたんだが……。パパも歳かねぇ…正直二人に勝てる気がしないんだが。これがレベルって奴の差なのか?」


 「特にミレーヌちゃんはすごいわねぇ……全く隙が見当たらないわ。フィオちゃんは接近戦が苦手そうに見えるから魔法が得意なのかしら。それでもママより強そうだから悔しいわね。二人ともルミルの庭では結構強い方じゃないのかしら?」


 母さんも二人の強さを測っていたのか、勝てそうにないと言う。二人ともそんなことはないとばかりに首をブンブンと振っていた。

 さすが父さんと母さんと言うべきか、二人ともミレーヌとフィオの強さを見ただけで大まかに感じ取ったようだ。

 ルミルの庭の人達みんながミレーヌ達ほどの強さがあるわけではないが、それでも目の前にいる二人の力量は間違いなく高い。信司の両親は改めて穏便に交渉を進めるように念を押すことに同意したのだった。


 「いえいえ、私達なんて信司様の足元にも及びませんよ! まだまだ修行中の身ですし、私達より強い人はたくさんいます」


 「フィオは強くないのですよー。たしかに魔法が得意ですけど、すばしっこさにも少し自信があるので接近戦も少しは出来るのです。師匠である信司様に鍛えてもらっているのです」


 なぜか誇らしそうに無い胸を張るフィオ。さらに両親には、信司はそんなに強かったのか、と驚いたような目で見られる。陽菜は信司を見て瞳をキラキラさせていた。


 「いや、まぁ俺のことは置いておくとして……ミレーヌはAランク冒険者といってルミルの庭でも上位に位置する実力者だ。かなり強い方だぞ。フィオは鍛錬を始めてまだ間もないからそこまで強くはないがルミルの庭でも珍しい精霊魔法の使い手だからなぁ、今はまだDランクだが将来的にはもっと上のランクまで上がれるはずだ」


 「お兄様、ランクというのは……?」


 「ランクというのは能力に応じて区分された強さの指標だ。上からSABCDEFの7ランクがある。大まかなランクごとの強さは上からS=白金級=伝説級冒険者、A=金級=達人級冒険者、B=銀級=熟練冒険者、C=銅級=上級冒険者、D=鉄級=中級冒険者、E=木級=下級冒険者、F=紙級=初心者となっている。一般的な話では才能のない人の限界がCランク、才能のある人の限界がAランクと言われてる。Sランクは天才中の天才で、もはや人間やめてるような強さを持つ人達だ」


 「ミレーヌちゃん達も強いけどもっと強い人達もいるのね……世界は広いわ……」


 「レベルってのを上げればパパ達も強くなれるんだろ? むしろ強い奴らがたくさんいた方が越えるべき壁が増えて燃えるってもんだろ」


 そう言う父さんは獰猛な肉食獣のような表情を浮かべる。


 「……そうね、そのうちミレーヌちゃんを倒せるくらい強くなれるかしら」


 母さんも何故か父さんに合わせるように凶悪な表情を浮かべた。

 いや怖いから、フィオがそれを見て若干引いてるから。


 「その目は……その目は殺る気なのです!?」


 凶悪な顔を見せる二人の様子を見てフィオは自分も越えるべき壁の中に含まれていることを思うと戦慄を禁じ得なかった。

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