第21話 情報交換!後編
読者の皆さんから幾つかのご指摘をいただきました。
そのため今話から見やすさ向上の改善を図ります。
一部書き方の変更、会話文と地の文の間に空行の挿入を行っております。
今後ともより良くしていきたいと思いますので何かあれば気軽に指摘、感想をお願いします。
少し時間を置いてから信司は口を開いた。
「最下級と呼ばれる一番弱い分類の魔物ですら戦いの心得がない村人、この場合一般人は殺される可能性がある。上級の魔物になると村や町は滅びかねないし倒すには達人級の冒険者が必要だ。最上級の魔物になると国……世界が滅んでも不思議じゃない、伝説級の冒険者が複数人いて倒せるかどうか…といったところだな」
「自衛隊じゃ太刀打ちできないのか?」
父さんが渋い表情を浮かべて、この国の戦力を持った組織の名前を挙げる。
「たぶん厳しいと思う、国内に現れたダンジョンの数がどのくらいにのぼるのか分からないし、強力な魔物相手にどこまで攻撃が通じるか……」
自衛隊の能力を疑うわけじゃないが、実際にルミルの庭をやっていた俺からすると、自衛隊では完全には対処し切れないと思う。もし、国内に現れたダンジョンの数が少なく、難易度の低いものばかりであれば自衛隊で魔物暴走を抑えられるかもしれない。しかし、そんな幸運を想定して行動するのはあまりにも危険だろう。
今、高ランクの魔物が現れたら倒せる人はいない。ルミルの庭を経験していて、高ランクの魔物を倒せる技能を持った人達はみんなレベル1なのだから。
分かりにくい説明になってしまったが父さんと母さんも現状が認識出来たようだ。二人とも考えを巡らせているのか難しい顔をしている。
「……もしも現状で特異体と戦う事態になったとしたら、地球側の人達で倒せる人はいらっしゃいますか?」
いないだろうな、何しろみんなレベル1だ。ルミルの庭での経験を生かすにしてもレベルがここまで低いと厳しい。
それにゲームで出来たことが現実でも同じ様に出来る人がどれだけいるか……。これは遊びではなく現実なのだ、思うように体が動かすのは難しいだろう。
考えれば考えるほど状況の悪さが目立つばかりだ。
「恐らくいない、こちら側の人間のレベルはみんな1だと思う。まともに戦える人材が育ってくるにしても相当先だろうな……」
「そんな……!?」
ミレーヌは信司の言葉に愕然とした。
まさか地球側の人達が全員レベル1だとは思ってもいなかったのだろう。
「その特異体っていうのは何かしら?」
話の腰を折ってしまってごめんなさいと言いながら母さんが質問をした。
「特異体とは通常の魔物よりも強力な魔物のことなのです。閲覧というスキルを使うと相手のステータスが見れるのですが、稀に魔物の中に名前持ちや二つ名持ちがいるのです。そいつらは同種の魔物と比べると少なくとも倍以上、本当に強力な個体だと十倍以上の強さを秘めていることもあるのです。もし敵に見かけたら最も警戒しなくちゃいけない相手なのですよ」
ショックで固まっているミレーヌに代わってフィオが答えた。
「……聞けば聞くほど厳しい状況ね。まず、すべきことを纏めた方がいいわね。まずはダンジョンへの注意喚起かしら」
「それとルミルの庭とやらの人達の保護だな。言葉が通じないだろうから話が拗れれば最悪殺し合いになるぞ」
たしかに最優先事項はその二つだろう。面白半分でダンジョンに入り込んで死んでしまったら目も当てられない。入ってしまった人を助けようとして犠牲者が増える可能性だってある。ルミルの庭をやっていない人達からすれば言葉の通じないルミルの庭の人達を魔物と判断して攻撃してしまう可能性もある。
そんなことになれば身体能力で勝っているルミルの庭の人達に殺されてしまうだろうし、自衛隊が出てくれば今度は物量でルミルの庭の人達が殺されてしまう。協力しないといけないのにそれ以前の話になってしまうだろう。
流石というべきか職業柄なのか、父さんと母さんは状況判断が早い。
「ミレーヌ、周囲のギルドと野良の把握は出来てるか?」
「……はい、把握出来ております。失礼ながらここに訪れる前に渡里邸の敷地だと思われる範囲の安全確認をさせていただきました。」
何とかショックから立ち直ったのか、まだ少し顔色が悪いがミレーヌは答えた。
やはりミレーヌは優秀だ。いきなり知らない場所に投げ出された状態で周辺の状況を確認するなんてなかなか出来ることではない。
「確認出来たギルドは勇壮の風も入れて17ギルド、野良は二名で総勢百三十四名が確認出来ました。各ギルドのランクはSが1、Aが1、Bが2、Cが2、Dが8、Eが3。そのうち冒険者ギルドがCに1、Dに2、Eに2の五つで七十六名になります。野良の方はBランク冒険者ボー・ナグアスさんとDランク冒険者アンディー・シュコットさんです。全員に勝手な行動は慎むこと、私有地の可能性が高いので話が通るまで動き回らないことを通達してあります。明日の昼にはキャンプ場に一度集まって話し合いの予定です」
百三十四人もいるのか、かなりの大所帯だなぁ…そんな人数が入りきるほどうちの庭は広くなかったと思うけど……世界融合の影響で土地でも広がったのか?
戦える人が七十六人…いや野良の人を入れれば七十八人か、それだけいればこの付近は何とかなるかもしれない。
「なるほど、それなら尚更具体的な話は今のうちに纏めておいた方が良さそうだな」
ミレーヌ達の状況は大体分かった。あとは出会った時に言っていた夢とは何のことなのか聞いておくか。
「ミレーヌ、玄関で言っていた夢っていうとはどういう意味なんだ?」
「信司様達と出会えていたのは全て夢の中の出来事だったんですよ」
ん? どういうことだ?
「三年程前からでしょうか、毎日不思議な夢を見るようになりました。現実と同じような世界なんですが、どこか現実とは違う……そんな夢です」
三年前ならルミルの庭が発売された年だな。
「夢の中では現実では見かけない人達がたくさんいました。彼等は聞いたことがない言語で会話していて感じられる雰囲気がどこか私達とは違いました。商店には現実世界では見たことのないアイテムが並んでいたり、本来何もないはずの空間に死んだ人を蘇させることが出来る教会というとんでもない施設が建っていたりと分かりやすく現実とは違う部分もありましたね。夢の中では夢のことを話そうとしたり、現実との違いを話そうとすると口が開けなくなったりして、それを夢の中で出会う人達に伝えることが出来ませんでした……」
こちらでいうゲームに相当する部分がミレーヌ達の夢になるのだろうか。こちらはゲーム中に現実の話を普通にしていたがミレーヌ達は出来なかったというのは気になるな。
やはりというかなんというか……ミレーヌ達の現実には教会という施設は無かったようだ。死んだ人を生き返らせるなんてことはゲームでもなければ簡単には出来ないだろう。それこそ命や魂を弄るなんてことは倫理的にも間違っている。
ルミルの庭では魔法をよく使っていた俺でも教会を利用したときの魔力の流れは今一つ理解出来なかった。
世界融合したこの世界は復活機能に当たる教会や、復活効果のあるアイテムはないだろうな。ゲームだからあったものだろう。
「恐らくゲームだからだろうな。何故、地球側の人達を優遇しているとかは分からないがミレーヌ達ルミルの庭の人達がそのことを伝えられなかったのはゲームだからだ。ミレーヌ達の現実で見たことがないアイテムというのは復活系のアイテムとかだろう?」
「ゲーム……ですか? はい、たしかにその通りです、他にも高レア度のアイテムや効果の高い回復アイテムなどはあんなに数はありません。いくら買っても減った気がしないあの在庫はおかしいですよ。現実でもあんなアイテムがあれば……」
ミレーヌが一瞬悲しげな顔を浮かべる。
しまったな……。ミレーヌは両親のことを思い出してしまったのかもしれない。
「すまんな……」
「い、いえ、ないものはしょうがないですよ! 信司様が謝る必要はありません! それより先程から話に出てくるゲームというのは何なのですか?」
ミレーヌは慌てて首を横に振ると話を変える。先程の悲しげな雰囲気はまるで感じさせない、いつもの表情だった。
ミレーヌ達、ルミルの庭の人達の状況は大体把握出来た。やはり分からない部分は多分にあるが、あとは動いて調べていかないと分からないだろう。となると今度は地球側のことを伝える番か。地球のことを話してる間に父さんと母さんがやるべきことを話し合って決めていきそうだしな。
父さんと母さんを見ると、どう動くべきか、国に何をさせるべきかを話し合っている。国に何かをさせようとしている時点で何かおかしいのだが……父さんと母さんだしなぁ……。
信司はどこか諦めた表情を両親に向けた。そして気を引き締めると真面目な表情をミレーヌとフィオに向け、今度は地球側のことを話し始めるのだった。




