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第13話 フレンドそして来訪者

 陽菜の質問が終わると今度は光が手を挙げた。


 「お兄ちゃん、コミュニケーションのフレンドってどうやってなるの? お兄ちゃんとフレンドになりたいんだけど」


 光も簡易チュートリアルを終わらせたようだ。よく見ると父さんと母さんも視線をこちらに向けている。二人とも簡易チュートリアルが終わったみたいだった。ちょうど良いので四人とフレンド登録を済ませておくことにした。


 「フレンド登録はフレンドになりたい相手にフレンド申請を送って許可されればフレンドになれる。申請は相手にフレンド申請を送るように念じれば届く、受ける側はフレンド申請が届くとコミュニケーション画面のフレンドの項目に申請が届くから許可をすればOK。念じるのが無理だった場合はフレンドの項目から手動で申請だな」


 「分かった。やってみる」


 「ピコーン!」


 電子音と共に早速フレンドのアイコンが点滅した。

 光からフレンド申請が届いたか? やってみるって言った直後に飛んでくるとは思わなかった。だがフレンド画面を表示してみるとそこには陽菜からのフレンド申請が届いていた。説明が終わって光が返事をしている間に申請したのだろう。


 渡里陽菜とフレンドになりました。


 申請を許可して陽菜へ視線を向けると嬉しそうな表情を浮かべていた。


 「父さんと母さんもフレンド登録頼むよ。今のうちに全員フレンド登録しておこうか」


 「おうよ」


 「分かったわ」


 父さんと母さんにフレンド申請を飛ばしておく。光からの申請も来たので許可した。


 「むふふ……お兄ちゃんのファーストフレンドはいただいた!」


 申請を許可したら光が拳を振り上げ叫んでいた。ファーストフレンドってなんだ? 最初のフレンドに何か意味があるのか……? 


 「……残念だが光はセカンドだな」


 「えっ!?」


 光は愕然した表情を浮かべた。まるで課題を家に忘れたまま学校へ向かって課題提出の時間になってからその事実に気付き絶望したような表情である。ちなみに光はそれを過去に六回やらかしている。


 「ふふっ、お兄様のファーストフレンドは私のものです」


 仄かに頬を染めた陽菜がボソリと呟いた。


 「陽菜ー! よくも私のお兄ちゃんのファーストフレンドを!」


 「そういうことは速い者勝ちですよお姉様」


 光は椅子から立ち上がると陽菜に向かって駆け出した。それに併せて陽菜も立ち上がると光から逃げるように駆け出す。二人は食卓の周りをぐるぐるし始めた。

 全く何やってるんだが……。とりあえずこれで最初にやるべきことは全部終わったか。

 既に地震が起きてから一時間経とうとしている。そろそろ国が何かしらの対応を始めてもおかしくないだろう。このシステムの影響でこれからどうなることやら……。少なくとも自分のことは自分で何とか出来るくらいにレベルを上げておいた方がいいだろう。仮に悪意を持った人がダンジョンでレベルを上げて、もし高レベルになっているとしたら……とてもではないが自衛隊では対処出来ない、政府は当てにならないだろう。……これからのことを考えてみても判断材料が全く足りていないのが分かる。今はとにかく情報を集めて他の人よりも優位に立てるよう動くのが大事だと思う。俺自身も妹達を守れるくらい強くならないといけない。

 不謹慎かもしれないが俺は非現実的な今の状況が楽しいと感じている。……いけないな、気を引き締めないと。

 

 時刻は22時過ぎ、家の外は暗くなっている。夜とはいえこんな状況だ、少しでも情報を得るため外の様子を見てきた方が良いだろう。

 追いかけっこをしていた光と陽菜は走るのをやめて俺を挟んで睨み合っている。走り回っていた理由はよく分からないがとりあえず落ち着いたようだ。


 「光と陽菜はフレンド登録終わったの?」


 「むー、終わったよ」


 「……終わりましたよ」


 二人はお互いを睨みながら返事を返した。走り回りながらもフレンド登録を終わせていたようだ。

 父さんと母さんに視線を向けると聞かれることを分かっていたようで無事終わったと伝えてきた。


 「ピンポーン!」


 不意に玄関チャイムが鳴り響き俺達は緊張に包まれた。この異常事態において我が家を訪れる人とはどういう人だろうか。みんなを見渡し俺が行くと小声で伝えると音を立てないように玄関へと向かう。

 気持ちを切り替えルミルの庭で培った感覚を思い出す。魔力感知スキル……このスキルがあると魔力というものを感覚で感じることが出来るようになる。レベルが上がっていくと魔力の簡単な操作も出来て様々なことに応用できるスキルだ。

 だんだんと魔力の感覚を思い出す。魔力が感じられるようになると家の中の魔力濃度が高いことに気付く。ルミルの庭のダンジョン内で感じられるレベルの魔力濃度を感じて思わず足が止まった。なんでこんなに魔力濃度が高いんだ? 

 ルミルの庭では魔力は万物に宿っているものであり、その濃淡は様々だ。勿論それは空気中にも含まれていて、同じ空気中でもダンジョン内とそれ以外ではかなりの差がある。

 魔力の発生源を辿ってみる。居間、テラス、玄関、廊下、両親の部屋、階段……ん! 魔力の発生源は二階からだった。それも俺の部屋と妹達の部屋の三ヶ所だ。えっ? 待てよ、まさか自室がダンジョンになってるのか? そんな馬鹿な……。ついでに俺のウェストポーチからも濃厚かつ異質な魔力が漏れているがこれについては気にしないことにする。

 少し集中して魔力を探ってみると部屋に置いてある物から魔力が発されているようだ。自室がダンジョンになっていなくて一安心。どうやら父さんや母さんのお土産の一部が魔力を帯びていてその影響のようだった。

 俺は自分のウェストポーチを見つめる。……そうだな、いろんな場所から怪しげな物をたくさん持ち帰ってきた両親だ。そういう品も中にはあるのだろう、そう納得する。世界には無数の伝承や伝説、神話などがある。そういった物に関わる品や年経た物品には魔力が宿っているということもあるのかもしれない。日本には八百万の神々という概念があるし不思議ではない。

 話が逸れた。魔力感知の対象を変える。廊下に一つ、これは俺だ。居間に四つの魔力の反応がある。これは家族だな。それぞれの魔力にも特徴がありそこからどの魔力が誰なのか、なんとなく想像できる。分かりやすいところで一番大きな魔力が陽菜だ。それより少し小さいのが母さん、一番小さいのが父さん。父さんより少し大きい魔力が光だろう。

 さて、玄関の外へと意識を向けてみる。人型……魔力は居間にいるみんなの魔力を全て足したくらいの量がある。もし悪意を持った相手だとしたら極めて危険だろう。しかしその人型の魔力は澄んでいてモンスターの魔力だとは思えない。ひとまずいきなり襲われることはないと思っていいだろう。少し活性化しているからもしかしたら警戒しているのかもしれない。俺は玄関へと着いた。


 「ピンポーン!」


 二度目の玄関チャイムがなる。我が家の玄関チャイムは音を鳴らすだけのタイプだ。カメラや通話機能はなくただの玄関チャイムである。そのため外の様子を見ることは出来ない。


 「はーい、今開けます」


 俺は返事をして玄関のドアへ手をかける。身体はすぐに動けるように臨戦態勢にしておく。今は相手の姿を確認するしか手はないだろう。……しかしこの魔力、どこかで感じたことがあるような気がする。そんなことを思いながら俺はゆっくりと扉を開いた。

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