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人生ホラゲー状態なのでハンドガンは初期装備です  作者: RYO
第一章 鎧武者? 銃は刀より強しです
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1-6

 急速に縮まる両者の距離。

 まだ間合いに入る前に、伊藤は刀を“投げつけた”。

「……!」

 武器を捨てる行為に驚愕した先頭の鎧武者。その首元に狙いたがわず刀が突き刺さる。

 致命傷を負いながらもまだ息があった鎧武者は片膝をつきながらも刺さった刀の刀身を掴んで抜こうとするが、

「させるかぁ!」

 それよりも早く伊藤が突っ込んで行った。そして鎧武者に刺さっている刀の柄をまっすぐに蹴りつける。

 蹴りつけられた刀は深く首に突き刺さって、その鎧武者は絶命した。

「……!!」

 だがまだ一体を倒しただけに過ぎない。

 仲間の死体を文字通り踏み越えて二体目の鎧武者が斬りかかろうとする。一方の伊藤は刀を手放している。

 だからといって丸腰な訳ではない。

 素早く服の裾を払ってホルスターから抜き放ったカスタムガバメントをヒップシュート、近距離から胴体に撃ち込んで動きを止め、両腕で構えなおして頭部にトドメの一発。

 二体目の鎧武者は刀を掴んだまま倒れようとした。

 そこに素早くホルスターにカスタムガバメントを収めた伊藤が飛び込んで、鎧武者の力が抜けた腕からもぎ取るようにして刀を奪い、接近してくる三体目の鎧武者の腕を袈裟切りで切り裂いた。

「……!!」

「……!?」

 あっさりと三体も仲間を倒されて、後続の鎧武者たちの動きが止まる。

 対する伊藤は立ち止まらなかった。

「うぉりゃぁ!」

 雄たけびを上げて四体目の鎧武者に突っ込んで行き、対応する暇も与えずに逆袈裟に切りつける。そして防具で傷が浅かったと見るや否や顔の横に構えなおして思いっきり刺突する。

 その刀身が首を貫通して四体目の鎧武者も即死する。

 もはや残りの鎧武者は逃げ腰だった。

 そんな彼らに負ける道理が、伊藤にあるはずもない。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 叫びながら――吠えながら伊藤はさらに突撃していく。

 

「す、すごい……」

 少し離れて見守る紅は、素人ながらも伊藤の凄さに驚いていた。

 明らかに『本職』である鎧武者たちに負けずとも劣らない刀さばき。さらにもう一つ、拳銃という大きな武器が伊藤にはあった。

 時には刀を投擲武器として使いながらその隙を拳銃で補い。

 時には真正面から太刀打ちできなさそうな相手を中距離から拳銃で撃ち抜く。

 サイドアームとしてもメインアームとしても拳銃を使いこなしていた。

「これなら、きっとここから出られる……!」

 無双している伊藤を見ながら、紅はそう確信していた。

 

 

 

「はぁ……さすがに疲れたぜ」

 最後の一体の首を切り落としたところで、ようやく伊藤は一息ついた。

 そして彼は、近場に倒れている鎧武者に刀を付きたてて両手をフリーにすると、ホルスターからカスタムガバメントを抜いた。

 左手で服の裾を払って、左腰につけていた四本のブラックホーク・シングルマグケースから予備弾倉を取り出し、カスタムガバメントから弾倉を抜いてそれと交換すると、古い弾倉をマグケースに収めた。

「大丈夫ですかー?」

 そうやってリロードを終えた伊藤のところに、紅が駆け寄ってきた。

「そっちはなにもなかったか?」

「はい、大丈夫でした!」

「そりゃよかった」

 そういいながらホルスターにカスタムガバメントを収めて、伊藤は突き立てておいた刀を抜いて右手に構えた。

 ふと、紅は疑問に思う。

「そういえば、なんで刀なんて使ってるんですか?」

「ん? ……あぁそうか、拳銃持ってるのになんで刀なんて使ってるのかってことだな」

「まぁ、はい、そうです」

 刀より強力で使いやすい拳銃を持っているのになぜわざわざ敵から奪ってまで刀を使うのか。紅でなくても不思議に思うだろう。

 だがそれなりの理由はあるのだ。

 げんなりといった様子で伊藤は答える。

「そりゃな? 俺も拳銃だけで無双プレイとかしてみたいけどさ? ……弾切れ、ってあるじゃん。いつなんどきこういう状況に巻き込まれるか分からないから私服で隠し持てる武器ってのが限界なんだけど、そしたら弾切れが怖いのよ」

 そう言いながら伊藤は歩き出した。紅もそれについていく。

「チェストリグとか着こみたいけど、一応警察官って偽装になってる身分でも、さすがにそれは重武装すぎるんだよねぇ……コンシールドキャリーできるバックパックとか持ち歩いてもいいんだけど、あれ重たいわりに役立たないことが多かったりするんだよなぁ」

「だから、刀の扱いに慣れたんですか?」

 その言葉に、伊藤は首を振る。

「ノンノンノン、刀の扱いじゃなくて“刀の扱いにも”慣れたってところさ。槍でも弓矢でもそれなりには戦えるよ? もちろん拳銃以外の銃器でも、ね」

 どこまでも軽い口調だったが、その言葉には確かな実感がこもっていた。

 紅は素直に称賛の言葉を口にする。

「すごいんですね、伊藤さん」

「よせやい、照れるじゃねーか」

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