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人は夢を見なければ生きれない

作者: 滝斗

とある彼はゴーグルをかけていた。

満開に咲き誇る桜と駆け抜ける肌寒い風。

足元の散った花びらを踏みしめる感触

耳元で聞こえる足音



ふと横を駆け抜ける幼馴染みたち。


彼らは足を止めずこちらを一瞬見て手をふる。

早くこいと言いたげな彼らに笑顔を向けて手をふり返す。


『先にいってるからな!』


ふと、彼の声が聞こえた。




小学校の授業は退屈だった。

先生の目を気にせず、校庭を眺めては体育の授業でドッチボールをしている別クラスの勝ち負けの予想をたてたり、教科書や机に落書きをして暇を潰していた。




体育の授業はいつも鉄棒だ。

流石に前回りはできないが、逆上がりは得意だった。今だって両手を握り、足を振り上げクルリと回れる。

逆に前回りは頭をぶつけるのが怖くてまともにはできない。




昼食は味気のないものだった。パンに少しの野菜を挟んだサンドイッチとパックの牛乳。

みんなの給食を見ると分けてもらいたくもなる。いつも給食はあまりもなく、みんなきれいに平らげた。

たまに、欠席が出たときはじゃんけん大会がおきる。もちろん、自分も食べたくて参加するけど、あまりを手に入れられたことはない。




給食時間が終われば、みんなの好きな昼休みだ。校庭を全部使っての鬼ごっこや、野球のグラウンドをつかったキックボール。

図書室に込もって読書をしたり、教室でボールと箒を使って野球をして怒られる生徒も。




自分はもっぱら、屋上にいって読書をしていた。今しかできない屋上から校庭を見渡して、気が向いたら読書をすすめる。

他の生徒が屋上にいる自分を気づかないのがなによりも救いだったりする。




昼休みが終わったら、また、午後の授業の開始だ。お腹も一杯になって午後からは昼寝をする生徒がでてくる。それを担任はあきれながらも目をつむる。たまに、意地悪で寝ている生徒に問題の答えを答えさせるときもあるが、それはそれで珍回答がでて周りの生徒としては楽しかった。



放課後は帰宅して家の近くの公園に集合してかくれんぼや鬼ごっこだ。午後の授業で寝た分みんな元気に駆け回った。

帰路につくのは六時のサイレンがなってから。


それが、僕たちのさよならの合図だった。



そして、僕はみんなが公園から去るのを見届けてゴーグルを外す。




世界は真っ暗だった。さっきまであった、桜もない。ましてや公園すらないただの空き地。

視界の高さだって全然違う。

彼はふっと息をはく。

吐いた息は白い霞を作りすぐにかききえた。



何年も前の幼い頃の楽しい日々を彼は何度も何度も繰り返していた。




手にもったゴーグルを大事そうに抱えて、半壊した自宅へと帰りつく。



そして、あしたもまた、起きて同じ夢を見続ける

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