【普】始まり【通】
その日は朝から快晴だった。
市立桜香学園入学式。雲一つない青空は門出に相応しく爽やかだ。
寮から通うといっても十分はかかる道のりを歩き終え、校門をくぐる。
今日から通うことになる目新しい校舎を眺めながら歩いていると背後から声をかけられた。
「おっはよ!」
聞き慣れたその声は、私が感じていた幾分かの緊張を和らげてくれた。
「なんだ花恋かあ。」
如月花恋。中学校時代からの親友で、同じ高校に進んだ唯一の顔見知りだ。
「なんだってなによー!知り合い帆乃霞しかいないんだからしょうがないでしょー!」 いつも明るく元気、俗に言うムードメーカーといったところか。
だからといって頭が悪い訳でもなく、ハイブリッドタイプだ。 軽く言葉を交わしながら昇降口に入る。玄関先のホールには掲示板が設置されていて、どうやら入学式の流れなどが記載されているようだ。
掲示板の周りには人だかりが出来ている。近づきたくない。というか近づけない。
確か会場は講堂だったはずだが…
「この人の波の先が講堂だよ!きっと!」
流石ムードメーカー。きっとが希望の言葉に聞こえる。とはいえ確かにそれもそうか。新入生と思しき人たちはみな同じ方向に向かっている。これについていこう。
「そだね。じゃあいこっか。」 進んでいくと、案の定講堂だった。すでにそこそこの人が集まっている。
席はどうやら自由らしいので、最後列に二人で座った。現在時刻九時五十分。開始は十時からだ。
『間もなく、平成二十八年度桜香学園入学式を開始します。生徒のみなさんは、講堂に移動して下さい。繰り返します――――』
――こうして、きわめて平々凡々に、私の高校生活は始まったのだった。
因みに、花恋は式の最中ずっと寝ていた。
忙しくてあんまり更新できてないなぁ…




