二束三文
この世にただなものはない。
いい言葉だと思います。
つつかれたらすぐに崩れる言葉だと思いますが、僕はこの言葉が好きです。
親からの愛も友達からの信頼もすべてただではないのですから。
僕は両親に捨てられました。5歳の時でした。
日本の少子化対策の政策として政府が海外から子供を、養子として子供のいない家庭に送りました。それが僕でした3歳の時だったと思います。
最初は暖かく迎え入れてくれた両親でしたが時が経つにつれ僕のことを遠ざけるようになりました。おそらく理想の家庭と、現実の差にショックを受けたのでしょう。
そして5歳の時、僕は積み木で遊んでいました。その日は母と父が一緒に遊んでくれました。初めてのことだったのでとても嬉しかったことを覚えています。
そのとき突然家にインターホンの音が鳴り響きました。先ほどまで優しい表情だった母と父が僕の手を引っ張り玄関まで連れて行きました。
父が僕の手を離し扉を開けると、黒服の大柄な男性姿が表しました。すると母が僕投げるようにしてその男に僕を渡しました。その男は僕をかつぎ車へ行こうとしていました。
僕は必死に、必死に母と父に助けを求めました。しかし、母と父は冷たい目でこちらを見つめただけでした。父はおそらく黒服の男から貰ったであろう分厚い封筒を大事そうに握っていました。
その時、僕は気づきました。
捨てられたのだと。