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初成敗

ようやくの投稿です。

それからユカリが渡月橋に着いたのは一時間程してからの事である。嵐電が動いていれば、二十分程で着いたのだが、終電なんかとっくに終わっているので移動手段は本当に徒歩しかなかった。

疲れと眠気が一気に襲いかかって来る中、ユカリはある人影に焦点を合わせようとした。

「…望月、先輩…?」

だがよく見ると橋の上にはもう一人いた。中年男性である。彼はなにやら見覚えのある紙切れをひらひらさせて相手に訴えている。

「…あれは!」

ユカリは近くに寄ることにした。とはいっても、あまり近くにはよれなかった。渡月橋の歩道には身を隠せるような物がなかったのだ。

橋のそばまで来ると、二人には見えないように入り口の柱に身を隠し、そっと耳をずませる。

「なんや、この手紙は。」

「見ての通りです。」

「そんなんは分かっとるわ!俺が訊きたいのは、何でこんなもんを―」

「あんたが悪人だからよ」

怜の即答に言葉を詰まらせた彼は彼女の手元を指差す。

「それはなんやねん!」

いきなりの怒鳴り声に隠れて見ていたユカリは鳥肌が立ったが、怜は物怖じしない。

ザッ

柄に手をかけ、抜刀の体制に構えると男は後退る。

「磯田 拳。貴方はこの数ヵ月間振られたのにもかかわらず、いわゆる元カノに付きまとい脅迫した挙げ句、彼女の妹にまで害を及ぼしかけた。よってこの場で成敗させてもらう!」

最後の言葉を言い切らないうちに、怜は刀を抜き、磯田に斬りかかった。鞘から離れた刀身は切っ先で大きな弧を描きながら、男の脇腹を切りつけた!

「きゃっ」

ユカリは思わず悲鳴を上げた。

目の前で人が殺されたのだ。彼女は動揺しその場に立ちすくんだ。

橋の上に肉体が崩れ落ち、鈍い音が響き渡る。

「ユカリ!?」

ユカリを見た怜はびっくりして言った。しばらくショックで呆然としていたが、はっと我に帰り怜に言った。

「な、何やってんでんですかー!」

「いや、成敗を…」

「殺してもうてるやないですか!」

「は?」

「いま、先輩が磯田をザクッと…」

「いや、殺してない」

「しらきるつもりですか!」

「そんなに心配ならこれを見て」

といって怜は刀身を街灯の光に当てた。

ユカリは目を凝らしてそれを見つめた。

「…血が着いてない?」

「そう、だってこれ模擬刀よ」


なんやそれぇ!


すっかり騙された気分のユカリをよそに怜は磯田に向き直る。

「おい磯田、確認したい。もう彼女たちには付きまとわないと誓うか?」

磯田は脇腹を抱えたまま答えない。

バシィッ!

怜が再び叩く。

「わかった!分かったから許してー!」


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