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巡査・頭山怛朗の活躍(第八話 巡査・頭山怛朗 冤罪事件を解決)

作者: 頭山怛朗

ヤーフブログに再投稿予定です。

 男は匿名の手紙で捜査線上に浮かび上がり、路上に捨てたタバコが証拠となって逮捕・起訴されていた……。


「裁判長! 」と、被告席の男が叫んだ。その眼には涙さえ浮かんでいたが、どこか芝居じみていた。「おれのDNAと殺された女の体内の精液が一緒だということだが、それは何かの間違いだ。どうか、もう一度調べてくれ」

 意外な展開に法廷内はざわつき、検事は困惑した。でも、もっと驚いたのが国選弁護士だった。彼の依頼人はつい先まで罪を素直にめていたのだ……。

「冤罪です。どうか、もう一度、しっかり調べてくれ! アリバイもある」

 DNAの再検査の結果、男のDNAは殺された女性の体内から検出された体液のDNAとは全く別物で、男のアリバイも証明された。女性が殺され同時刻、男は百キロ以上離れた町の飲み屋にいた。

 起訴は取り下げられ、男は釈放された。

 男は大勢のマスコミに言った。「おれの名誉はひどく傷つけられた。警察・検察に対して法的処置を取らしてもらう」

 男は一躍、“時の人”になった。


「これのDNAを調べてくれ! 」と、警部補が笑いながら言った。「…と頭山巡査が言っている。なんでも、あの男に何回か面会を求めた友人のタバコの吸殻だそうだ……」

“また、頭山か!”と、鑑識職員が眼で言った。“あの男が出てくると何かが起こる! ”

 十日後、警部補が持ってきたタバコのDNAと殺された女性の体内から検出された体液と一致した。



「なぜ、あなたを誤認逮捕したか考えました」と、若い警官が言った。その横には警部補。

 男はその警官をどこかで見たことがあると思った。“そうだ、バナナマンの日村だ” 確か警察手帳には「巡査・頭山」となっていた!?

「おれは警察を訴える。何度謝られても考えは変わらない」と、男は言った。「その準備中だ}

「問題はあなたが路上に捨てたタバコです」若い警官は男の話を無視した。

「今度は軽犯罪法か何かで逮捕するつもりか? 」

「あなたは自分が吸ったタバコを捨てたように見せかけて、別人の吸殻を捨てた! あなたをつけていた刑事はそれに飛びつき、DNAが一致し警察は勇んであなたを逮捕した。これしかありません!! 」

「なぜ、おれがそんな面倒なことをする? 」

「あなたは小さい時から目立ちたがり屋。今回の件であなたは世間の注目を一身にあびて、一躍、有名人! 目的は達した。ついでに補償金も手にすることができる」

「ば、馬鹿馬鹿しい! 」男は動揺していた。

「今、あなたの友人の杉下さん、杉下左京さんを任意で取り調べています。杉下さんが捨てたタバコのDNAと殺された女性の体内から検出された男の体液のDNAが一致したのです。つまり数ヶ月前あなたが捨てたと思われたタバコの吸殻はあなたのではなく、杉下さんの物だった。やはり、あなたが細工した」

「何のことだか良く分からん! 」

「勿論、今度はDNAを再確認します。前回はあなたがあまりに素直に自供したものだから確認しそこねた」

「……」

「杉下さんは素直に話してくれいます。初対面の女性は“M”だった。で、セックスで興奮のあまり女性を死なせてしまった。警察に出頭しょうとしたが一人で警察にいくのは怖かったのであなたに相談した。あなたは言った。“お前はなかなかのいい男だ。刑務所では仲間に掘られるぞ! でも、いい手がある”。後は、もともと気の弱い杉下さんはあなたの言いなりになった。問題の匿名の手紙もあなたの自作自演……。こうなると、どっちが主犯か従犯か分からない」

「……」

「これから署で偽計業務妨害の疑いでお話をお聞きします」初めて警部補が口を開いた。

そして、巡査・頭山怛朗が言った。「大丈夫です、あなたはますます有名になります。あなたも目的は完璧に達成されますよ」


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