6話 精霊の森の少年2
「エルフ族は……この世界にいちゃいけない存在なんだ」
どう言う事だ?
「記憶喪失だもんね……アリマは知らないかな……この世界にはエルフ族はいないんだ」
「えぇ?それじゃ……リリムは?」
「見ての通り、天涯孤独、一人ぼっちさ」
「そっか……こんな森の中で一人ぼっちっで……」
俺は、ボッチと言う単語に非常に親近感が湧くのであった。
「うぅ……」
リリムは涙目になっている……
「辛かったな……」
「うん……ぐすっ……うん……つらかったよ……」
リリムを泣かせてしまった……
結局、リリムが泣いてしまったので泣き止むまで腕の中で泣かせてやった。
「落ち着いたか?」
「…………うん……もう大丈夫、ありがとう」
「胸なら何時でも貸すぞ」
「……うん」
あれれ?リリムの折角泣き止んだ顔が真っ赤に染まっている。俺に男の趣味は無いぞ?
「話の続き……どこまで言ったかな」
「えっと……天涯孤独まで?」
「大丈夫……エルフ族は……この世界じゃ無い別の世界に住んでるんだ」
「異世界?」
「そう言う言い方も出来るね、ボクの世界ではエスメラーダって呼ばれてる」
「エスメラーダ?聞いたことも無いな」
「で、こっちの世界はエリスラーダって呼ばれてる。どっちの世界も創造神エリスロード様に造られたって、エリス聖教では伝えられている」
ん?なんか引っかかるな……聞いた事あるような……う~ん……思い出せない。
「エリス聖教?俺を襲ったのも其奴らだよな……」
「エリス聖教は、この国では国教に指定されている宗教だけど、一枚岩ではなくてね……いくつも派閥があるのさ。
大きく分けると穏健派と狂信派があって、アリマを襲ったのはそのうちの狂信派と呼ばれる者達だろうね。」
とすると、ミルラルネはどっちだ?狂信派?
「穏健派に狂信派ねぇ……違いは何なんだ?」
「大昔の話だけど、この世界には魔神と呼ばれる人達がいたんだ、今は何処かで封印されているけど、その力は強大で度々戦争の火種になっていたから、それを見かねた神様に封印されちゃったんだ……その時に世界は二つに分割されたんだけど……今はそれは置いといて……」
「世界が分割!?そこ重要じゃ?」
「穏健派は簡単に言うと魔神容認派かな……魔神だって元々は人族や亜人種の一人で偶々、強大な力を得ただけ、それは創造主から与えられた力の恩恵に過ぎず、それを戦争に利用しようとしたから罰が下ったって考えだね」
「戦争を起こした者が悪いって事か」
「対して狂信派は、魔神の存在そのものが悪という考えで、魔神の発生原因は色々と説があるけど、魔神の封印の為に神様が世界を分割した事から、神気と魔素の濃度が重要だと今では考えられている」
「またそれか……えっと、この世界は神気が薄くて魔素が濃いんだっけか?」
「そうなんだ、この世界は魔素が濃くて、もうひとつの世界は神気が濃い」
「それで濃度がどう関係するんだ?」
「アリマは核は知っているかい?魔核や神核の事を……」
「いや知らない」
「核には魔核と神核という二種類があるんだけど、ボク達亜人種には必ず核があるんだ」
あれか……魔物を倒した時のドロップアイテム?亜人種も魔物に近いのか?
「魔物にも核モドキがあるけど、アレは魔素が結晶化した魔結晶に分類される。尤も龍なんかの知性を持った魔物は魔結晶が核化している個体もいるらしいけどね」
「知性を持つと核になる……いや知性体には核があるのか」
「例外なのが、アリマのような人族だ。人族は一般的に核が無い、無くても生体を維持できるんだ」
「一般的って事は……やっぱり?」
「そうだね……人族でも魔核や神核を持って生まれる者も少数だけど存在するよ」
「いるのか……」
「魔術使いとかエリス聖教の幹部なんかはそうらしいよ」
魔法を使うには核がいるわけか?
俺にも使えないかなって期待してたんだが……
「で……核と魔神になにか関係が?」
「魔神には相反する筈の魔核と神核の両方、もしくは双方の性質を併せ持つ魔神核があると言われている」
「それで濃度を気にしているのか……」
神気と魔素が同時に濃い環境だと魔神核を持つ魔神が生まれるか。
なんとも納得出来るような出来ないような……
「狂信派は魔神の復活を恐れているんだ。
だから魔神の発生原因となりうる可能性を力ずくで排除しようとする。」
「そんなの神様に任せとけよ、封印したのは神さんだろ……」
「そう、穏健派はそう考えているけど、狂信派の暗殺部隊は、ボクら魔神核を持つ者達を……子供達を数多く暗殺してきた!」
リリムは悔しそうな顔をしてテーブルを叩く。
リリムも狂信派に狙われているのか……
「ボクら?」
「アリマ……キミの中にもあるだろ?魔神核が」
へ?