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41話 船旅

「では皆さん乗船して下さい」


 リリアス教国第5教女ルリアナ姫様付の執事ベルマーチに案内され、俺達はリリアス教国行きの船に乗船する事になった。


 船に乗ればリリアス教国のリーグリアまで2日で着くという事なので、明日にはリリアス教国へ入国出来るだろう。


 しかし、船で二日もかかるとは…… どれだけ広い湖なんだ? 知らない人なら海と言っても分からないくらい広大なシールヴェン湖だが、もう地中海みたいに海でいいんじゃないか? あれ……地中海って海だっけ?


 それと、リリアス教国は亜人は入国出来ないという事だったのだが、リリム達が魔神だと説明すると、魔神様ならば大丈夫です。リリアスは魔神様を歓迎致しますとベルマーチは恭しくリリム達に礼をしていた。


「リリアス教国は地水火風の4大魔神を神として崇めている国なんだ」


 俺が首を傾げていると、リリムがリリアスの宗教について教えてくれた。


「でも、4大魔神にはリリム達は入らないんじゃないか?」


「それは 私から説明致しましょう」


 突然、ベルマーチがリリムと俺の会話に割り込んできた。なんか説明してくれるようだ。


「リリアスは魔神封印の地という側面があります。その影響はリリアス教国全土に及びます」


 封印の地の影響?


「魔神の力は強大でその力を欲する者、利用しようとする者、封印を解こうとする者…… 封印されてもなお、魔神の力は人々に何らかの影響を及ぼし続けてきました」


 ギク…… 俺が魔神を覚醒出来る事は言わないほうがいいか……。


「そして人族からは魔法の力が失われていったのです。逆に亜人種や魔族は魔法の力により勢力を増していきました」


 魔核が無ければ魔法が使えないってやつだよな?


「勢力を広げる亜人族に追われ、人族はここ封印の地に望みを託します。そして遂にリリアスの地に英雄が現れたのです」


 長くなりそうだな……。


「その英雄というのがリリアス教国を建国したマリアーナ・ド・リリアス様です。マリアーナ様は人として初めて封印されている4大魔神との契約に成功し、契約魔法を手に入れたのです」


「契約魔法?」


「そうです。その魔神との契約魔法により、リリアス教国は今日まで亜人の魔法に屈する事なく国を守る事が出来ているのです」


「なるほどね……それで魔神を神様扱いしているのか」


「そうなんです…… アリマ様は魔神様を3人もお連れになっていますが魔神使いなのですか?」


「魔神使い?」


「魔神様と契約を結んでいる者を魔神使いといいまして、リリアスには王宮付筆頭魔神使いが4名、その他魔神使い養成機関の魔神学園では魔神使いに適性のある者達を集めて教育を行っております」


「はぁ…… 魔神の子とは言われたことあるけど魔神使いではないですよ。リリム達は俺の仲間、いや恩人です」


 俺がそう言うなり、ベルマーチは驚きを隠せない表情をして俺をまじまじと見つめてきた。


「え!? 魔神の子ですか? アリマ様が?」


「ってリリムに言われた事があるってだけだけど」


「アリマは確かに魔神の子だよ」


 ――と 話を聞いていたリリムが肯定した。


「素晴らしい! それならば魔神様をお連れになっている事も分かります」


「え? 素晴らしいって? 何で?」


「魔神様と契約するには条件がありまして、魔神の子であれば契約成功率は……ほぼ100パーセントと言われております!」


「そうなんですか?」


「アリマ様! ここで出会ったのも何かの縁! リリアスの魔神学園に入りませんか?」


「えぇ!? 突然そんな事言われても……」


「アリマ様の他に、魔神の子はリリアスに4人います。4人の王宮付筆頭魔神使いは全員魔神の子なのです」


「俺の他に4人も?」


 他にいる俺と同じ魔神の子ってのも気になるけど……。


 4人の王宮付筆頭魔神使いか…… やっぱり、そいつらも魔神核を持ってるんだろうか……。


「それは……考えさせて下さい」


 俺には……まだやる事が残っている。呪いの件、防御力を何とかしなければならない。


「そうですか……いい返事を期待していますよ」


「俺にはやらなくちゃいけない事があるんで……変に期待しないで下さい」


「そうですか…… それでは快適な船旅を楽しんでいって下さい」


 そう言うとベルマーチは船の後方にある貴賓室へと消えて行った。


 ――――――


 リリアス教国へと向かう船は、波に揺れる事も無く船酔いを危惧していた俺は快適過ぎる船旅に感動していた。


 俺とリリムとパーラはデッキに出て風にあたっている。

 アリシアとレヴィナスは竜なので、本来ならば竜専用の竜舎に載せるのだが、人化が可能なので特別に専用の個室を用意してもらった。

 ただし、人目につかないように言われているので部屋の外には出られないからプリステラに頼んで相手をしてもらっているのだ。



「揺れない船っていいな」


「今日は波も無いですし、風も穏やかですから」


 パーラは船の縁に肘を預けながら頬杖を付いて湖の景色に見入っていた。


 俺達の乗る船は帆の付いた帆船なのだが、風も無いのにちゃんと動いている。


「この船の動力はどうなっているんだ?」


「この船は魔航船だよ」

「魔航船?」

「魔結晶を魔力を動力源として進む船の事だよ」

「魔結晶というと魔物から取れるアレの事だよな?」


「この船は帆に魔力を感じますので帆から風を起こす自律型のようですね」


 風を自分で作る帆船って…… 帆を張る意味あるのか?



「ところで、リリム 魔神使いにならないかって誘われたんだけど?」

「え? あぁ……その事か もちろん聞いていたよ」


 リリムは何か焦ったような表情を浮かべているが何かあるのだろうか?


「契約魔法って魔神との契約により行使するだっけ?」

「そうだよ」


「俺はなんでリリムと契約・・していないんだ?」


「それは…… ボクには過去に契約していた人がいたんだ。でもその契約者は人族、ボクは魔神だ……色々あって離れてしまったんだけど。その人も今では遠い所に行ってしまったのに…… 契約者が死しても……今の今まで契約を切れずにいる…… 今更未練なんて…… ごめん一人にさせて」


「……なんか悪かった 変な事聞いてごめん リリム」


 どうやらリリムの地雷を踏んでしまったようだ。 契約について触れるのはやめておこう。


「ううん ありがとうアリマ」


 俺とパーラはリリムを置いてその場から離れた。デッキに残されたリリムは何を思っているのか…… 本人しか分からない事だ。


「リリムは初代エリス神聖国王と契約していたんです」

 パーラがちらっとリリムの契約者について教えてくれた。

「初代って…… 魔神大戦時の頃? そんなに長い間……」


 魔神大戦時からの未練だなんて…… リリムの心の傷は相当に深そうだな……。


 俺達の乗る帆船はリリアスへ向けて静かに航行を続けていた。





 ここまでお読み頂きありがとうございます。

 次回よりリリアス教国編に入ります。





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