33話 初めての武器
白古龍レヴィナスを仲間に入れた俺達は、レヴィナスの服を買ってから組合と町長に報告を終え武器屋ヴォルクスに戻って来ていた。町長と組合長はお礼がしたいとか何とか言っていたが断っておいた。
……俺は一応この国では、お訪ね者の堕勇者だからな。
それにこの街では十分過ぎる程、鉱石を貰っている。
「こいつは驚いた…… オリハルコンを返しに行ったら増やして帰ってきやがるとは」
店主のヴォルクスは俺が持って帰ってきたオリハルコン鉱石に目を白黒させていた。
「これはヴォルクスさんの分です。お返ししますね」
鉱石はいつものようにパーラに出してもらった。
「なんでぇいいのか?」
「もちろん、白古龍の許しも貰っているので大丈夫だ」
「我の広い寛大な心に感謝せよ店主よ」
「ん? こっちの嬢ちゃんは?」
「……あー 紹介するよ。白古龍のレヴィナスだ」
「我は旦那様の嫁! レヴィナス・アリマじゃ」
「はぁ!?」
店主のヴォルクスは開いた口が塞がらないようで顎が外れそうなほど口を開けていた。
「あの坊主が、オリハルコンどころか白龍を嫁に持って帰るとは……まいったぜ」
リリムはというと…… うーんと唸っているようだ。
「――それでお願いがあるんだが」
俺は白古龍から貰ってきたオリハルコンとアダマンタイトを錬成し、店主に渡すとさらに驚いていた。
「……アダマンタイトまでとは」
「これで武器を作りたいんだ」
「おいおい…… これだけあれば最強の武器が出来るぜ?」
店主はニヤリと笑みを浮かべると弟の鍛冶屋ヴォルターにオリハルコンとアダマンタイトを渡した。
「久しぶりに腕が鳴るぜ…… で、お前ぇさんは何を作りたいんだ?」
「俺にも扱えるナイフと短剣を」
「あん!? そんなもんでいいのか?」
「扱えなくても困るんで」
「よし!分かったぜ……後はこのヴォルター様に任せろ! お前ぇに合わせて最高の武器を作ってやる」
「お願いしますヴォルターさん」
武器を作って貰うのは初めてだが、伝説の鍛冶士と言われるドワーフのヴォルターさんに任せたので安心だろう。
武器が出来上がるまで数日はかかるというので、俺達はその間に次の街へ行く為の準備をする事にした。
次の街に行くには峠越えをしなければならず、リリムが捕らわれていたのもその峠だったらしい。
峠を越えたら次の街レノールまでは下り勾配になるので幾分楽になるという事だった。
後は……食料の買い出しと……鉱石を採取しておくか……。
この先も鉱山があるとは限らないしな。
――――――
買い出しと鉱石の採取を終え3日目の事。
武器屋のヴォルクスさんから完成の連絡を受け武器屋へと足を運んだ。
俺達が店内へ入るや否や店主の野太い声が聞こえてきた。
「おぅ! 待ってたぜ坊主」
「どうも」
「これが頼まれてた武器だ」
武器屋のカウンターに置かれたそれは2つの武器だ。俺が頼んでいたナイフと短剣。
銀に似て銀色よりも輝きを放つオリハルコンの短剣に、いぶし銀の如く輝くアダマンタイトのナイフが小さいながらも存在感を放っていた。
「これは……すごいな」
「見事な短剣です」
「オリハルコンの短剣にアダマンタイトのナイフだね?」
「なんと言う輝きなのじゃ……我も欲しいぞ」
「せやけど……伝説の金属が勿体無いなぁ」
……確かに初心者の俺には勿体無いくらいだ。
「このアダマンタイトのナイフなら古龍の鱗だってはぎ取れるぜ!」
店主の言う事は誇張でも何でもないだろう。それ程にアダマンタイトという金属は堅いのだ。
「古龍!?痛くしないで欲しいのじゃ……」
「いや……レヴィナスは剥がないから」
「それと……材料が余ったんでな」
ぬっと……鍛冶士のヴォルターさんが隣の鍛冶屋から顔を出すと、俺に2対の剣を渡してきた。
「ナイフと短剣じゃ腕が訛っちまうからよ」
「……これは片手剣?」
「そうだ お前ぇに合わせて作ってみたんだが 持ってみな」
俺は金属にしては白っぽい剣とガンメタ色に似た剣を持ってみると…… 見た目よりも以外と軽い事に気が付いた。
「これは……すごく軽い!?」
「貰った鉱石の中に白古龍の鱗が混じってたんでな……そいつを使った剣だ」
「レヴィナス? いつの間に……」
「その剣は……我の分身とも言える物じゃ。肌身離さず持つが良いぞ」
なんか急に剣が重くなった気がするんだが……。
「……ありがとうレヴィナス」
あとで剣の名前を考えないとな……。
「あ……そうだ作ってもらった剣の料金を払ってないな」
「お代は……返してもらったオリハルコンと置いてった鉄と銅で十分だぜ」
「そんな…… いいんですか?」
「白古龍の件の謝礼もある とっとけ坊主」
「ありがとうございます! ヴォルターさん ヴォルクスさん」
こうして俺は白黒2対の片手剣と短剣とナイフを手に入れたのだった。
折角用意したお金だったが…… 使い所を失ってしまったのは良かったのだろうか?
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