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29話 鍛冶屋と武器屋

 資金が出来たので残りの鉄と銅を持って鍛冶屋へいく事にした。

 金剛石は高過ぎて売れなかったので武器や防具に付けてもいいだろう。

 いくつでも作れるしな。


 しかし、俺は防具を装備出来ないので俺用に作るとしたら必然的に武器になる。

 呪いが恨めしい。


 鍛冶屋と言ってもここユグドラには鍛冶屋が多くあるので、プリステラが贔屓しているという店へと足を運ぶ事になった。


 その武器屋はやはり他の店と同様に平屋建てであったが、一つ大きく外見が異なっていた。周りの店は石組みで出来ているのだが、その武器屋だけは木造というかログハウスのように木を組み上げて作られていたのだ。


「武器屋ヴォルクスですか?」

「鍛冶屋じゃないのか?」


「裏に鍛冶屋も併設されてるんや」


 なるほど、生産と販売を分けて販売は武器屋で行う事によって鍛冶屋は生産に専念出来るし、効率が上がるって訳か。


 早速俺たちはその武器屋に入る事にした。


 木組みの武器屋の店内に入ると、懐かしい木の匂いが鼻腔を刺激する。

 この世界でも木というのは同じ匂いがするのだと感傷に浸っていると…… 同じく分厚い木の板で出来たカウンターから顎髭(あごひげ)を胸に届く程伸ばした恰幅のいい爺さん?が出てきた。

 爺さんのその磨き抜かれた太い腕に対して身長は子供のように低い。


 ドワーフか?


「なんでぇ……えらいベッピンさんが来たかと思ったら、プリステラの嬢ちゃんかい」


 爺さんは顎髭を短い右腕で摩りながら長く伸びた白い左眉を上げている。


「うちん可愛さは世界一やさかいな」


「――でそっちの二人は?」

「アリマ・ミノルです」

「パーラよ」


「坊主は置いといて……パーラ嬢もえらいベッピンさんじゃねえか?」


「そう? ありがとう フフ」


 俺は置いとかれたが、パーラは褒められたのが嬉しかったのか上機嫌だ。


「俺はヴォルクス。このタイミングで俺の店に来るとは…… 嬢ちゃん達は運がいい」


「何かあったんですか?」


「――ここだけの話だがな……」


 爺さんは小さな体をカウンターから乗り出し、顔を近づけて囁くように構える。


「……」


「――出たんだよオリハルコンが」


「「「オリハルコン!?」」」


「シーーーーー!!声が大きいわい」

 

「すみません」

「ごめんなさい」

「かんにんな」


「――で、これがオリハルコン鉱石だ」


 ドンっと置かれたのは頭4個分はありそうな巨大な岩だった。


「この山、白竜山には伝説があってな……」

「白古龍伝説ですね?」

「そうだ……白竜山の名の元になった伝説にこうある……白き山に白古龍(ホワイトエンシェントドラゴン)が眠る……しかし、その姿を見た者はいない」


「見たら命は無いって事ですか?」


「いや……一人だけいたんだな……そいつは白古龍と遭遇した時に持っていた宝石のおかげで助かったって話だ」

「勇者やな」

「勇者ですね?」


「それでオリハルコンと何か関係が?」


「その時に勇者が白古龍から授かったというのがオリハルコンだったという噂だ」


「そのオリハルコンは白古龍からの御礼だったと?」


「古龍は宝石やら硬い鉱石を好むらしいて、ぎょうさん溜めこんどるって噂や」


 プリステラが言うように白古龍も同じ習性だとしたら……。


「もしかして……それって白古龍の宝物なんじゃ?」


「――まさか?鉱山を掘りすぎて白古龍の(ねぐら)に踏み込んじまったってのか?」


 店主のヴォルクスは慌てて頭を抱えている。

 雲行きがやばいな……


「だとすると……早く返さないと白古龍の怒りに触れ街は壊滅の恐れがありますね」


 パーラは眈々と状況を判断して見せた。


「なんてこった……」


「幸いにもまだ白古龍は目覚めていない様子なので今のうちに返してくれば問題無いでしょう」


 白古龍の(ねぐら)なんて誰が行くんだ?見つかったら生きて帰れる保証は無いし……。

 でも唯一生きて戻ったのが勇者か……。

 勇者は持っていた宝石で助かった――。


「俺に考えがある……」


「?」


 俺は持ってきた鉄と銅の塊をカウンターの上に出した。といっても実際に出したのはパーラだ。俺はこんな重い物は持ち歩けない。


「ほう……鉄に銅か」


「良く見てくれ」


「普通の鉄に銅じゃないのか?ちょっと待ってくれよ弟の鍛冶士のヴォルターを呼んでくる」


 暫くすると裏の鍛冶屋から店主のヴォルターが姿を見せた。兄と似ているが弟の方は髭に黒毛が多い。


「鍛冶屋のヴォルターだ。見て欲しいってのは?」


「アリマ・ミノルです。これを見て欲しいんだ」


「ほう……これはすげぇな純度99%以上の鉄に銅か」

「そうです」

「これを作った奴は凄腕の錬金術師と見たが……」


「流石は伝説の鍛冶士やな正解や」


「これは俺が作った物です」


「ほう坊主……只者では無いと思っていたが」


「俺がオリハルコン鉱石を精錬し、白古龍へ返せば……」


「白古龍は光もんが好物だから……喜んでくれるか?」


「だといいですが……」


「だが……やるしかねぇか……」


 ――――――


 その後、俺はオリハルコンを錬成し、純度99%のオリハルコンインゴットを作成したらヴォルクスさんとヴォルターさんは驚いていたが、冒険者組合や町長への連絡は武器屋のヴォルクスさんがやってくれると言う事だった。


 1度プリステラの家に戻り、リリムと合流すると俺達は一路ユグドラ鉱山へと向かったのだった。




 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回はユグドラ鉱山になります。


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