27話 錬金
俺の拡張ステータスに現れた『錬金』という文字。
これはプリステラのユニーク能力だった。
プリステラは魔核技工士の能力だと言っていたが、本当にそうだろうか?
錬金というくらいだ他にも何か出来そうな気がする。
錬金術師のアニメとか錬金術師が主人公のゲームとかあったしな……。
でも先ずは、錬金の能力についてプリステラに聞いてみるか……。
という訳でプリステラに聞いてみた。
「なぁプリステラ」
「なんですか?アリマはん」
「錬金について教えて欲しいんだが」
「そうどすなぁ…… アリマはんが今度こそ最後までしてくれはったら教えてもかまへんよ?」
艶かしくも舌舐めずりをするプリステラに俺の妄想半島は常夏のバナナワニ園だ。
プリステラは俺が言うのも何だが凄く可愛い。リリムも可愛いが、リリムは守ってあげたくなるような健気な少女の可愛さ。パーラも美人だが、パーラは隣りの家の美人のお姉さんのような感じで、プリステラは生まれながらの美少女って感じだ。
胸はパーラ程ではないがリリムより大きいし、何よりツインテールだ。炎のような真っ赤な髪を星形の髪留めで止めたツインテールはやばい。俺にはツインテール属性など無いと思っていたが、心がツインテールを求めてしまう。
ツインテール万歳!!
「最後といってもな」
「アリマはんの魔神核でうちをめちゃくちゃにしておくれやす」
「いや 意味分からないから」
――しかし、プリステラは俺の魔神核が好きだという変態だった。
このままではプリステラに食われそうだと言うタイミングで美少女救助隊が現れた。
「プリステラ! 抜け駆けは駄目だよ?」
「そうです。抜け駆けは許しませんよ」
リリムは仁王立ちでプリステラを指さし、パーラは腕を組んでプリステラを睨んでいる。
――何で パーラまで?
「残念 邪魔が入ったようやな」
「それで、そのユニーク能力の事だけど……」
「うちん錬金をアリマはんに奪われたって話やったな」
「いや 奪ってないから!?」
「うちん錬金の力は魔素や神気の結晶である魔核、魔神核、神核の操作解析能力や」
「それが魔核技工士の力という訳ですね?」
「でもそれだけだとは思えないんだよなぁ 錬金っていうからには他にも何か――」
「流石はアリマはんや うちん能力はそれだけやあらしまへん」
「金属やそれに準ずる結晶の精錬、錬成。他には回復薬等の精製も行えるで」
「それだ! それでこそ錬金術じゃないか?」
「こん研究所も錬金の研究所やし、ここは鉱山の街やから錬成に使える鉱石は捨てる程あるんでこん街に研究所を作ったという訳や」
「それでこの街にいたのね……」
「ただ ――うちは金属の精製よりも魔核を作った方が金になるんで魔核専門でやらしてもろてた時期もありますけど」
「そうか…… 教えてくれてありがとうプリステラ」
「ええよ お代はアリマはんの体で払ってもらうさかい」
プリステラはそう言うと妖艶な笑みを浮かべた。
「うんそれはいいんだけど……力の使い方って言うか錬金を教えて欲しい」
俺はまだ弱い。出来る事は何でもやっておきたい。
金属の精錬や薬の生成は覚えておけば後々役に立つだろう。
「そん代償は高おすよ?」
「出世払いでお願いします」
――お金無いんで。
――――――
そうして、俺はプリステラより錬金の使い方を伝授して貰うためにユグドラ鉱山に来た訳だが……。
『材料となる鉱石は自分で掘る!』と言ってプリステラに渡されたのは一本のツルハシだ。
最初は言われた通りにツルハシを振るっていたのだが、掘るだけなら土魔法で掘れるじゃないか?と思い途中から土魔法に切り替えたら格段に早くなった。
一通りの鉱石を採取した俺達は大量に取れた鉱石を運び屋パーラに預け、一旦プリステラの研究所へと戻る事にした。
研究所に戻って20畳ほどもある広めの研究室で採取した鉱石を並べていると、留守番していたリリムがやってきた。
「うわぁ アリマすごい取って来たね……」
「ここで取れる一通りの鉱石は集めてきたつもりだ」
白色鉱石 ここユグドラでで取れる一般的な物だ。石ころと同じ。
赤色鉱石 鉄鉱石のような物だろうか。
青色鉱石 青錆の色だから銅だろうか。
銀色鉱石 銀が含まれていそうだ。
金色鉱石 金が微量に含まれている?
黒色鉱石 炭?のような色をしている。
この6種類の鉱石を採取してきた訳だが……。
まずは、パーラが鉱石について説明してくれるようだ。
「白い鉱石はこの山では一般的な岩石で家のレンガ等に使われていますね」
「この赤いのは鉄か?」
「そうですね 赤い鉱石からは鉄が取れます。青いのが銅、銀色が銀、金色が金です」
「銀とか金は鉱石から極微量しか取れないから高価なんだ」
横からリリムもひょっこり顔を出して説明に参加してくれた。
「という事はこの黒いのは?」
「黒いのは燃える石と呼ばれています」
――なるほど。石炭という訳だ。
「ほな赤色鉱石から錬金しよか?」
プリステラはそう言うと、赤色鉱石を白く平らな錬金台に乗せユニーク能力錬金を使用した。
「錬金!赤色鉱石!」
「発声した方が成功率が上がるんやけど、慣れれば頭ん中で唱えるだけでかめへん。赤い石に含まれる鉄だけを意識して…… 鉄だけを取り出すんや」
錬金台の上の赤色鉱石は灰色の石に変色し、その横に小さな鉄の塊が出来ていた。
「分かった」
俺もプリステラの真似をしてみる。赤色鉱石を錬金台に乗せ…… 能力名を唱える。
リリム達は固唾を呑んで俺を見守っている。
「錬金!赤色鉱石!」
錬金台の上には先ほどよりも少し大きめの鉄の塊が出来ていた。
「お…… 出来た?」
「アリマはん 上出来や」
「素晴らしいですよアリマさん」
「アリマ! やったね!」
――――――
それから、青色鉱石で銅を抽出し、銀鉱石と金鉱石で銀と金を抽出した。銀と金はゴマのように小さい物であったが成功だった。
最後に残ったのが石炭と思われる黒い鉱石とその辺に転がっている白い石だ。まず黒い石から思いついた事を試してみる。そう、石炭と言えば炭素だ。そして炭素と言えばダイヤモンドも炭素で出来ている。違いはダイヤモンドは結晶だという事。地球ではダイヤモンドを作成するには高温高圧力をかけなければ炭素は結晶化しないのだが……。
「錬金!黒色鉱石!」
イメージするのはダイアモンドの結晶だ。
すると…… 俺の錬金の能力により黒色鉱石の炭素が結晶化していく……。
錬金台にあった黒色鉱石は姿を消し、小さな輝きを放つ炭素の鉱石が姿を現した。
「お…… 出来た?」
「何か透明な結晶ですね」
「綺麗やわ……」
「アリマ…… これ何て言うんだ?」
「金剛石だ 俺の世界ではダイアモンドって言われる宝石だ」
「燃える石から宝石を作っちゃうなんて凄いよアリマ!」
錬金でダイヤを作る実験は成功した。残るは白い鉱石だが……。
その辺に転がっているような白い鉱石は何が出来るのか?
俺はかなり当てずっぽうで白色鉱石を錬金してみる。
「錬金! 白色鉱石!」
まぁ 無理だとは思うが……。
すると…… 錬金台の上に置いてある白色鉱石が色あせて、鉱石の隣りには眩い輝きを放つ小さな金属が姿を現した。さっきの金銀よりも大き目でパチンコ玉くらいの大きさだ。
「「「「!?」」」」
「アリマ…… これはもしかして?」
「そんなまさか……」
「そないな事が?」
「白金だ」
「「「えええええええええええええええええ!?」」」
石ころから錬金出来たのは、この世界で最も価値のある金属『白金』だったのだ。
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