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23話 追憶の彼方


 今回はアリマの話です。



 俺の親父は32歳の時、10年前に飛行機事故で他界してしまった。遺体は損傷が激しかったのか見つからなかったので空の棺桶での葬儀だった。

 その時の俺は7歳で小学2年生だった。現在の高校3年になるまでの10年間、母親は必至になって俺を育ててくれた。


 俺は親父が嫌いだ。無責任にも俺たち家族を残して死んでいった親父が嫌いだ。もし生きていたら絶対に殴ってやる。生きていたら今42歳になるのだろうが、死んだ者の年齢を数えてどうにかなるものでもない。


 俺の家は親父を入れると4人家族だった。親父が亡くなってからは妹と母親と俺の3人家族となった。

 パパっ子だった妹、真由は親父が亡くなった時5歳でいつも『パパはいつ帰ってくるの?』と親父を心配していた。


 親父が死んだ事を知った時の真由は、泣き叫び、一か月も部屋に籠って出てこなくなってしまった。それだけショックが大きかったのだろう。


 母は親父が他界して以降、仕事を増やし、夜の仕事にも手を出すようになった。俺と妹が家に帰ってもいつも母親はいなくて、母が帰ってきたと思ったら。ご飯の支度をして次の仕事場へと出て行ってしまう事も日常茶飯事だった。


 そんな母もついには体を壊して、半年前には亡くなってしまった。増やした仕事が徐々に体を蝕んでいたのだろう。


 そうして、俺と真由は2人きりの家族になってしまった。


 真由は今どうしているだろうか? 俺が異世界に召喚されてしまった事で真由は1人ぼっちになってしまった筈だ。


 妹を残して異世界に来た俺を憎んでいるだろうか?


 俺の唯一の心残りは妹の真由だ。


 ごめんよ 真由…… 不肖な兄を許してくれ……


 ………………


 …………


 ……


 …

 


 ――――――




 ――何かが聞こえる。

 

 俺が目を覚ますと、そこは見慣れた場所だった。ここはプリステラの家だ。


「アリマ! 大丈夫か?ボクの声、聞こえるか?」


 俺の傍にはリリムがいる。 ここは天国か……。


「……リリム?」


「気が付いた!?アリマぁあああ!!うわあああああん!!良かった!良かったよぉ……。

2日も目を覚まさないから…… もうダメかと思って……」


「え!? リリム!? どうしてここに?」


 リリムはゴブリンロードに攫われていたはずだが……。


「プリステラがボクを助けに来てくれたんだよ」


 プリステラ?


 俺の脳裏には先ほどの艶かしいプリステラの美しい肢体が焼き付いていた。


 あ、ああああああああああ!!!!

 もしかして俺やっちゃった??


「いや……ごめん!俺そんなつもりじゃ無くて、プリステラがリリムを助ける為だって言うから……あの……だから」


「……何の話をしてるんだいアリマ?」


「あ……いや」


 何か……墓穴掘ったぁ?


「プリステラと何かあった?」


 リリムの目が怖いんですけど。


「……」


 流石に答えられません。


「あったんだね?」


「アリマさんもリリムを助ける為にやった事だし……その辺で」


「パーラは何があったか知ってるんだね?」


「し、知らないわよ?」


「あらぁ……リリムはんにパーラはん!アリマはんは起きはったです?」


「「「プリステラ!!」」」


「そない怖い目で見つめへんでおくれやす」


 そんな修羅場にプリステラが素知らぬ顔で登場して来た。


「あ……アリマと何をしたんだ?」


「うちの口からそれを言わせる気ぃですの?」


「あぅ……あの……プリステラさん?」


 プリステラは頬を紅色に染め、恥じらうような仕草を見せてとんでもないことを言い出した。


「あん時んアリマはん、激しかったわぁ……アリマはんの立派な魔神核(もん)から溢れ出す白濁した濃厚な神気(あれ)が、うちの魔神核(なか)に、そらよう激しく、もん凄い勢いで注入されてきて……」


「な……な……何をやっているんだぁ……アリマは!?」


 プリステラぁあああああ!!


「うごぅ!!」


 リリムの強烈な右ストレートが俺の脇腹を襲ったのだった。




いつもお読み下さりありがとうございます。


次回予告 3人の魔神です。

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