21話 鉱山の街ユグドラ
本日2話目になります。
鉱山の街ユグドラは 人口2000人くらいの街で、エリス神聖国の南部に聳える白竜山の中腹に山にへばりつくように町並みがひしめきあっている。
白竜山の名の如く山肌の色は白一色で、白い鉱石が山を覆っている。立ち並ぶ家々は白い鉱石を使った石造りの家が多数を占め、殆どが一階しかない平屋建てになっていた。
鉱山の街という位なので鍛冶屋が多く、その商品を並べる武器や防具を扱う店が目抜き通りに軒を並べていた。
その目抜き通りの鍛冶屋の裏にある石造りの一軒の家。他の家と比べても変わり映えの無い普通の一軒家。そこがプリステラの住んでいる魔核研究所だった。
魔核研究所といっても、プリステラが住んでいるというだけで特別な設備等は無い。
プリステラ曰く、うちがいる所が研究所らしいのだが。
――――――
――眩しい。
目を焼くような日差しが、俺の頬を温めるように照らしていた。
――いや日差しでは無い!?
俺は手術台のような台の上に寝かされているようだ。石で出来た純白の手術台。
眩しくて太陽だと思ったのは手術台の上に設置されている照明だった。
俺は薄目を開けて周囲を確認しようとしたが、それを制止するような声が聞こえてきた。
「ちょいと待つです。まだ動いちゃあかんですよ」
「……あんたは?」
「うちは、皆んアイドル!プリステラちゃんです!」
「良かった!アリマさん!気が付かれましたか?」
「……パーラ?」
「ちょい、今、さらっとスルーされてんですけど?」
――プリステラ?
俺の脳裏にゴブリンロードとの会話が蘇ってくる。
――この辺りで魔神プリステラを見なかったかゴブ?
――代わりにお前達が連れて来るゴブよ。
あの、ゴブリンロードが言っていた魔神プリステラか?
――それまで、この魔神は預かっておくゴブブ。
……そうだ! リリム! リリムはどうした?
「リリムは?」
「攫われてしまいました…… 私が付いていながら ……ごめんなさい」
「そうか……」
リリムはゴブリンロードに攫われてしまったのか……。しかも、助け出すにはプリステラと交換だと言っていた。
この真紅の髪をツインテールにして、純白アイドルのようなヒラヒラの服を着た紅目の美少女がプリステラなのか? しかも魔神だって!?
「まだ動かない方がええですよ。アリマはんの体はまだ不安定どすさかい」
「そうだ、俺はゴブリンロードにやられて…… 俺の体はどうなっているんだ?」
「アリマさん、貴方は魔王の眷属にやられて…… 死んでいたのです」
「そこをちょうど、うちが通りかかってココまで運んで来たんよ」
「俺……死んだのか? だとすると、ここは天国か? 美少女天使が2人も見えるんだが?」
「こないなレアな魔神核持ってるアリマはんが死ぬ事はあらへんで? この天才魔核技工師のうちがいる限りは」
「本当、プリステラがいてくれて助かりました」
魔核技工士だって?
「魔神核ゆうんは特殊でな、普通の魔核とちごうて、特殊な回路を持っとるのです」
「特殊な回路?」
「アリマはんの魔神核は、超レアの特別製やさかいに、その自己修復回路といったら芸術的な素晴らしさ神々しさを持っていやはった」
レアだとか神々しいとか言われてもなぁ……
プリステラは、涎を垂らしながら俺をキラキラとした熱い眼差しで見つめている。
「……」
「でや…… 魔核技工士ちゅうんは、そん魔核に備わっとる回路を繋げたり、切ったりして効力を早めたり、効果を倍増させたりする事がでけるんです」
「それはすごいな」
「ただ今は、アリマはんの魔神核の自己修復回路をベースに体組織をリカバーしてはる最中やさかい、回復にはまだ2日は必要やのです」
「2日か……長いな」
「アリマさん…… その体では動けませんし、リリムの事は私達に任せてゆっくり休んでいてください」
動けないんではどうしようもないしなぁ。あの強敵が相手じゃ俺の出る幕は無いし、パーラの言う通り休ませてもらうしかないか……。
「――分かった」
そうして俺は回復を待つ為に、そのまま手術台の上で時間を過ごすことになるのだった。
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