14話 朝の一時と旅立ちへの序曲
翌日、俺は早速リリムにステータス偽装魔法を披露した。
名前 アリマ・ミノル
推奨階層レベル 0
攻撃力 15
防御力 0
体力 30
敏捷 15
魔力 1346
コメント 迷宮は入れません。もっと鍛えましょう。
「うん、完璧だね。さすがアリマだ。 むぐむぐ」
リリムは朝食の黒パンを咀嚼しながら、その可愛い顔に笑みを浮かべた。
やっぱり、パンは堅いようだ。俺も、苦みのある野草サラダを口に入れる。
……苦っ。リリムはこの苦みが癖になるっていうが、俺にはこの味は未だに慣れない。
「一つ気になったんだが、推奨階層レベルってなんだ?」
「迷宮に入る場合の推奨階層を教えてくれるんだよ」
俺の推奨階層レベルは0だから……コメントの通り迷宮に入るなという事か……
「迷宮って……この世界にダンジョンってあるのか?」
「無かったよ20年前までは」
「20年前っていうと勇者が召喚された年じゃないか?」
リリムが言うには、スタール王国で勇者が召喚された後、迷宮が出現した事に人々は気付かなかったけど、迷宮から溢れ出てきた強力な魔物が町を襲うようになり、迷宮の存在が明らかになったそうだ。
それが20年前の事で、勇者が現れた時期と同じだったので勇者は禍の元であると糾弾する者も多くいたらしい。それが迷宮の魔物騒ぎを勇者一行が治めた事と、迷宮から産出する利益が人々を潤した事で勇者を糾弾する者も鳴りを潜めたという事だった。
その時に組織されたのが冒険者組合で、勇者主導で組織化されていったという。
迷宮で入手した道具とか魔核は全て冒険者組合が一括で買い取り、市場に流しているんだそうだ。
――――――
ステータス魔法のおかげで俺の体力は順調に増えている事が分かった。最初10だった体力は30にまで増えている。
羊皮紙を消費するので多用が出来ないのが不便な所でもあるが。
俺が稼げるようになったらリリムに買って返さないとな……。
相変わらず俺はリリムの紐状態だ。
ステータス偽装が出来るようになったので冒険者組合で不審がられる事も無いだろう。
最低でも拡張ステータスと魔力最大値と神聖力は隠した方がいい。最大値は大き過ぎるからな。
拡張ステータスと言えば、女神の祝福の効果についてはまだ分かっていない。
あと魔力について分かった事だが、魔力は一晩寝ても最大値まで回復しない。俺の最大値が大き過ぎるのもあるのだが、多分魔素の濃度が関係している。魔素の濃度が低くければ回復も遅く、逆に濃ければ回復速度は早くなる。
これは魔素と神気で回復速度に差がある事に気付いて分かった事だ。
これまでに覚えた魔法は初級火魔法、初級水魔法、初級木魔法、初級風魔法、初級土魔法、初級回復神聖術、中級火魔法、中級水魔法、中級木魔法、中級風魔法、中級土魔法、中級回復神聖術、ステータス魔法、ステータス偽装魔法だ。
これだけ魔法が使えれば外に出ても安心だと思うのだが、リリムが体力が無いからとなかなか森の外には出してもらえない。
防御にも使える結界魔法とかは無いのだろうか……リリムに聞いてみようかな。
身体強化とか出来たら防御の代わりにならないかなぁ……
朝食の片付けが終わった後、リリムが一息ついて食後の飲み物を持ってきた所で聞いてみた。
木のコップに注がれた液体は、森で取れた果物を薄めたジュースのような物で、とても味が薄い。
「なぁリリム、結界魔法とか、身体強化魔法って無いかな」
「あるけど、どうして?」
「俺は防御が出来ないから、代わりにならないかなって」
「んーそうだね、結界魔法は神聖術にあるけど魔法攻撃に対して結界を張るって使い方だから、近接で攻撃されたら使えないね」
「身体強化は?絶対防御不能って事は攻撃は必ず受けるって事だから、攻撃を受けた後の体そのものを強化出来れば……」
「なるほど……防御はしてないから呪いの効果を回避出来る可能性はあるかな」
「じゃあ……」
「無理だよ。身体強化魔法はそれに耐えうるだけの体力と力が必要だし、ボクはそっちは専門外だ」
そっか……
「でもいい考えだね。南の国にそっち専門の知り合いがいるし、アリマの強化訓練には丁度いいかもしれない」
「それに、呪いの専門家にも会っておいた方がいいだろう。リリアス教国には腕のいい呪術師がいるらしいんだ」
これは、ついに森を出れるか?
「と、いう事はついに?」
「いい機会だし、精霊の森を抜けて南に行ってみようか」
こうして俺たちは南へと旅立つことになった。
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