表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

11話 農業の街ジルベール

 ジルベールは人口1000人程の小さな街だ。


 街の中央部には泉があり、泉の畔には銀の女神像が立っている。その女神像を中心に北側に住民街、南側に商業区があるので、南門から街に入ると商店やら教会が立ち並ぶ大通りに出る事になる。


 農業の街というだけあって街の周囲は畑や田んぼに囲まれていて広大な田園風景が広がっている。

 大通りには採れたての野菜や果物、串焼きを売っている屋台などが軒を連ねていて、色取り取りの市場の様相を呈している。


「ここで採れる新鮮な野菜は聖都でも人気でね、ここでは採れたてをそのまま食べられるんでボクも良くジルベールには来るんだよ」


「美味しそうな屋台があるんだけど……」


 さっきから俺の目と嗅覚を刺激する焼き鳥のような匂いが目の前に広がっている。


「オーク肉の串焼きにエッグバードの燻製だね」


 ……肉だ!肉がある!リリムの作ってくれる食事には肉が無かった。そうだ何か足りないと思っていたが、肉が足りなかったのだ。


 俺は今、肉に飢えている!


「美味しそうだな……」


 俺は文無しなので買い物をする事は出来ないのだ。


「アリマ、食べたいのか?」


 俺は口からたれる涎を隠さずに首を縦に振り、肯定の意思を伝える。


「ボクは食べないけど、アリマが食べたいなら買ってあげるよ?」


「やった! リリム~愛してる!」


「あは……愛してるって……お……おじちゃん串焼き2本ね!」


 リリムは照れ臭そうに顔を朱らめると、屋台の主人に串焼きを注文してくれた。


「らっしゃい!串焼き2本ね!お嬢ちゃん可愛いからサービスだ、ほら持ってけ」


 元気の良い串焼き屋台のおじさんはリリムに見とれてサービスしてくれたようだ。


「うん……美味しい!」


 俺は早速串焼きにかぶり付いた。オーク肉という事だったが、これが美味い。味は豚肉に近く、焼き鳥屋の豚肉を食べているような感覚だ。味付けは単純な塩味のような感じがする。


「これは塩味か……」

「岩塩だと思うよ。確か近くに岩塩の採れる山があるんだ」

「なるほど……」


 この世界には塩があると。記憶に留めておこう。


 串焼きでお腹を満足させてから、俺たちは服屋に寄って今着ているチュニックの洗い替えをリリムに買って貰った。因みにパンツは売ってなかった。今履いている貴重なトランクスは2日に一回は洗うようにしている。



 このままだと俺はただの紐になってしまいそうだな……と今後の生活の心配をしながら大通りをリリムと歩いていると、前を歩いていたリリムがクルッと後ろに振り返って俺を見つめて来た。


「う~ん……そうだアリマは通行証が無いんだよね?」


「無いよ?」


 そもそもこの世界で街に入るのが初めてだからな。


「だったらこの先に冒険者組合ってのがあるからそこに登録するといい」


「冒険者組合?」


 ギルドのような物かな?


「冒険者組合に加入すると、どこの街でも入れるようになる通行証を発行してくれるし、そこで今のキミの能力を測定してランク付けして貰えるんだ」


 それって……まんま冒険者ギルドだな……だんだんゲームの世界に似てくる気がするのは気のせいだろうか。


 冒険者組合の建物は、街の中央部に程近い場所にあった。石造りの二階建ての建物だ。


 冒険者組合の扉を開くと、受付と思われる女性が話しかけて来た。


「これはこれはリリム様、今日は何の御用でしょうか?」


「やぁレイシル。今日はボクの連れを登録しに来たんだ」


 ……ん?リリム様?お客様だからかな?


 レイシルと呼ばれた冒険者組合の受付の女性は、年は30歳くらいで栗色の髪を左で結っていた。美人なのだが、熟女系の匂いがする。既婚者なのかもしれない。


「こちらの方ですか?」


「あーはい、よろしくお願いします」


「と……その前にレイシルいいかな」

「なんでしょう?リリム様」

「それが……ボクの手違いで呪いの腕輪を付けているから気を付けてくれよ?」

「呪いの腕輪ですね、分かりました。それでは今、指名手配されている堕勇者は腕輪をはめているという情報でしたが、こちらの方は対象外とさせて頂きますね」

「……そうしてくれ」


 殺されかけた上に指名手配されていたのか……俺は。それに堕勇者扱いってなんだよ?


「堕勇者って?」


「名前が不明の勇者だそうです。逃げた勇者は昔から堕勇者と呼ばれています」


 そっか俺は名乗って無かったから……結果的に良かったのか?


「それでは登録しますので、こちらに記入をお願いします」


 記入? 俺この世界の文字知らないぞ!?


「リリム……すまん代わりに書いてくれないか?記憶喪失で文字も忘れてしまったみたいだ」


「世話が焼けるなアリマは、いいよ」


「ありがとう……リリム」


「記入が終わりましたら、現在のステータスを確認しますので、こちらの石板に手をかざして下さい」


 今、ステータスって言ったが……え?


「ステータス?」


「20年前に召喚された勇者様がお作りになられたステータス魔法を誰でも使えるようにした魔法具を使います」


 俺が石板の上に手を乗せると、魔法が発動し何やら羊皮紙の上に文字が書き出されて行くのが見えた。


 書き出されて行くに連れ、受付のレイシルさんの顔が信じられない物を見たという顔になって行く。


「あっ……あれ?え? 壊れたかしら……」


 そこに表示された内容とは、あれ?俺にも読める。


 名前 アリマ・ミノル

 推奨階層レベル  0

 攻撃力 5

 防御力 0

 体力 10

 敏捷 5

 魔力 659/5000

 神力 188/5000


 拡張ステータス

 耐性 無し

 特殊能力 無し

 祝福 女神の祝福

 加護 絶対防御不能(呪)


 コメント 迷宮は入れません。基礎体力を上げましょう。


 ……これが俺のステータスらしい。


「防御はゼロの上に低すぎる攻撃力、体力、敏捷値以外は、あり得ない数値が出ていますし、許容魔力最大値が中級魔術師並み、いや下手な魔法使いより多いですよ?しかも、拡張ステータスなんて見たことはありません。前代未聞です。それでレベルがゼロって……」


 なんか、レイシルさんが興奮してるんだが、大丈夫かな。


 結局、数値が異常だったので故障ではないかという事にして、俺のランクはレベルゼロのまま保留となった。


 依頼が受けられるのはレベル5以上ないとダメらしいのでレベル1にすら届いていない俺は登録する意味はあるのだろうか?




いつもお読み下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ