1話 プロローグ
初投稿です。
小説は初めてなので拙い文章ですがよろしくお願いします。
暗い……何も無い漆黒の闇が目の前に広がっていた。
俺はいつから此処にいるのだろう。
焦点の定まらない目で辺りを見回してみるが、やはり何も見えない。
俺は何で此処にいるのだろう。
在るはずの耳には何の音も聞こえてこない。
此処は何処だろう。そんな考えがエンドレスで繰り返し頭の中を浮遊していた。
…………。
ふと、誰かに呼ばれたような気がした。
その声?のような物に意識を集中すると、俺の体に徐々に感覚が戻ってくる感じがした。
そして……
意識が覚醒した。
――――――
「ここは……?」
暗闇を見回してみると、背後に暗室に穴を開けたような光が一筋差し込んでいるのが微かに見えた。
「光? あっちが出口か?」
俺は、とりあえずその光に向かって見る事にした。
――――――
その光は鍵穴のような形をしていた。前方後円墳みたいなアレだ。
鍵穴? そこにドアでもあるのだろうか? 鍵穴の周囲の暗闇に触れてみると、ひんやりとした木の感触がした。どうやら鍵穴の上部には突起物があるようだ。
俺は、その感触を確かめると…… 一気に押してみた。
光の奔流が目に刺さるように痛い。その眩しさに俺は顔を顰めた。
……なんだ此処は?
そこは光に溢れた空間というより神殿?のような場所だった。白い床は大理石のように磨き抜かれ、白い石の柱が何本も並んでいる。その中心には赤い絨毯が引かれていて、その奥の玉座には肘掛けに肘をついて、銀髪にエメラルドグリーンの瞳をこちらに向けている美幼女が座っていた。
肩まで伸ばしたサラリとした銀髪に、まだ幼い顔立ちの美少女は巫女服に似た白装束を纏っていて、お腹の中心部分には大きな淡いピンクのリボンがその存在を主張している。
「ん? 珍しいの……人族か……」
玉座に座った美幼女はチラリと俺を一瞥すると興味なさげに言った。
「……ハズレじゃな……お主には力を感じぬ……もう帰って良いぞ」
美幼女は、ほれ帰りはそっちじゃって感じで手を振っていたが、その言葉を聞いて、玉座の美幼女に見惚れていた俺は我に返った。
「ちょ……ちょっと、待ってくれ! 全く状況が分からないんだが……ここは何処であなたは誰なんだ? それに帰れと言われても……」
「煩いのぅ……まぁ落ち着くのじゃ。 そうじゃ 紫茶でも飲むかの?」
面倒くさそうに玉座の美幼女がそう言うと、俺の目の前に白い丸いガーデンテーブルと椅子が現れ、その上には湯気の出る2組のティーカップが乗っていた。
紫色の茶だ。
「……い……いただきます」
俺は出された椅子に座り、見たことのない紫色の液体に目を顰めたが、喉も渇いていたのでフーフーと温度を確認すると、一気にカップをあおった。
「!! うわ あちちっ」
こぼれた紫の茶が俺の紺色のブレザーに染み込む。俺の恰好は学校の帰りだったのか高校の制服を着たままになっている。白い縁取りの紺色のブレザー上下に小さめの赤いネクタイだ。
「まったく、もっと味わって飲まんか この茶葉はの、中央大陸北部に生息する紫高山トレントより取れた希少な物よ」
「ゲホッゴホッ」
なんか熱くて味はよく分からなかったが、トレントって……
「さて、質問に答えてやろうかの」
美幼女はそう言うと、白いガーデンテーブルの向いに座った。
いつの間に移動したのか、瞬間移動のような感じだったんでちょっと驚いてしまった。玉座から歩いてきたにしても、ちょっと早すぎる。
「な……」
美幼女はティーカップを人さし指で円を描くと、その取手にしなやかな白く細い指をかけた。
「まずは……此処は何処かというのじゃったか? 此処はそなたの世界、地球から見たら別の世界……そう 異世界じゃ。正確にはその入口に近い亜空間にある我の城じゃがの」
美幼女は、ティーカップの紫茶を啜りながら此処は異世界だと言い放った。
異世界だって?
「んな馬鹿な……」
そうかこれは夢だな うん そうだ夢。
俺はこれは夢だと考えることにした。うん美幼女かわいい。
「夢ではないわ、そして我はこの世界を担当している神じゃ」
考えてる事が漏れてる気がするが……
「はぁ?……神様? マジですか?」
「マジじゃよ 此処に飛ばされてきたのは異世界召喚でもされたのじゃろうな……
異世界召喚術の術式にここに飛ばすように仕込んでおいたからのう」
「……ってあんたの仕込みかい!」
「その通りじゃ」
ロリ神……黒幕はお前か……
「で……何で俺が召喚されたんだ?」
「さて……何かの手違いじゃろうな……そなたの潜在力では我の役には立たん」
「はぁ!?」
「本来ならば減少した我の力を補充するために生贄として召喚されるのだがの」
…………生贄かよ……
「安心せよ……食う分けではないわ……」
「我の力はこの世界ではレアな物でな、碌に補給出来んのじゃ。そこで力の豊富な地球人を召喚させて力を分けて貰っておるのじゃ」
「地球人の力だと?」
「……我は創造神ゆえに力の根源は人の創造力、想像力、妄想力なのじゃ」えっへん
「へー そうなんだー」(棒読み)
……頭大丈夫か? このロリ神……
「あー! 信じとらんな? この世界の人間達は妄想力が足りんでな……」
「地球にある文化的先進国の日本には妄想カルチャーが進んでおっての」
「あー アニメとか漫画……ラノベとかか?」
「そう、それじゃその妄想力が我には必要なのじゃが、お主には少し足りんようじゃ」
「まぁ……中二病なんかは卒業したし、特にクリエイトな人生は送ってないな」
俺は高3だが学校から帰ったら部屋に引きこもって家でテレビ見て、ゲームして消費するだけのつまらない生活。友達とかは居ないし、もちろん彼女なんていやしない。
それが俺が今までやってきた事だ。
漫画や小説なんかを書こうと思った事もあったが、大抵3日か一週間持てばいい方だった。
社会人じゃないから当たり前?そうかもしれないが、俺の周りでは同人活動なんかに精を出す奴らもいたし、中学からWEB小説を書いてる隠れ小説家なんて普通にいた。
あいつらに比べたら俺はただの一消費者でしかない。
同人誌即売会のスタッフとかやった事もあったが、一般入場より早く入れるからだし、サークル参加なんてした事もない。
「家じゃ、ゲームばっかりやってたしなぁ……」
「ゲームじゃと? その話、詳しく!!」
なんか、ロリ神がなんか目を輝かせながらゲームという単語に食いついてきたよ?
「最近だと多人数参加型のMMOとかRPGに嵌ってたかな…… 据置型のゲームも画質が良くて良かったけど携帯型の端末で高画質になってからは子供も大人もどこでも楽しめる携帯ゲームが主流になってきて……」
「ふむふむ……そうかそうか それでそれで?」
「ってこんな話、面白いか?」
「面白い!!地球人の話を聞くのも20年ぶりじゃ」
20年前っていったらプレステが発売されたばっかりの時代か……あの頃はMECが血迷って巨大なパソコンのようなゲーム機なんか出して自爆、とかSEGO最後の機体土星人が出たり4DOや史上初めての装着型バーチャル機が軒を並べたゲーム機の世代交代の時期だな。
此処の時間と地球の時間が同じか分からないけど。
そんなこんなで、俺は暫くロリ神とのゲーム談話に付き合わされる事になった。
「なんと、そのシリーズはもう14まで出ておるのか?」
「そのシリーズはオンライン版も2つほど出てるな」
「その……オンラインとはなんじゃ?」
「インターネットネットワーク上のゲームサーバにゲーム機を繋げて多くのユーザーが同時に同じ世界で遊べるっていう……」
ロリ神と俺はなんか気が合ったようで、合コンならそのままお持ち帰りしてホテルへINみたいな感じになったと思う。 まぁ合コンなんて行った事無いけど。ホテルもな。
「ふぅ……久方ぶりに楽しかったぞ」
「それはどうも」
「そうじゃ……お主よ、名をなんと申す?」
「そういえば言ってなかったか……俺は、有馬実だ」
「こんな気分が良いのは何100年ぶりじゃ……気に入ったぞアリマミノルよ」
ロリ神の笑顔が眩しすぎる……やばい ……惚れそう
「我の名はエリスロードじゃ」
「エリスロード様か……なんか言いにくいな……エリス様の方が可愛くないか?」
「なっ……そっそうか? 可愛いか? その方が良いかの?」
俺が頷くと、エリスロード様は顔を赤らめてはにかんだ。
「では、とっ……特別じゃぞ、特別にエリス様と呼ぶ事を許そう!」
「ありがとうございます エリス様 では、俺もミノルって呼んでくれ いや下さい」
俺はちょっと貴族っぽく胸に手を当てて挨拶してみた。執事ってこんな感じだろうか。
「で、今後の事じゃが……ミノルよ、このままでは、召喚後にすぐ死ぬ運命になっておる……」
なんか凄いことを聞いてしまった。俺死ぬの?
「エリス様 なんとかならないのか?」
「ミノルよ このまま死なすのも惜しいしの……餞別じゃ……我の加護を与えよう」
「加護? それで死なないのか?」
「そうじゃな……あぁ……ついでにモニターになってくれるかの」
「えっ モニター?」
何の? すごく気になるんだけど?
エリス様が俺の胸に手をかざすと、白と黒の拳大の発光する玉が現れ、俺の胸の中に吸い込まれていった。
「おっと……もう時間のようじゃ……」
「ちょ 時間って?」
「すぐに死ぬんじゃないぞ……」
「えっ 今死なないって言ってっ……うわっあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
白い神殿の世界からまた、暗黒の渦の中に俺は落ちて行った。
「……アリマ……ミノル……久々に楽しめそうじゃ」
白い肌の幼い女神が口元に笑みを浮かべ、暗闇をただ見つめていた。