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女×男=親友  作者: Ryu
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「翠と浮気してるんだろう、て言われたの。」


「・・・またそれかぁ。でも元カレにはちゃんと説明してたんでしょ?」


ぐずぐず泣きながら、母さんが作っていった酢豚と中華風サラダとスープを翠と二人でたらふく食べた。

失恋してもお腹って空くんだね、なんて何時もと同じような会話をしながら。


そしてお風呂に入って(注:もちろんお風呂は別々)、リビングの横の和室に布団を二つ敷いて、今は二人してゴロゴロしている。


「言ったよ。何回も。」


「何回も?」


「そ、何回も。翠の事いわれたの今回が初めてじゃない。彼と居るときにちょっとでも翠と電話で話したり、翠と二人で買い物に行ってたの見られてたり、なんか、友達から聞いたっていうのもあったかも。その他もろもろ。」


「その他もろもろって・・・。」


「彼の中で決定的だったのは、これみたいだけど。」


言いながら、私は肩の長さの髪の毛を掬って耳を見せる。


「そのピアス・・・。」


「そ、今年のホワイトデーに翠から貰ったもの。」


はぁー、と翠が溜め息をつく。

つられて私の口からも溜め息が漏れる。


「いっつも、私がフラれる理由は翠だもん。」


ちょっと口調を恨みがましくしながそう言って、ゴロゴロと翠のところまで転がっていく。


「みゅー・・・。」


翠の胸に顔を埋めて、我が家に常備してある翠のパジャマをぎゅっと握る。


「何がいけないんだろ。翠は生まれたときから一緒で、今も一緒で、親友で、お兄ちゃんだったり弟だったり・・・家族なのに・・・。」


またじわっと涙が出てきて、それをグリグリと翠のパジャマで拭う。


翠が優しく私を抱き締める。


私は、ほとんど、同性の友達が皆無だ。

性格は、別に悪くはない、はず。

人の悪口なんて言わないし、まあ、ちょっと人見知りだけど、話し掛けられれば笑顔で対応する。

他人に対して、嫌な態度はとったりしていない、つもり。

でも、同性には大概嫌われる。


それは、もう、物心ついた頃から。

最初は皆仲良くしてくれる。

でも大抵、突然無視され始める。

理由は、大体が、男に色目をつかってる、とか、仲良くしてくれてた子の好きな人や彼氏が私の事を好き、だとか、あとはその子が翠を好き、だとか。


・・・。なんだ、彼氏と長く続かない、というか、いつもフラれるのもだけど、友達が翠しかいないっていうのも、翠のせいじゃん。


「翠のバカぁ・・・。」


「えぇ・・・。」


私がまたしても恨みがましくそんな事を翠に引っ付きながら言うと、翠が困ったような声を出しながら、私の髪の毛をクリクリと指で弄っている。


だって、私はこんななのに翠は友達が多い。

しかも同性の。

翠は、所謂イケメンだ。

うん、赤ちゃんの時から一緒にいる私も確かに格好いいと思う。

しかも、翠は優しいし、性格もいい。

でも、私だって、私だって・・・私って・・・


「私って、嫌な奴なのかな。」


自分を卑下したくはないけれど、現状を鑑みて、ぽそっそんな言葉が口から漏れる。


「みゅー。」


翠が何か言いそうなのを遮るように、また、口からも言葉を落とす。


「私が嫌で駄目な子だから、直ぐにフラれるし、同性の友達もいないのかな。」


「みゅー。」


さっきよりちょっとだけ翠の口調が強いけと、そんなのは気にせず、私は続ける。


「それとも外見?童顔だし、背も小さいから・・・」


「みゅーは可愛いし、いい子だよ。」


私の口から出る後ろ向きな言葉を、翠が遮るように、強く言う。

かと思うと、優しく私を翠の胸から離して、私の両頬をちょっとひんやりした翠の手が包み込む。


「性格は、とってもいい子だよみゅーは。誰かに傷つくような事を言われたり、されても、みゅーが誰かの事悪く言ってるの、俺は聞いたことがない。」


また、ポロっと目から涙が溢れる。

翠は目元のそれを指で掬いながら、


「外見だって、この綺麗な焦げ茶色の大きな目、凄く可愛い。」


そう言う。

涙を掬った指が鼻、唇、となぞっていく。


「小さめだけどこの鼻も形がいいし、唇なんかはお化粧してないのにピンク色でぷっくりしてる。勿論肌もすべすべ。みゅーはすっごく可愛いよ。背が小さいのだって、それだってみゅーの可愛い所の一つだよ。」


そんなことを言ってくれる翠の笑顔はとってもかっこよくて、思わず見とれそうになった。


私はちょっと恥ずかしくなってきて、また、翠の胸に顔を埋める。

そして、それを紛らわすように、


「じゃあ、やっぱり翠のせいだ。」


と、ぼそぼそと言ってみる。

翠はくすくす笑いながら、


「そういうことにしといてあげる。」


と言って、私の髪の毛を今度はすくように撫でる。


それがとっても気持ちよくて、心地好くて、いつの間にか私は眠っていた。


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