レオ、哀の非モテ脱出大作戦(後)
言い訳ばかりですみません。やっぱり納まりが悪くて、全6話になりそうです。あと3話・・・。次話以降は良い話だなーが続く予定です。
一ヶ月後。
俺は詰まらそうな顔でお菓子を作っていた。
はいはい、適当。
あー。かったるいなー。
「パッテン。お茶」
「はい!分かりました」
冷えたお茶を飲む。
そうそう、俺用は良く冷やすように申しつけてあるのだ。
俺の体は年中暖房だからな。
あーあついなー。
「パッテン。ケーキナイフ」
「分かりました」
俺は受け取ったケーキナイフで焼き菓子を切り分けた。
よし、ここからのー。
「パッテン、おっぱい」
「お、おっぱいは出せません」
・・・ち、ダメだったか。
すると俺の発言を耳聡く聞きつけたミッシェが文句をつけにきた。
「セクハラよ!!いい加減にしなさい!!」
くそ五月蠅いミッシェに俺は首を振った。
そして、言い放つ。
「だまれ、三流」
「だ、誰が!三流よ!?」
ふん、俺に負けたおまえなど三流だろ。
最近では菓子づくりの腕でも俺の方が上だしな。
元々実力はあったがお菓子というファクターにちょっとだけ苦しんだだけだ。俺の美食パワーは貴様の数倍だ。
ふ、何というかもうだいぶ慣れてきたぞ。
俺は俺の適応能力に畏怖すら覚えていた。
「大丈夫です。これも精神修行なんです」
「そ、そう。まぁ、パッテンがそれで良いなら・・・」
ふん。もはや、ここいるおっぱい共の好感度を気にする俺ではない。
パッテンですらダメ、この状況に陥ってついに、俺は完全なる方向転換を決めた。
俺はもはやこのお菓子作りおっぱい共には媚びぬ!!
そもそも、こういう気概のある菓子作りおっぱいなど俺のおっぱい道的にはちょっと堅すぎなのだ。
おっぱいはもっとぷるんとしてないとな!
次なる狙いは、お嬢様おっぱいだ。
この一ヶ月の俺的セルフプロデュースの結果。
今や、砂糖の錬金術師・レオポルド・ルベットの異名は世間に知れ渡るまでになった。
今ではミッシェの菓子を押しのけて、俺のスウィーツが一位、一位、一位!!
以前は競っていた印象のシャルル・ド・ロマネティにも大差をつけている。
スウィーツ業界の潮流を牽引しているのは俺だ!
スウィーツ界はまさに俺の時代!!
ふはは、俺の才能が恐ろしい。
そのうち、熱心な信者から恋文とかもらっちゃって、おっぱいし放題なのだ!!
きゃほーーーー!!!
「ふふ、俺はお菓子界の神になるぅ!!」
「さすが師匠です!」
「無理よ!!そんなの私が止めるわ!」
わはははははは!!
◇◇◇◇◇
そんなある日。
「ここにレオポルドという男がいないか?」
俺を尋ねて一人の男がシャルル・ド・フランエにやってきた。
俺はその男の顔を見た瞬間、切れた。
良く知っている。こいつはイケメンパティシエ、ラファエルだ。
俺にとって最大に目障りな敵である。
大して美味くもないお菓子を作る雑魚菓子職人のくせに顔だけで売れやがって。
アイドル売りのゴミパティシエなぞ、俺は許さん。
「イケメンが!!しねぇええええ」
「な、なんだ。貴様は!?」
困惑するイケメン。
イケメンころす。イケメンころす。
「パッテン!!塩持ってこい!!」
「すみません。持ち合わせが砂糖しか」
砂糖なら常備しているのか!?
ええぃ!どっちでもいい!!
「くらえぇえええ!!」
「な、なにをするんだ!?」
砂糖をぶっかけられたイケメンが困惑した様子で俺を見る。
俺は吠えた。
「蟻に集られて死ねぇええ」
「無茶があるだろ!!」
知るか!シネ!疾くシネ!!
しねぇえええ!!
俺の奇声に様子を見に来たミッシェが驚いた声を上げた。
「ら、ラファエル。何をしにきたの?」
「ミッシェ!」
「ミッシェの知り合いか!!イケメンが俺になんの用だ!?」
ころすぞ!!
「く、なんて口の汚い男だ。まさか、貴様がレオポルドなのか?」
「そうだ!!」
俺の言葉にイケメンは髪をかき上げながら言った。
「レオポルド!俺と勝負しろ!」
その瞬間、俺の目が光った。
はーい、言質頂きました!!
イケメンデストロイモード!
「上等じゃごらぁあああころすぅうう」「まて、ちがぁ・」
ボディープレすぅうう。
からのぉ!!
金的潰しぃいいいいいいいい。
「しねぇええええええええええ」
「ぎゃぁあああぁぁああ」「やめてぇええええぇええええ」
◇◇◇◇◇
「ちっ、命拾いしたな」
顔を腫らした俺はそう呟いた。
くそ、俺のイケメン尊顔が台無しじゃないか・・・。
「あぁあ」
俺の前では、恐怖の表情でイケメンが震えている。
ちなみに俺の顔が腫れているのはとめに入ったミッシュの10連続往復ビンタによるものだ。
ふ、彼女を責めるのはやめて貰おうか。
あれは悲しい事故だったのだ。
デストロイモードは俺比で115%の戦闘能力向上が得られるかわりに理性の箍が外れてしまうという重大な欠点がある。
事故は俺が白目をむいたイケメンの金玉をすりつぶす、その瞬間に起こった。
本能のままの俺は前を過ぎったおっぱいに反応してしまったのだ。
美少女のおっぱい>>>イケメンの金玉である。
本能のままに俺は急遽、予定を変更し、そのおっぱいを掴んだ。
なんという悲しき事故であろう。
そのまま、50おっぱいタイムを得て、そのおっぱいからのやたら本気の反撃にあったのだ。
まぁ、良いさ。
イケメンの金玉を逃し、おっぱいを掴んだが後悔はない!
ちなみにイケメンは最初のボディープレスで気絶したらしく、その後のおっぱいタイムは目撃していない。
まぁ、そんな事はどうでも良い。
「お、俺とお菓子作りで勝負をしろ!」
ん、一瞬、何故だか子作り対決かと思ってしまったぞ。
イケメンの癖にちょっとおもしろいなぁと思ったがそんなこと無かったか・・・。
しかし、お菓子対決ぅ?
はぁ?
俺はつまらなそうに呟いた。
「そんなことはミッシェとやれよ。雑魚はこいつに任せるわ」
「じ、自分の方が格上みたいに言わないでよ!!私がナンバーワンよ!!」
はぁ?何言ってんの?このおっぱいちゃん?
ちょっと俺におっぱいされたからって特別視はしないぜ。
ははは。
「ミッシェがお前に負ける訳がない!っごほ・」
「なんだと?」
そのミッシェは俺に実際負けてるのだが。
現在進行形で負け続けてるのだが。
「ごほ、ぉ、とにかく!シャルル・ド・ロマネティのラファエルがお前の横暴を止める!!」
「はぁ?何様だよ、お前」
「・・・・・・」
なんだ?俺変な事言ったか?
「あのー、彼はミッシェさんのライバルと言われるユノウス商会の」
パッテンの言葉に俺は眉をひそめる。
「それは知ってるぞ。こいつの菓子も喰ったことがあるしな」
あえて言おう。雑魚である。
ミッシェのライバルって言うが正直突き抜けたナンバー1だったミッシェの後追い金魚の糞野郎だろ。こいつ。
ほんと何しに来たんだ?
「とにかく、俺はお前を倒す」
くそ、面倒だな。
しかし、このゴミのようなイケメンを公衆の面前でボロクソに任せるのもおもしろそうだ。
俺は暗い笑みを浮かべると言った。
「良いだろう。死ぬほど後悔させてやる」
イケメンは俺を見つめると言った。
「・・・決まりだな。勝負は、ごほっ、3日後だ」
俺は笑った。
「良いだろう。3日後がお前が一生後悔するほどの公開処刑記念日だ。俺が100%負ける訳が無いからな。絶望に震えて過ごすが良い」
「・・・・・・」
「なんなら法神契約にサインするか?何をかける?どんなものでも良いぞ?絶対俺が勝つからな。さて、なににしようかなー」
「そ、そんな勝負をする気はな、い・・・」
イケメンが真っ青な顔で震えている。
顔色が本当に青い。バカな奴だな。
最後に少しだけ優しい言葉をかけてやろう。
「ちっ、どうでもいいがな。おい、イケメン。お前のその様子だと肋骨にヒビが入っているだろ。さっさと病院に行け」
「え・・・・・・」
「勝負は3日後だったな。くく、病人が精々頑張れよ」
◇◇◇◇◇
イケメンは入院し、
試合は一ヶ月後に延期になった。
◇◇◇◇◇
一ヶ月後。
何故か試合会場が設けられたコロシアムに俺は立った。
この対決、チケット販売までされてるらしい。
どうやら大入りらしい。暇人共め。
まぁ良い。注目を浴びるのは良いことだ。
俺は集まった審査員を見て眉をひそめる。
「どういう人選だよ、こりゃ」
「やぁ、レオ」
ユノウス商会会長ユノウス・ルベット。
「ふ、お前がお菓子作りに鞍替えしていたとはな!」
毎度お馴染みのクリフト大公。
ここまではまぁ、良いだろう。
「はぁ、何で私がゴミの作った物を口にしないといけないのです?」
俺の妹、ユフィリア。
まて、何故、俺の唯一にして最大の天敵がここにいる。
審査員は残り2人。
「楽しみですね」
「菓子か」
イケメン王ライオットにフィリア教の最高司祭ユリア・アンネリーゼか。
マジでこのメンツを相手にするのかよ。
厭すぎる。
いろいろ濃すぎだろ。
すると黄色い声援がわき起こった。
え?なにこの大声援。
「きゃぁあああああ、ラファエルさまぁあああああああ」
「いやぁあああこっち見て!!やぁ笑ったぁあああああ」
ちょ。うる。
「いやぁああああああああ、すてきぃいいいいいいいい」
あの。ちょ。
ラファエルがイケメン顔で会場入りした。
「待たせたね」
は、ころすぞ。おい。
ラファエルは俺の様子を見ると笑った。
「ふ、すごい形相だ。まぁ、無理もない、君が俺に勝てる訳がないからね!」
「・・・」
どうして、あの程度の腕前でそこまで自惚れが。
逆に怖いもの知らずなお前に驚きだよ。
「始めようか。まずは俺からだ!」
ラファエルは早速自分のお菓子を配った。
「ほう、なんとも美しい菓子だな。名を聞こう」
「濃厚バターで作るミルフィーユ、三種ベリーのフレッシュフルーツ和えだ」
む、さすがイケメン。
見た目がものすごい派手な菓子が出てきたぞ。
イチゴにラズベリー、ブルベリーをあしらったミルフィーユだ。
何故かミルフィーユが前衛芸術みたいに広がった複雑な形で如何にもオシャレな感じがする。
「ほう」
クリフト大公は一口それを口にした。
「ふむ、美味いな」
「そうでしょう!!三つのベリーがそのまま、口の中で砕けるとソースになり、ミルフィーユを包み込みます!!」
「ふむ、・・・」
・・・。
・・・・・・。
「えーと、反応薄くないですか」
不安気な様子のラファエル。
審査員一同が言葉に詰まっている。
俺も奴の菓子を口にした。
まぁ、普通に美味いな。
うん。
ユリアが口を開いた。
「美味しいと思います。でも、どうしてミルフィーユ生地にカスタードやアイスを添えないんですか?」
「是非、フルーツの味を直接ミルフィーユと絡めて頂きたく思い、そうしました」
「そうなんですか?ごめんなさい。私、果実もミルフィーユ別々に食べちゃいました」
「え?」
まぁ、そうなるよなぁ・・・。
そもそも、どうやって一緒に食べるんだ?
口の小さい女性陣は無理だろ。
「こ、こうやって食べてください!」
イケメンはおもむろに食べ方指導を始めた。
ラファエルは堅いミルフィーユのかけらで中央に鎮座するベリーを突き刺して食べた。
「こぉのよぉにぃたぁべぇてくださぃ」
「おい、イケメン、口に物入れてしゃべるなよ」
くそ、こいつ、アホの子なのか。
もしかして、こういう奴がモテるのか?
あり得ないだろ・・・。
すると、黙っていたユフィが口を開いた。
「はっきり言って不味いのです。
口の中でソースが完成とか言っちゃって、お陰で味がぜんぜん不安定。
味の変化を極力押さえる為にベリーベリーベリー。
ベリーバッド。
なにが噛みしめる喜びですの?同系統でまとまり過ぎですの。
フルーツに張ったジェレ掛けも微妙です。
ジュレは多用しすぎると味の印象が崩れて良くないです。
そもそも、ジェレではソースにならずせっかくの焼き菓子部分が絡まず死んでますよね?
ジャムソースもカスタードも無しに堅い焼き菓子が堅いまま、口に残ってはっきりと不愉快ですの。
大体、お前もミッシェも果実そのまま喰って美味いとか意味不明理論なのです。だったら果実店になれば良いのです。
お菓子として、最低限、お菓子になってないモノは評価のしようもありませんです。止めませんので今すぐ廃業して果実農家にお勤めになってくださいです」
ユフィのじっくりとねちっこい指摘が入る。
「・・・・・・うっ、うぅ」
ラファエルがその場に崩れ落ちた。
おい。
もしかして、アイツ泣いてないか?
さらに周りを見渡すとミッシェが青い顔で額を押さえていた。
・・・・・・。
しかし、この妹、ほんとどうにかしろ。
どんな罰ゲームだよ。
大体、こいつの真の標的は俺なんだぞ。
こ、こわすぎる。
まじ、どういうことだよ!?
「上に乗った果実部分をコンポートにしてアイスを加えるか、どうしても新鮮味を残すなら果実ソースで一体感を出すことに加えて、味の濃いカスタードをクッションに入れるのです。
お前程度の腕で奇を狙うのはいけませんよ。
今のままではただの粗悪なクラッカーですよ。精進するが良いです」
「あ、ありがとうございます」
これ一応、フォローしたのか?
くそ、さすがの俺も帰りたくなってきた。
妹が怖くて帰りたい。
く、これも運命力の試練なのか!
だが、いいだろう。
俺は自分の料理を出した。
一同が困惑した顔をする。
「これは」
「まさか」
俺は不適に笑った。
「そうだ。俺の用意したものはこれ。洋梨のラ・パルフェ・ド・ジュレ・トロワだ」
◇◇◇◇◇
俺の用意した菓子に審査員たちがざわついている。
ラファエルが大きな声を上げた。
「待ってくれ!この菓子がミッシェの菓子のコピーなら俺は負けを絶対に認めないぞ!」
なんだと?
こいつ、旗色が悪いと考えて勝負回避に来てるだろ。
見苦しい奴だな。
「まるで自分の菓子ではミッシェには勝てないと認めている様ではないか。
「それは・・・」
ラファエルは悔しげに俯き呟いた。
「ああ、そうだ。俺の菓子では彼女に勝てない」
「おまえ・・・」
心折れすぎだろ。つか、何しにここに来たんだよ。
このイケメン、哀れすぎる。
さすがにちょっと同情して来たぞ、おい。
「俺の物がミッシェのコピーか喰えば分かる」
「なに?」
ラファエルは震えた。
「・・・」
「どうした」
「お、おまえ」
「おう」
「こんなに凄腕のパティスリーだったのか!?」
「・・・お」
おい、こいつ。
まさか、俺の菓子とか喰わないでここまで来たのか??
「どういうつもりで喧嘩売ってきたんだよ。お前・・・」
「ユノウス社長の七光りでコネ入社した奴がユノウス社長の菓子を自分の名を語って売りさばき、挙げ句、店ではセクハラ行為ばかりを繰りしているという話を聞いて俺は居ても立っても居られなくなったんだ!!」
あ、・・・そう。
観戦していたミッシュが俺の菓子を口にする。
「嘘・・・、私のモノより格段に美味しい・・・」
審査員も無言で食べていたスプーンを置くと呟いた。
「ふむ。しかし、これほどの味と薫りがこの世にあるのか?まるで満開に咲き誇る桜のようではないか。鼻を通るこれほどの薫り」
「瑞々しさにアンチテーゼの様に流れる成熟。小賢しいです。貴様、洋梨酒を使ったのですね」
ユフィの指摘に俺は頷いた。
「ああ、酒精は十分に飛ばしてあるがな」
「何だと」
「デルタ産の最高級ポワレを使ったのだ。洋梨の味を極限まで熟れさせて発酵したこれを使って、もう一段階上の味に仕上げた」
完熟の洋梨に熟成のエッセンス。
これが料理に一手間と言うわけだ。
「そうか。それでこの独特の深みと薫りが・・・」
「正直、ミッシェのこれも微妙でしたし、この豚の方がマシですね。ポワレを使って全体の味のあやふやさを絞めた分だけ、そこそこまともになりましたです」
うお、ほめてるよ!マジか、ひゃっほー!!!!
おにいさんといっしょにお風呂入らない?
ユフィちゃーん♪
おっぱいしよう♪
「なんかゴミ豚がすげー気持ち悪いです」
なんだと!?
てめぇ、ちょっと超絶可愛いからっていい気になるなよごらぁー!!
「どうやら、決まったようだな」
ユノウスがそう呟く。
しかし、陰が薄い奴だな。
まぁ、立場的に従業員に悪口も言えないし、仕方がないか。
「お、俺の負けなのか。ユノウス商会でナンバー2になったはずのこの俺が」
なんだこいつ、だせぇ。
「みみちぃ男だな、ラファエル。何故お前が負けたか。分かるか」
「何・・・?」
「お前の菓子は昔から知っていた。だから言おう。堕ちたな。今のお前の菓子はミッシェ・メリエの粗悪な模造品に過ぎないのだよ。パティスリーが他人を憧れるのも大概にしろ」
「く」
「ミッシェの菓子の後追いをするようになってどんどんレベルが下がっているぞ。この分だと直ぐにもっと下に落ちる」
「お、おれは」
「俺がお前にこのラ・パルフェ・・・なんとかを出したのはその皮肉を込めてだ。お前には個性がない。いや、ミッシェの個性を正解だと思いこんで自分を殺している。そんな奴に本当の菓子などつくれん」
イケメンはいよいよ本格的に泣き出した。
ふふふふ。
どうだ、この説教!まじ俺、論破!!
完・全・勝・利ぃ!!
この完璧な姿に女共は濡れに濡れまくっているに違いない。
さぁ、誰でも良い!!俺の胸に飛び込んでこい!!
すると一人の少女が俺の方を向いて立ち上がった。
ミッシェだ。
「どうして」
ふははは、ミッシェ!!
お前がついにデレると言うのか!
いいぞぉ、カモン、おっぱい!!
彼女は走り出した。
そして、俺の胸。
胸。いや腹。
あの。
え?
少女は俺の横をすり抜けて、ラファエルに抱きついた。
え?あ、そっちですか。
「どうして!!あんたはいつも、そんなにバカなの!!」
「ミッシェ。僕は・・・」
「・・・バカぁ、ばかぁあ」
え、なにこれ。
呆然とした俺に向かってパッテンが紅潮した顔で言った。
「つまり、ミッシェさんもラファエルさんが好きだったんですね!!きゃーー」
「え?この状況でいきなり、それをわかれと?」
何、この俺が察し悪いみたいな展開。
おかしいだろ!!
すると、クリフト大公が苦笑いを浮かべながら席を立った。
「ふむ、どうやらこの戦いは無効の様だな」
ちょ、待て!
クリフト大公、俺がそれを認めると思うか!?
ふざけんな。このザ・TYABAN!!
おい、おーい。
圧倒的に勝ったの、俺だけど。
ちょっとー。無視しないでー。
「兄さま、見てください。あそこに世にも珍しいピエロ豚がいるですよ。ぷぷ」
「いうな。ユフィ、可哀想だろ」
お、お前たち!!
「おい、まさか、ミッシェ。お前、ラファエルが好きなのか??」
「ぐすぅ・・・ぐすぅ・・・うん」
そ、そっか。
って納得するかぁああああああああ。
く、くそおおおおおおおこのスウィーツ脳共がぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
「良くも俺を虚仮にしたなぁああああああああああ」
許さんぞぉおおおおおおおお!!!
俺は怒りに我を忘れ叫んだ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
まさにいま、俺の中の殺意の波動がぁ・
真・イケメンデストロイモー・・・。
「黙れ、豚です!!」
――― 電撃
ああん、痺れちゃうぅ。
俺は何故か問答無用で妹に電撃を撃たれ気を失った・・・。
◇◇◇◇◇
一ヶ月後。
俺は部屋の隅をじっと見つめていた。
ちくしょう、今回は上手く言ったと思ったのになぁ・・・。
イケメンを公開処刑でぼっこたら、次の日から毎日剃刀入りの脅迫文が大量に届いたしー、もう色々無理すぎる。
お客様おっぱいも絶望的じゃないですかー。
災難続きのお菓子業界とは縁を切ると俺は自室に籠った。
くそっ、俺は、俺のモテ期はどこだ・・・。
まさか、ここまで強固な運命力に阻まれているなんてな。
俺はこのまま一生モテないのか?
ありえない。
そんなバカな。
うう。
「ユノウスか。何故来た」
「メーリンさんに呼ばれて。あの一件以来鬱ぎこんでいるそうじゃないか。どうした?なんか最近変だぞ、いや、もともと変だがますます変だ。どうしたんだよ、お前」
「ふん、モテモテなお前には関係ないことだ。非モテな俺のことなど、忘れてハーレムでも作って腹上死しろ」
「お、お前、本当に大丈夫か?」
くそ、イケメンめ。
くそ。
ちくしょーうううぅ。
うう。
俺はユノウスにしがみつくと言った。
「ユノウス・・・!!おっぱいがしたいです・・・・・・」
「・・・。どういうことだよ、レオ・・・」
「お、おれ、ただおんにゃのこと、おぱ、おっぱいしたいだけだったのにぃ」
「・・・・・・」
ユノウスはそんな俺を見ると一言呟いた。
「モテたいなら痩せろ」
「・・・無理ぃぃ」
◇◇◇◇◇
痩せるのは無理なので、俺はおっぱいへの想いを封印することにしたのだった・・・。




