表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
62/98

華麗なる戦い

※7月12日改訂

秋。

私、アリシスはべオルグ領に出来た新しい学校に通うためにべオルググラードにやって来た。


べオルググラート。

主に隣国ウォルドとの交易で栄えて来た町だ。


ウォルドは北の辺境。

多少の鉱山資源はあるものの農地に適した土地が少なく、主に鉄鋼業で栄える国だ。


人口は少ないが国土はそこそこ広い。


隣国への物資運送、陸の要所。

それがべオルググラードだ。


もっとも最近はべオルググラードからウォルドへの物資運送は滞りがちであるらしい。

今までとは違って供給をする側に変わりつつあるらしい。


王都に比べるとちょっと田舎な町だと思った。

新設されたであろう真新しい建物が並んでいるものの、規模もそう多くはないだろう。


ただ、人々の活気は王都以上かもしれない。

人のエネルギーに満ちている感じがする。


この学校に行くことはお兄様にお願いして、許可してもらった。


私が王立学院をやめて、この学校に通うこととに決めても王家の者から抵抗は無かったと言って良かった。


歓迎と言うより無関心。


もともと、王家に居場所なんて、お兄様の近く以外無かった。

流れ者の娘が彼の庇護下で育ったのだ。


ありがとう。お兄様。


兄への感謝はいくらしても足りないと思えた。


学校は町の若干の郊外にあった。


「まだ、何もないのね」


ぽつりと呟く。


学校施設以外は本当に何も無い。


ひとまず、まだ学校に用事は無い。

私は寮を目指した。


「大きいなぁ」


女子寮の定員は80名程度らしい。

相当な規模だ。


男子寮が同じ規模で隣に建っている。


周りに平地が続いていて、それぞれの土地に第二、第三寮建築予定地と書かれた看板が立っている。


現状で160人分。

最終的には500人近くの人間がここに住むことになるようだ。


一期生は全員寮に住む予定だ。

女子寮は結構立派な門構えである。


まぁ、さすがに私の前の家ほどじゃないけど。

私も一応、王族だし、それなりに見栄えのする家に住んでいたのだ。


私は寮の正面玄関に入った。


「あら、いらっしゃい」


見知らぬ女性に挨拶された。

年齢は20代半ばくらい。ちょっとおっとりした印象。

誰だろう。


「ここに下宿する事になっているアリシスです」


私は緊張しながら、おずおずと招待状を示した。


「はい。話は聞いていますよ。王女さまですね。私はここの寮母をすることになってる、ネリンダです。私も初めての経験ですので何かと至らない事もあると思いますが、よろしくお願いしますね」


「よろしくお願いします」


「では、部屋まで案内しますね」


部屋の前まで行くとユノウス商会の人間が事前回収した荷物が届いていた。


「荷物はこれで全部かしら?」


私は確認すると頷いた。


「はい、そうです」


「それじゃ、今日の晩ご飯の時間は・・・」


今日は晩ご飯の時に簡単な自己紹介などの歓談をするらしい。


「はい、分かりました」


「では、失礼しますね」


部屋は二人部屋か。

誰と一緒に住むのだろう。


しかし、荷物が着くのが早いなぁ。

そもそも、ここまでの足も商会の人間を通して、転送門を使わせてもらっている。


最近ではこっそり転送門を各主要都市、五ヵ所に設置して、運送業も始めているそうだ。

速く確実に届くと評判らしい。



召還魔法かぁ。



私たちの魔法の師匠であるユフィが言うには召還魔法とは存在の圧縮・非物質化・情報化・保存魔法らしい。


物質であるエゴイドをエゴとイドに分け、記録神の神唱結晶による魔法領域とスーパー回廊イドに設けたストレージ内に特殊な方法で保存するとか。


えーと、何だっけ?

ZIPジップで保存とか言ってたなぁ。

情報圧縮をするらしい。


この世界はパソコンのようなものらしい。


正直、パソコンって何?って話なのでよく分からない。


実のところユフィも兄の受け売りで詳しくは知らないらしい。


彼女の兄、ユノウスが言うには。


魔素がバイト数で、経験値がデータ量。

LVやステータスがプロパティ。

祝福がアクセス権で、神様がファイル共有ソフトで(この世界的には)違法なもので。

魂の回廊がインターネットらしい。


うん、ぜんぜん分からない。


何の呪文だろう。


彼にとっては分かりやすい例えらしいけど。


召還魔法は物質を変化させる。

変化・圧縮したのちに復元しても形質の変化は無い。

物は腐らないし、変化しないのだ。


しかし。


極めてごく少量の時間経過による存在劣化があるらしい。

つまり、経験値損失だ。


その量は10回で経験値1とか、1年放置で経験値1とかその程度らしい。


それでも、まぁ、存在が稀釈するとか怖いな。


とにかく、この魔法はスーパー回廊イドに肉体情報を保存するための保存領域を作るらしい。

この魄の回廊内の保存領域を「ソウル自己領域ストレージ」と呼ぶそうだ。


なお、術者が死ぬと術者が魂の回廊に設けた「ソウル自己領域ストレージ」が消失するために封印された物質は全損失ロストする。


これは誰も観測したことが無かったけど、彼が言うにはそうなることで確定らしい。


たとえば、召還獣みたいなのは術者が保存したままに死ぬと魂の回廊に溶けて消滅しちゃうんだね。

ちょっと可哀想かも。


そういえば、引退した召還魔法師は自分の育てた召還獣を野に返すと言う話を聞いたことがある。


そういう理由が有ったんだなぁ。


「あっ、姫。もう来たんだ」


シエラがいる。


早いな。

彼女もこの学校に通うことになったのだ。


彼女たちの親は多少反対していた様だが、奨学金が出るということを聞いて手のひらを返したらしい。

貧乏貴族にとって、双子を王立学院に通わせるのは相当な負担らしい。


二人の家は子沢山で、シエラとシェイドが8人目、9人目らしい。

下にまだ妹や弟が3人も居て、全部で14人家族。


大変なものだな。


なんでも、両親がフィリア教団の信者で、フィリア教は堕胎が認められないらしい。


二人の親は若い頃、不妊に悩んで、悩んだ挙げ句に、子宝に恵まれると評判のフィリア教に入信したらしい。


ちなみに、フィリアの加護は精力増強(微少)、性的感度増強(微少)、受精強化(微少)、安産強化(微少)、幸気喚起(微少)、危険察知低下(微少)、知力低下(微少)。


・・・。

うん、明らかに毛並みが違う。


有る意味、麻薬的な構成だし、有り難がられるのは良く分かるが。


効果は微弱とは言え、一般的に楽天家になり、ついでに性的にオープンになりやすいらしい。

夫婦仲が良くなるとも聞く。


微少というのは本当に微少らしい。

そんな気分かなー程度の効果だそうだ。


そうだと良いな。

違うと怖いなぁ。


不妊治療目的でフィリア教団に入信し、それが転じて大家族とは世の中よく分からないものだな。


みんな、大変なんだな。


私の知り合いでこの学校に通うことになったのは、


女性では。

シエラ、カリン、ユフィリア、ユリア。


そして、エスト先輩。

意外すぎる感じがするが、どうやらこの学校に興味津々らしい。


男性はウォードやシェイドなども入学予定だ。


どうやら、この二人もこの学校に通うらしい。


意外なのはユリアさまとエスト先輩。

騎士学校は今頃、大変だろうな。


転校の理由は「学校は家に近い方が便利ですよ?」らしい。

いや、本当の理由はぜんぜん違うだろうけど。


「みんなもう来てるの?」


「え、うん、ユフィとユリアはもう来てるよ」


そうなんだ。

なんだかんだで私がビリか。


そのとき、隣の部屋から大きな声が聞こえた。

ユフィが一方的にユリアを睨んでいる。


「くく、此処で会ったが百年目。いつぞやの決着をつけてやるです!」


「あら、ユフィさん、同室らしいですね。よろしくお願いしますね」


え、二人が同室。

私がシエラは見ると彼女は苦笑いを浮かべて頷いた。


どうやら、本当らしい。


だ、大丈夫なの?それ??


この事実には妹さんの方も顔を歪めた。


「え”」


「ふふ、嫌そうですね」


「当然です!おまえだって嫌でしょう!!」


「そんなことないですよ?だって、いずれは私の妹になる方ですし」


「しゃらっぷ!!何を企んでるんですか!!」


そうだ。

そんな規定事項みたいに言うのは駄目だよ。


わ、私だって。

彼女のお兄さんとは仲良くしたいと。


私は王立学校での出来事を思い出して顔を紅潮させた。


「どうしたの?姫」


「あ、あの・・・。まだ気持ちの整理がつかなくて」


うぅ、あんなことを言っちゃって、思い出すのも恥ずかしい。

私が恥ずかしさの余り、思わずその場にしゃがみ込んでいると声を掛けられた。


「ぽんぽん痛いの?」


「え?」


気がつくと、にこにことした顔の子が私をのぞいている。

同い年ぐらいか一つ下だろう。


この子もここの学生?


う。

なんか撫で撫でされてる。

余計に恥ずかしいよ。


「どこも痛くないよ」


「よかったぁ♪」


にっこり笑って離れていく。


「どうしたの、ミルカちゃん?」


「なんでもないよー。ミーナお姉ちゃん」


また見たことがない人だ。

というかエルフさんだ。


見た目は幼く13歳かそこらだ。

エルフだから24、5歳?かなり年上だ。


何故か、べオルグ軍の制服を着ている。


「こんにちは。私はべオルグ軍に所属するミーナ少尉です。軍務優先ですが平時はここで学生をやるように命じられています」


びしっと敬礼をしてくる。

私は頭を下げると自己紹介をした。


「は、初めまして、アリシスです」


「貴方がアリシス姫でしたか。ユノウス閣下より話は聞いています」


う、姫とか説明したくなかったけど、すでにご承知だったらしい。


「ミルカだよ」


「初めまして」


私の横にいたシエラも挨拶を始める。


「私はアリシスの友達のシエラです」


「知ってるよー」「はい、さっき挨拶しましたから」


二度目なんだ。

なんか疎外感を覚えるかも。


「この人たちが私たちの部屋の隣なの」


「仲良くしましょうね」


「なかよく!」


うん。仲良く。


「くく、こうなったら!全力でやってやるです!!」


「あらあら、おもしろそうですね」


って。

こっちはヒートアップしすぎでしょ。


「やめなさい!!!」


「「?」」


二人がようやくこっちを向く。


「くず共が雁首そろえて何用ですか?」


「あら、アリシス姫。ごきげんよう」


うーん、相変わらずだな。

こんな状況でもまったくぶれない二人にちょっとだけ感心する。


私はもう借りて来た猫状態なのに。


でも、くず共はさすがに・・・。私は、一応の忠告を口にした。


「ユフィ、そんなんじゃお友達無くすよ」


彼女は半目でこっちを見ると言った。


「兄様のことを諦めるなら友達になるです」


え、友達じゃないんだ。私。

まぁ、敵かぁ。うーん。


すると、しれっとユリアがユフィに宣言した。


「では、私は諦めませんので家族になりましょう。ユフィさん」


「ぎゃー!!このやろうー!!」


この流れ。

よ、よし、ここは私も宣言しとくか。

私はすこし、声を裏返しながら言った。


「わ、私もその、彼のことが好きですので、その」


「ぎゃー!!なんだこいつ!?」


言った。言っちゃった。

は、恥ずかしいけど、私だってもう引かないからね。


ユフィは私の言葉に半切れ状態だ。


「あ、あの、じゃ、私も・・・」


え、ミーナさん?


「あのね。ミルカはすでにかぞくだよ」


え?ミルカ、どう言う意味?


「誰だよ、てめぇらは!?いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーです!!てか、」


  ふ・ざ・け・ん・な!!


ユフィが完全に切れた。

そして、顔を真っ赤にして周囲を見渡すと、ふいに何か気づいた様子で呟いた。


「はっ!まさか、ここは!?にいさま、学校と言う名の後宮ハーレムですか!?さすが、兄様・・・」


は、ハーレム?


「ら、乱心しすぎよ。ユフィ」


ユフィは突如、顔を青ざめると滂沱の涙を流しながらへたりこんだ。


「るー」


「ちょっと。ユフィ?」


「るー」


「あらあら」


え、違うよね?


ただの学校の女子寮だよ。

だ、だから、帰ってきて、ユフィ。


彼女はしばらく言葉も無く涙を流していたが立ち上がると言った。


「・・・・・・にいさまがそういうおかんがえなら、ユフィはおてつだいしますです、はい」


「あら、良い妹さんですね。ユフィ♪」


ユリアがそういって手を叩いた。


うぅ、ユフィの無表情が怖すぎる。





◇◇◇◇◇






夜になって、入居者歓迎会が始まった。

みんなの自己紹介が始まる。

年齢も出身もバラバラで農村から来た子もいれば都市から来た女性などもいる。

ユノウス商会の人間もいるようだ。


「はーい、アカネ・フロットと言いまーす。15歳です!特技は右ストレートです。趣味はヒーローごっことバカな友人にツッコミを入れることです!いえーい!」


「リリア・タームです。14歳です。今回は希望を出して、べオルグ本店勤務傍らで学校に通う事になりました。ここは、か、可愛い子が多くて最高です!!どきどきが止まりません!ビバ、ハレルヤ!!」


「このテンション高めの妹の姉のエリカ・タームです。15歳です。なんというか付き添いです。どうも」


・・・商会は変なテンションの子が多いな。


私が困惑していると寮母さんが手を叩いた。


「はーい。今日はみんなでカレーを作りまーす。4人1組で班を作ってねー。レシピは机の上にありまーす」


え。晩ご飯って自分たちで作るの?

困惑してるとユフィに対してユリアが声を掛けた。


「じゃ、妹さん組みましょう」


「うげぇ・・・。分かったです」


こ、これは同室で組む流れか。


「シエラ。組もう」


「うん、良いよ」


「先輩、お願いします」


「ああ、よろしく」


「ミルカちゃん。一緒にやろう」


「うん」


と言うわけでコンビができた。


カリンとエストさん。

ユフィとユリア。

ミーナさんとミルカ。

そして、私とシエラ。


うーん、私たちのコンビは料理に自信ないし。

そうなると・・・。


「一緒にやりましょう。ユフィと聖女さま」


あ、エスト先輩に先手を取られた。


「良いですよ。エストさん」


「はい、こちらこそ」


あー、あっちはもう決めちゃった。

まぁ、良いか。


私はミーナさんたちに声を掛ける。


「ミーナさんたち一緒にやりませんか?」


「良いんですか?」


「よろしくねー」


よし、これでがんばろう。


「ミーナさん、さっき自己紹介で給食班に居たって言ってましたよね。料理得意なんですか?」


「は、はい!ジャガイモの皮むきは得意です!」


え?

あれ?


「え、他には?」


「・・・」


あれ?

給食班だから料理上手かと思った。

正直、当てにしていたのだが。


「わ、私、き、給食班を首になんかなってないです!うぅう…」


彼女は虚ろな目でそう呟く。


・・・何を起こした。

何があったの?


こっちの様子を見ていたユフィが呆れ顔で呟いた。


「おまえもうんこクッキーの同類ですか」


「だ、誰が!うんこクッキーよ!」


「み、みんなが泡を、うぅう」


だから、トラウマでバッドトリップしないで。

だから、何を起こしたのミーナさん。


怖いから。


「ミルカは」


「うん。ミルカ、がんばってたべるね!」


だめか。


あれ?これ拙くない??


いや、不味い側の私が言ったら拙いか。

でも、これ。・・・拙いよね。


「シ、シエラがんばって」


「私も料理得意じゃないよ・・・」


でも、一番マシな気がする。

そう、シエラ、貴方が最後の砦よ。

が、がんばろう。




◇◇◇◇◇





私、エストは二人の手際に舌を巻いた。


「大したものだな」


お料理をメインで作っているのはユフィだ。


オープンに展開したサーチの画面が見える。

項目がやたら細かい。


塩味。アミノ酸値。うま味成分量。甘み。辛み。苦み。

等々。


こんなに情報管理する必要ないだろうに。


「我が家ではこれが普通ですのでー」


野菜の煮え方一つすら管理して料理している。


サーチにタイムテーブルを設けて進行度合いを完全に時間管理している。

まるで機械式時計の様な正確さだ。


理論上、完璧なレシピで完璧な料理を作るのがユノウス流らしい。

凄いものだ。


一方のユリアさま。


「甘くなーれ♪美味しくなーれ♪」


こっちは野菜の糖度を上げたりと言ったパラメーター調整をしている。

食材を魔改造中だ。


肉の熟成もやっている。

どんどん食材が最適化されて、美味しくなって行くのが分かる。

分かるが。


なんか食べるの怖いな。うん。


究極の食材を得て、至高の料理法で作るカレー。

想像もつかないな。

これはもう逆にカレーなのが勿体ないぐらいだ。


私とカリンは食材を切ったり土鍋ご飯の様子を見たりしているがほぼ戦力外だし。


いや、一応、私も料理は作れるが。


「それにしてもこのガスコンロというのは便利だな」


天然ガスの採取はまだ試験段階で、ここに入っているものはコスト度外視の実験品らしい。


ほかにも金属製のレバーを上げれば、水が出る蛇口。

スイッチ一つで付く電灯なる物。


見たこともない設備がそろっている。


「来て良かった」


エストはここを選んだ自分の目に狂いがなかったと確信して頷いた。





◇◇◇◇◇






「あああ!!土鍋から黒い煙が!?」


「あ、あの、カレーの水気がなくなりました」


「へんなにおい!」


「さ、サラダだけでも死守しないと!!」





◇◇◇◇◇







結果は惨敗でした。


あのね。

ご飯って奴が黒くて堅くてじゃりじゃりするし、カレーはもうなんか半固形の何かになってるし、苦いし、そのくせ、野菜が生煮えでとっても堅いんだよ。


「お、おかしいね。レシピ通りにつくったのに」


スプーンが一口で止まってるシエラが呟いた。


「そうだね。レシピが間違っているんだよ」


私はサラダを口にしながら頷いた。


うぅ。


誰だよ。

ドレッシングの塩と砂糖を間違えたのは。


はい、私です。


「ごめんなさい。ぐんじんさん。ごめんなさい」


なんか、ミーナは一口食った後に暗い顔でぶつぶつ呟いている。

だから怖いって。


その横でミルカが苦しそうな顔でカレーのような物体を必死に食べていた。


「ミルカ。おなか下すからやめな」


たべちゃだめ。

しかし、ミルカは苦しそうな顔で食べ続ける。


「うぅ、ごはんをのこしたらみんなにわるいんだよ。のうかやアリシスたちがいっしょうけんめんつくってくれたんだよ」


そういって食べ進めるミルカ。


うぅ、ごめん。

なんか、この子が一番がんばってるね。


しかし、ミルカは半分を食べたところで皿に顔を突っ込んでフリーズした。


「た、たいへん!!」


「ミルカちゃん!!」


私たちが慌ててミルカを引き起こすと同時に魔法の詠唱が聞こえた。


「リフレッシュ」


「ほぇ?」


発動させたのはユフィだ。


「なんでカレーで状態:毒に」


サーチで確認したのか。

え”、状態:毒??


「何を作ったらそうなるのかしら?」


し、しらないわよ。

わ、私が犯人じゃないわ。


ち、違うの!故意性はないの!事故なの!過失なの!!


「うんこクッキーに続いて、うんこカレーとは、どんだけうんこ好きなんですか」


「うんこうんこって言ってるのはユフィでしょ!私はただの料理下手よ!」


「ただの?」


な、なによ。


ち、ちょっと、今回は毒になっただけじゃない。

うぅ、こ、今回はみんなで作ったんだから。


うぅ。


しょんぼりしている私たちにユフィがカレーの盛られた皿を差し出した。


「ふ、これを食って己が至らなさを実感するが良いのです」


「え、良いの?」


「はい、余計に作りましたし」


「ありがとう!!」


私たちはユフィたちの作ったカレー口にした。


・・・。


あれ?なんでだろう。


なみだがでてくるよ。


「おいしい!おいしいよ!」


「本当です!凄いです!!」


「・・・チートだわ」


私もシエラと同意見。

これは無理だわ。


「ふふ、情けを掛けるのも今日までなのです。次から兄さまにそぐわない女ははらわた引きずり出して海に捨てるです。クビですの。クビ」


「ユフィちゃん、照れてるのね♪可愛い♪」


「この腐れユリア!黙るです!!」


あれ?

もしかして、この二人。仲が良い??


じゃれ合う二人を眺めながら私はカレーを食べ進めた。


おかわりほしいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ