ただし、魔法はようじょからでる
※7月12日改訂
僕はほくほく顔でそれを磨いていた。
うん、良い買い物だった♪
「なんですか、それ?」
「アルマグランツ」
「へ?」
目を点にしたエヴァンの前で僕は生まれたての結晶体を天にかざした。
まぁ、なんて素敵♪
「なんでそんなモノがここに」
「実はライオットと交渉してもらってきた」
今日は朝からずっと王都の方に出向いていたのだ。
もちろん、これをゲットする為に。
エヴァンが焦った声を上げた。
「ど、どんな交渉したんですが!?」
「竜の牙で作った剣を竜骸と魔唱の二層構造にして作ったアルマグランツの外見のスーパーコピー品と変えてもらった。要するに雷撃7、神滅発現付与のコピー剣だな」
外見はまったく一緒だよ。
誰にもバレないって、うん。
「竜の死体ってそんなもの漁って来たんですか。捨てなさいよ」
「馬鹿やろう!!転んでも只で起きたら貧乏人だぞ!!」
くく、まさか竜の牙を加工して、ラグナの能力を引き出す増幅器を作りだすなんて神様もびっくりだろう。
まぁ、新たに修得した魔王神魔法がなきゃ、加工できなかったけど。
素じゃ、ラグナ使えなかったし。
つか、ラグナとか、もうユキアの特殊能力なんじゃないの?
あいつの精神力は異常だし。
でも、これで増幅器付きなら、ある程度の練度のハジャ持ちなら、神殺しの力を解放出来るようになったし、連中の焦る顔が目に浮かぶな。
「国宝をそんな姿に」
「お前、交換に使ったのは、神を殺せし咎人○剣だぞ!ラグナロクだぞ!ちょっと、セラフィッ○ゲートに逝ってこいや」
交換レートが一緒だと思うなよ!
まぁ、それでも、たぶん僕が得したんですけど。
「何を言ってるのですか?」
こっちの話。
しかし、その価値は在ったね。
そう言わざるを得ない。
「お前さぁ。神遺物って何だと思う?」
「神が人に下賜したものですね」
まぁ、それはそうなんだが。
「神遺物には実は二種類あってだな。一つは今も現存する神の神唱結晶の一部。もう一つは」
エヴァンは僕の言葉に頷いた。
「もう一つは?」
「神竜戦争時代に死んだ神の神核の一部だ」
神竜戦争。
聖魔戦争の前日譚。旧神と竜が殺しあった時代のものだ。
あの時代に竜にやられた神の神唱結晶の核。
それを使った神遺物が世界には転がっている。
もっともラグナが使えない以上、加工したわけでは無く、どこかしらに使用しているだけだが。
灰を刀身に混ぜたのか、そのままを宝珠の様に取り付けたのか。
魔剣の強力な魔力装置の一部に使われている。
僕はさっそく結晶体の中の魔法式を活性化させた。
するとアルマグランツのマテリアが強烈な光を放った。
「おいでませー、神様」
「な!?」
強烈な光が執務室に溢れる。
そして。
中から、神々しいお姿の・・・。
「ふぇぇ」
「・・・」
「ふぇふぇぇ」
「あれ?」
「なんか幼女が出ましたが」
どう言うことだよ。
おっさんか、最悪、女神でも
運命3柱のベルダンディーみたいなのが出てくると思ったのに!?
なんで幼女。
また。
幼女ぉ・・・。
「くそ!!結晶が小さすぎたか!!」
「はぁ、またロリですか・・・」
呆れるなよ。
僕の性癖って訳じゃないぞ!?
僕だって何でも言うことを聞いてくれるおっぱいボインのおねぇさんがそろそろ一人ぐらいとか考えて!
こ、こんなはずでは!
神核を使って作った自分だけの神と契約するという恐るべき計画が!
「これなんですか?」
「雷神トール。神竜戦争時代に消滅した最強の雷神」
「の幼女ですか」
の幼女だな。
え、てか、トールってごついおっさんじゃないの!?
「ふぇぇ、ここ、どこぉ?おうちにかえりたいよ。うわぁぁあぁぁあ」
ああ、神が泣き出した。
どうしよう。
◇◇◇◇◇
「くそ、チートで一気に最強になる僕の計画が!」
「素直にレベルを上げれば良いじゃないですか」
ふざけんな。
まずはトリセツを読んで、いかに裏技を探すかが駄ゲーマーの腕の見せどころなんだぞ!
如何に楽して勝つか。
それが今、問われているんだ!!
「なんか負けた気がするじゃん!!まぁ、レベルも並行して上げるけど」
「ただの意地っ張りですね」
うるさい。
まぁ、そうなんだけど。
しかし、この調子で神を増やしても、全部女だったらどうだよ。
「あかん、神様女体化もののブラウザーゲームになってしまぅ!!」
しかも全部、幼女とか。
変態紳士垂涎ですな。
需要がニッチ過ぎる!最低な運営だな!
「あのー、私に異世界人だってバレてから意味不明な発言が多すぎですよ。もう少し考えて話してくださいませんか?」
「だって、他の奴に言ったら変人だと思われるだろ!」
「今までも十分に変人でしたよね!?」
変人と電波は違うんだ。
そこは譲ってはいけない一線なんだよ。
「あめ、おいちぃ」
「おお、飴で機嫌直す神様っておもしろいな!」
「で、どうするんですか。それ?」
そう尋ねられて僕は笑った。
「おお、実は」
「ふぇ?」
「これ発電所にしようと思って」
エヴァンがさすがに青筋を立てて言った。
「やめなさい!!」
◇◇◇◇◇
何度目かの戦略会議。
僕の提案は全会一致で却下された。
「くそ、良い案だと思ったのになぁ。幼女発電」
自家発電じゃないからな。
そして電気!科学のTIKARA!!
「神さま拾ってきてやることが鬼畜過ぎます」
「私も、さすがにどうかと」
まさか、ユシャン先生にまで止められるとは!!
だってコスト0発電だよ!
超高出力だよ!
夢のエコエネルギーだよ!!この幼女発電!!
「そもそも、それ、ただの魔唱結晶で十分でしょ」
う。
そうなんだけどー。
たしかに、神唱結晶体を使ってやる事じゃないとは思うけど。
「いや、でも、だからこそ、神様を使うからおもしろいんだろ!」
それがロマンだろ。
「最近、奇行が目立ちますがなんですか。ストレスですか?」
はい。
くそ、僕は焦っているのか。
ま、まだだ。
大丈夫。まだ慌てる時間じゃない!!
「とにかく、許可が降りれば、その瞬間から竜の存在や生体の教育を教導隊するように指示しました。よろしいですね?」
「え?…ああ、やってくれ」
なんだよ。てめぇ、まじめかよ。
「本気で、この軍での竜殺しに挑戦するんですね」
エヴァンのその言葉に。
僕は頷いた。
「ああ、そのつもりだ」
「情報を開示する意図は?」
竜や世界の滅亡について、この世界の人間は知らなすぎる。
それは人々が絶望しないために聖団が隠しているのだが。
いや、違うか。
原因が神だと思われないため。
信仰を残すため。
もし、神が原因で世界が滅びるなら、神を悪だと思う人間が増えたら。
神の力は弱まるのだ。
魔法は信仰の総量が多いほど強い力を保てる。
だから、世界は無知で保たれている。
まぁ、お約束ですな。
「情報を管理することで世界を盲目的に管理しやすくするか」
「聖団は危険ですね」
まぁ、やっかいな連中ではある。
能力的にも、思想的にも。
ただ最大にやっかいな部分は間違いなく。
悪気がないところだな。うん。
「連中を無駄に敵に回す必要は無いさ」
彼らと一戦交える力は今のところ、べオルグ領にはない。
今は黙って従う方がお利口さんだ。
「べオルグ領内での限定的な情報公開について、ユリアに頼んで聖団幹部と交渉するつもりだ」
もちろん、黙ってやっちゃっても良いんだけどね。後が怖すぎ。
やはり、一度は交渉しておく事が大事なのだ。
会合でお互いの領分を弁えることもできるし、相手に要らん警戒心を持たれる心配もなくなる。
まぁ、仲間面しておく方が良いだろう。
と、お互い思える関係になるのがベストなのだ。
「こう考えて見ると便利ですね。彼女」
「・・・あんまり貸しを作りたくないけど」
だって、目に見える地雷じゃん。
後で何を要求されるか。
キスやデートで済むなら安いと考えよう。
そのぐらいで済むよね?
だ、大丈夫だよね?
超怖い。
「情報の開示。必要な事ですか?」
「問題意識の共有は組織に絶対必要だぞ」
そこら辺はリアル封建社会の人間には分からないかもしれないが。
まずは聖団と交渉を終えて、それからだな。
「これからべオルグ軍を竜を克服するための軍に変える」
悩ましい話だが。
根本的にこの世界の人間は間違っている。
竜が倒せるとか殺せるとか、どうでも良いじゃん。
殺せるとか殺せないとか、数が減るか減らないかだけじゃん。
じゃ、僕が寿命で死んだ後に竜が湧いたらどうするの?
また異世界人召喚?
頭悪いよね。
正直、この手のことに言えることだが。
例えば、魔王と言う存在で滅びそうな世界があるなら、ただ魔王を倒すなんて一時的な治療に過ぎない。
死にそうな人間にヒールをかけて延命する程度だ。
基本的に魔王なんてスライムじゃんと言えるぐらいに魔王に対して世界が耐性を持つことが根治と言えるのだ。
まぁ、自分がエターナル化して、永遠に魔王と戦い続けるとか言う脳筋族はほうっておこう。
それが出来るならやれば、良いさ。勝手にどうぞ。
僕にそういう期待をする奴も含めてほうっておく。
人間で余裕を持って竜に対処する方法を確立する。
それが大事なんだよ。
結局。
この世界が竜を克服しないと意味が無いのだ。
竜なんて怖くない。
それが大事なのだ。
べオルグ軍をその試金石にする。
「やるのですね」
「ああ、最終目的が変わった以上、組織のデザインも変えないとな」
まったく。
予定狂いまくりだぜ。
こっちはチートで良い気分しながら、良い思いして後は適当って感じだったのによぉ。
「元々は最低限の軍事力と強力な制圧力を有する平和維持部隊にしようと思ってたんだがな。こうなった以上、がちで尖った軍事力を持った組織にしないとな」
「出来ますか?」
僕は笑った。
「うーん。正直、大したこと無かったぜ。幼竜ぐらいなら軽く克服できるんじゃないかな。まぁ、データが足らん」
この世界なら。
科学に加えて魔法まで使える。
道具は十分だ。あとは使いようだな。
「科学者が必要だな」
「魔法使いもですね」
まずは人を集めよう。
それからだ。
◇◇◇◇◇
次の日。
僕は訓練場に来ていた。
早速、手に入れた魔法を発動させる。
――― 神雷轟槌
凄まじい雷轟が世界を灼いた。
まさに神雷。
「どうだ!この僕の専属魔法!」
「せ、専属魔法?」
見学していたエヴァンがちょっと驚いた顔をしている。
つまり、そういうことだ。
専属契約を結んだトールの魔法式。
自分だけの魔法。
僕だけの独占!
「はは、見ろよ。すげぇ威力だわ」
標的に用意したルーンティタンが消し炭だぜ。
相当なジュール数だろ。
「専属だから祝福の効果もすごいんだぜ!」
予想以上だぜ、幼女パワー。
まったく、幼女は最高だな!
このまま、幼女ゲットだぜ!繰り返して、幼女コンプして
幼女マスターになったら、そしたら・・・。
そ、そんなおとなには、なりたくないお(白目)
なんだよ。幼女マスターって。
ふっ、おかしなスキルマスタリーを獲得したものだな(遠目)
「はぁ、どんだけ強くなりたいんですか」
え。
ん。んー。
「・・・あ、いや、まぁ、これでも雑魚竜一匹倒せないと思うけど」
あれ?
幼女、大した事無かった。
「・・・いきなりテンション下げてきましたね」
僕は気落ちする心を奮い起こすと言った。
「と、とにかく、こうやって大精霊復活のOTUKAIをしていけば、尻尾的最強っぽい感じでそこそこいける、いけるって寸法よ!!」
「それでしばらくは自分だけの神様集めですか」
「おうよ」
そう、僕は諸々の計画と並行して、神遺物蒐集(死んでるほう)を計画していた。
やっぱ、チートに強くなんねぇとね。
「しかし、やっている事は神の死体漁りですよね」
あはは。身も蓋もないこと言うなよ。
「これがマンガなら、神々の死霊魔術師ってタイトルに変わるな!」
中二病的にかっこいい!!
タイトルに偽りあり!だけど。
「ああ、なるほど。 ただし、幼女に限る ですね」
「・・・・・・」
……神々の死霊魔術師。
確かに、タイトルに偽りなしだ……。




