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転生したった   作者: 空乃無志
第二章 王立学院編
27/98

急成長

※7月12日改訂

3回目のダンジョン実習。

今日は引率がエストではなく、マイア先生に替わった。


「はいはいー、みんな、がんばってー」


3階。

ここはダンジョン攻略序盤の山場と言われている。


理由は妖魔族が出てくるからだ。


容姿的に人型である相手に対する忌避感と武器を使ってくる知性を持った相手への恐怖心からしばらくは2階に出戻りを繰り返し、3階に挑戦する日々になる。


ここで安定的に攻略出来れば、一定の成長と言えるだろう。


攻略を再開して驚いた。


「ファイア!!」


アリシスが不完全ながら僕の使った目潰しの炎を使って援護をしている。


生み出された火が3つ。的確にゴブリンの眼球を炙った。


さらに前線での連携も出来てきている。


「シエラがフォースか」


さっきから前線の打ちもらしをフォースで援護している。

まだまだ圧縮は物足りないが十分通用する。


どうやらみんな、それぞれ成長してるみたいだな。


「よし、次からしばらくシエラはバックに下がって」


「え、うん」


シエラが頷いたのを見てから僕は言った。


「それで僕が前に出る」


「ちょっと!コマンドリーダーが前に出るの?」


次のゴブリンは5体。

ちょうど良い。


パーティに不安が走っているのが分かる。僕が後方に控えて居ないことに恐怖感があるのだろう。


「サモン」


僕は両手に剣を呼び出すと駆けだした。


「フォース・オーラ」


駆けだした僕がまず最初の一体を一刀に斬り捨てる。

続いてニ体目の踵を切断。

さらに三体目のゴブリンの武器を持った腕を切り飛ばす。


4体目の攻撃をいなすとカウンターで一撃。

5体目の片足を返す刃で下段から斬る。


一連の連舞でここまで。


そこで振り返ると2体目と3体目を仲間が処理していた。

4体目、5体目も同様に処理する。


「貴公の剣は何だ?」


驚愕した顔でカレンが呟いている。


「さてね、次に行くぞ」


ダンジョンの曲がり角を抜けると新しい魔物が出現した。


次は6体。

そのうち一体が帽子をかぶったゴブリンだった。


LV12 ゴブリンシャーマン


イレギュラーモンスターか。


「フォース・オーラ」


僕が駆け出すとシャーマンが声を上げた。


「※※※!!」


意外に詠唱が速い!

考えて見ると魔法詠唱をするモンスターはあの化身以来初めてだ。


呪の効果はゴブリンに対するアシストか。


問題ではない。

僕は初撃でまず一体を斬り捨てると変わる次の敵の首を掻き斬った。


「※※!!」


ゴブリン・シャーマンが炎の魔法を放つ。

僕はそれをハジャで叩き斬る。


「※※!?」


驚愕の顔で何かを叫んだシャーマンまで加速すると両手に持った剣を突き立てた。


「ファイア!!」


残り3体のゴブリンに対してアリシスの炎の目潰しが炸裂する。


「いくぞ!!」


シェイドの剣がゴブリンを打つ。

そこにカリンとシエラが追撃を加える。


「よし!」


集中攻撃でゴブリンが崩れる。

これで残り2体。


「ファイア!!」


今度は全身を焼く威力重視のファイアだ。

アリシスの魔法が決まって残りは1体。


「おりゃ!」


残りを三人が集中で攻撃する。

うん。上出来だ。


「あらー、上手に戦うのねぇ」


先生はイレギュラーモンスターの出現にも特に手出ししない。

必要ないと察しているのだろう。


「シエラ。精神力がすくなくなったら前に出てくれ。僕が後衛に下がるから」


「はい」


その後も複数のフォーメンションを試しながら戦う。

さすがにみんな、戦いの要領が分かってきたかな。


「何となく戦い方分かったかも」


「へー、さすがだな、シェイド」


僕の賞賛の言葉に何故かシェイドは顔を紅潮させて言った。


「からかうなよ。つまり、さぁ。足を止めたり、牽制したり、盾を作ったりして相手を分断して、一体ずつ潰して行くんだよな?」


それが分かれば十分だ。


「うん、どんな戦術でもそれが基本だ」


「そっかぁ。まぁ、でも俺ってガードとしてはまだまだだよなぁ」


「そう思う?」


「うん、速さで相手を分断できるカリンとは違うし」


「ヘイトを集める役は難しいよ。しばらくは攻撃に専念すれば良い」


「わ、私も攻撃を覚えた方が良いかな?」


「そうだね。後衛は補助と牽制、攻撃に回復、色々立ち回れる方が良いと思うよ」


みんな色々考えてるんだなぁ。


「ユノウス殿。お願いしたいことがあるのだが」


「頼み?なんだい?」


神妙な顔でカリンが言った。


「今度時間があるときで良い。貴公の技を教えてくれ」


「技?」


「そう、フォースを使った強化魔法。できれば、前線の私とシェイドに」


へー、よく見ているな。

僕の使っている特殊な魔法式に気づくなんて。


「良いよ。君に内燃強化式、シェイドに外部強化式を教えよう」


「内燃と外部?」


「一つは騎士魔法と呼ばれている魔法式だよ」


「ちょっと!私には何かないの!?」


「え?アリシスに?」


「そ、そうよ!私にも必殺技を教えなさい!」


必殺技ってなんだよ。

こいつにあんまり物騒な魔法を教えるのは気が引けるんだが。


「あ、あの私にも教えてください」


え、シエラも?うーん。そうだな。

どうしたものか。


「良いよ、じゃ、そのうちね」


うわぁ、なんか物凄く面倒なことになったなぁ。




◇◇◇◇◇





「と、言うわけで今すぐ教えなさいよ!」


放課後。

何故か、約束が変わっていた。


「おい、今日とは言ってないだろ」


そして、明日とも言ってないぞ。

つまり、こっちがその気なれば、それはえいえ・・・。


「何よ。ほら、善は急げって言うでしょ!?」


「確かに今日教われば週末に練習もできるし、来週には成果を試せるな」


カリンも乗り気らしい。

そんなにすぐにものになるのかな?

それは疑問だぞ・・・。


「お願いします!師匠!」


師匠!?

お前まで何を言ってるんだシェイド?


「私も是非」


うーん、シエラまで。

・・・。はぁ、めんどくさいが仕方ない。


「分かったよ。それじゃ、やろうか」




◇◇◇◇◇





「と言うわけで、兄様に代わり、不肖の妹であるこのユフィがお前ら雑魚の魔法を見てやるです!」


「な、なんでよ!?」


「どうしてですか?!」


私とシエラ、両方とも切れた声を上げた。


「ふふん、この程度の些事で、兄様のお手を煩わせる訳にはいきませんのです。もとより近接戦闘士と遠距離攻撃手の両方を教えるのは時間の無駄なのです!」


ということはカリンたちの方にユノの奴は行ったの!?

なんて薄情な奴!!


「くっ、お前じゃ話にならないわ!」


「そうです!ユノさんを出してください!」


ユフィは不敵に笑うと構えた。


「このユフィの目の黒いうちは兄様に近づく女は一撃必殺!」


何を言っているの?

そして、どこの世界に生きていると言うの!?


「と言うのは冗談なのです。兄様に頼まれている以上、真面目に教えるのです」


「そ、そう」


本当、不安になるわ、この妹。


「おのれ、兄様の頼みがなければ、一撃必殺だったというのに!」


「アリシスさん!逃げましょう!」


怯えきったシエラの提案に私は待ったをかけた。


「だ、大丈夫よ!きっと冗談だから!!」


「そうです。冗談なのも今のうちです」


に、逃げた方が良いかしら。


「では、レッスンです。魔法とは何でしょう?」


「え?」


何を聞いてくるかと思えばそんなことを。


「質問に答えるのです!このぐず共!」


「答える気なくすわよ!やめなさいよ!そういうの!」


「えー、じゃあ、げすども」


妹はかなりテンションを下げてそう言った。


「何で言い直してもそれなの!?」


そして、ゲスが愚図よりテンション下がる理由はなんなの?

意味が分からないわ。


「答える気が無いようですね。魔法とはつまり魔素が精神に感応して変化し現象を引き起こすものなのです」


言い方が若干おかしいが格段、変でも無い答えだ。


「だ、だから何よ?」


ユフィはやれやれと首を振った。


「魔法の基礎です。それが分かっていれば、くずの魔法もでくの魔法ぐらいには成長するでしょう」


「何を言っているの!?」


「お前らの魔法の強化をするために言っているのです!良いですか!魔力や精神力は反復練習で鍛えられても、魔法式の構築は意識改革をしなければ上手くはならないのです!」


え?何?


「では、次の設問です。魔法式とは何ですか?」


「え?呪文を唱えたら発現するものでしょ?」


「どうやって発現するのです?」


「え?呪文を唱えたら勝手に・・・」


ユフィはやれやれと首を振った。


「それは違います。魔素は起動ワードである呪文を唱えることで受動体パッシブモードになり、唱えた人間の脳内の情報を読みとることで魔法式を構築するのです」


「え?」


「簡単に言えば、詠唱呪文とは人間の脳内情報を魔素が受け取る為の命令ですの。こういう事を読みとって魔法式にしなさいよという最初の命令ですの。


この世界の魂は3段のレイヤー構造になっています。


魄の根源たる無意識の集合体、コレクティブ・アンコンシャスによる起源世界スーパーイド


私たちがいる現実の世界エゴイド


集団の共通理性が生んだ調律的懲罰的集合認識体、信仰体、偶像体である神の世界スーパーエゴ


魔素とは基本的にスーパーエゴを通さないと利用できないように管理がなされているのです。

そして、魔法化した魔素は私たちの脳内構築エゴを読みとって魔法となるのです。これは理性魔法式と言います。

逆に私の原始認識イドから魔素にアクセスし、概念存在スーパーイドに感応して発現する魔法を概念魔法式というのですが、まぁ、ハジャの使えないお前たちには関係ないのですね」


「え?何を言ってるの?魔法は神様の奇跡でしょ」


私のその答えをユフィは鼻で笑った。


「魔法とは、神と私たちが呼ぶ悪魔、あくの法なのです。世界に対する人間の身勝手極まりない、ご都合主義の塊なのです」


ふ、不敬すぎる。

神様をなんだと思っているか?


「まぁ、世界構造の話など理解せずとも良いのです。魔法式とは人間が想像するもの、イメージなのです。このイメージを強化すれば、魔法の効率化や連動化が可能になるのです」


「それで?」


「魔法の効率的具現化とはお前たちの認識力の強化に他ならないのです。ウォータ・フォース」


二連魔法式。

生み出された拳大の水球は揺れるわけでも無くそこに完璧な球体として浮かんでいる。


見た目はシンプルだが、正直、舌を巻く様な魔法の制御だ。

しかも、二連魔法式を完璧に操っている。


「これが何か正確に説明できますか?」


「何って水でしょ?」


「ええ、他には?」


「えーと、球体?」


「どの程度球体ですか?」


「な、何よ!その質問に何の意味があるの!?」


「まず、使用された水の量は523g、お前からの距離が最短155、02cm。私から31、01cm。水は完全な純水。完全な球体。力場による圧縮力が上面1、025Paで安定」


え?何それ?そんなにすらすらとあり得ない。

そんなことわかるわけがない。


「魔法制御とは知力の値が影響を与えるのです。これから私が、兄様とユシャン先生が開発した空間認識、状態認識、科学知識拡張、想像力強化、理性制御の総合トレーニング・プログラムをお前たちに施すのです」


ユフィの言葉に私はシエラと顔を見合わせた。




◇◇◇◇◇





「だいぶ出来るようになったね」


総合的な魔法強化が必要なシエラたちと違ってこっちは気が楽だ。

イメージを固定化させて反復練習あるのみ。


「ありがとう!師匠」


「実に有意義でした。感謝します。近接戦闘士でもフォースは大事ですね」


ほくほく顔の二人と対照的に、全身水浸しで所々焦げたアリシスとシエラは虚ろな顔で立っていた。


何があった。


「ユフィ?どうしたの?」


「兄様!調教は完璧です!」


「意味がわからん」


何だよ、調教って。

物騒だな、おい・・・。


「ま、まけないもん」


「かえりたいよぉ・・・」


二人の反応が不自然すぎる。

・・・聞くのはやめておこう。




◇◇◇◇◇





週末日。

朝から土木作業に精を出していると、とある人物が訪ねて来た。


「やぁ、来たよ」


「ユシャン先生」


僕は顔を上げると挨拶した。


「君が私に研究室を提供してくれるというのでな」


「ええ、そのかわり事業に協力して貰いますけど」


その言葉にユシャンは笑った。


「出先の家庭教師より安定するなら歓迎しよう」


「ここの棟の三階を使ってください」


「おお、広いな!これなら大がかりな研究機材を置いても余る」


「この棟は居住棟の予定ですから一階に店舗を入れますけど、2階には住んで貰って良いですよ」


「一階分、丸々?ちょっと怖いな。まぁ、それだけの労働があると言うことか」


「そうですね。地下室に野菜や肉を収納する榁を作る予定なんですか、そこの氷の管理を時々。あとは研究をお願いするかもしれません」


「もっと色々頼んでも良いぞ」


「実のところ、防犯上誰かに住んで貰うのが一番のメリットでして」


「簡単な結界魔法をかけたまえ。それの維持も私がやろうじゃないか」


「住み込みの従業員も雇うつもりです。法の神の契約書を作成中です」


そこでユシャンは周囲を見渡すと言った。

すでに2棟目が完成間近だ。


「随分と建てるんだな。儲かる見込みはあるのか?」


「この国最大の聖教エシャメンの聖堂がこの先にあるんですよ。ここに道を造れば、新しい動線ができますよね」


「あそこに崖があるが」


先生が指した方を見て僕は笑った。


「あそこの土地も買収済みです。仕上げにそこに階段を作るつもりです」


崖の下はちょっとした広場になっている。

道を繋げるのに実に具合が良い。


「なるほど。確かに集客性の非常に高い聖堂への新たな経路パスを作って人を集めるのか」


西地区の人間にとって、現在の聖堂への道が遠回りなのを知っている人間にしか思いつかないだろう。

僕は入念な下調べでいくつかの候補からここにこの導線を作る計画を立てていた。


「ええ、そうです。ちなみにこの規模の建物を全部で5棟ほど建てて、2棟は貸テナントの予定です」


「貸す相手は?」


「商人ギルドで当たりをつけてあります。野菜の販路に強い商人と家畜や乳牛に強い商人を一人ずつ」


「商売相手としても妥当だな。口は堅いのか?」


「ええ、計画も話してあります。まぁ、半信半疑でしたけど」


「商売には疎いが結構良いんじゃないか?私にはそう思えるな」


「ありがとうございます」


「で、いつから住んで良いんだ?」


「まだ居住スペースの整備が住んでいませんがいつでも」


「そうかでは早速、荷物をここに運ぶ準備にとりかかろう!」


気が早いな。


「まだ井戸も掘ってないんですけど」


「水くらい自分でつくれるさ」


そう闊達に笑ってユシャンは去っていった。




◇◇◇◇◇





4度目のダンジョン実習。

あれから放課後には軽く特訓をしてから帰るようにしている。


―― 力場盾フォース・シールド


シェイドがぎこちないながらも形になった力場でゴブリンの攻撃を受け止める。


―― 輝力フォース・オーラ


カリンもさらに加速し、攻撃力が跳ね上がった。

攻撃や防御への力場の展開方法をすでに自分のものにしつつある。

すごい才能だ。


「おりゃ!」


「はっ」


この二人の動きは順当。

問題は残り、二人だ。


「「ファイア」」


ゴブリンの目を焼くアリシスとシエラ。

息ぴったり。流れるように次の呪文を唱える。


―― 水撃ウォータ・フォース


シエラの魔法でゴブリンの顔を覆うように水の玉が結実する。


「ごぉっぼぼっ」


ゴブリンが苦しそうに動きを止める。

何度も手を顔に当てるが水の玉はそんなことでは取れない。


―― 炎撃ファイア・フォース


こっちは熱量を収束させてまず足を焼き切る。

どちらもいつの間にやら二連式を使いこなしている。


―― ファイア


アリシスが炎で止めを刺す。

シエラの方のゴブリンは苦しんだ挙げ句に動かなくなった。

溺死かよ。


「おい、次来たぞ!」


角を曲がって来たのはゴブリンが五体。


「任せて!行くよ、シエラ!」


「はい!」


――― 爆鳴気ウォータ・ブレイク

―― 炎撃ファイア・フォース!!


え、ちょっと待て!?


爆鳴気爆破!?


おいおい、ユフィの奴!何でこんな物騒な魔法を教えてるんだよ!?


猛烈な爆発がゴブリン5体をまとめて消し飛ばす。


「「やったー!」」


二人の手を叩いて喜んでいる。


「すげぇ」「なんだ今のは??」


二人は完全に目を丸くしている。

僕も正直、唖然としていた。


「えーと、何が起こったのかしら??」


「え?さぁ?」


何ってこりゃもう、ねぇ。

完全に覚醒したな、これは。


「どうよ!」


「やりました!ユノさん」


満面の笑みを浮かべる二人。


「あー、そうだね」


「何よ?」


「うん、四階に降りようか・・・」


どうやら、ちょっと皮が剥けすぎたみたいだな。

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