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強面傭兵と願いの奏者 7

 街へと戻り彼が向かった場所は、都市中央に位置する駅前だった。バイクを定位置に止めておくための大型用駐輪場へと向かい停車させると、前払い料金を支払い彼は鍵のみを持ってその場を後にした。午前中に捜索した範囲もだが、都市の中央であれば他の場所への移動手段がある。彼はそう思い、その場に停車させたようだ。


『・・・さてと。 サインナに無理言っちまったようなもんだし、今日中に何かしらの手掛かりくらいは掴まねぇとな。』

 駅前ロータリー周辺の歩道を歩きながら、彼は周囲を見渡していた。 周りには通学を終えた学生達が楽しそうに喋りながら歩いており、目についた喫茶店やファミリーレストランでのお茶をしようと申し出る者もいた。 中には恋人と思われる2人組もちらほら歩いており、心なしか2人の周りの雰囲気が違い華やかなオーラが見え隠れしていた。 何時の間にこんな現象を目の当たりにするようになったのだろうと彼は驚きつつも、肝心の探し人を探すべく歩き出した。

 駅前周辺から路地へと移動した彼は、薄暗い路地裏を気にしながら捜索を開始した。人通りの多い所も含め見れる範囲で全てチェックし、建物の中も見れる範囲で目視確認を取っていた。 しかしそこに居るのは彼と同じ『人』ばかりであり、彼の探している『獣人』の姿は無かった。 それからも彼は飽きる事無く捜索を継続し、今会うべきだと思う虎獣人の姿を懸命に探していた。

すると、



「おらぁあっ!!」

「?」

 捜索範囲を広げようかと考えていた彼の耳に、妙な声が彼の耳に入ってきた。何事かと思い声の聞こえた方角を見てみると、そこには路地を抜けた先の広場に数人の青年達が対峙している光景が広がっていた。 しかしそれくらいならば普通なのだが、彼等は手足をしきりに動かし何やら『魔法』を使っているかのような仕草を取っていたのだ。 人差し指と中指を合わせ宙に文字を描く様な仕草をしているかと思いきや、何かを避けるために体制を低くしつつ前転をする光景。

 彼の目からしたら何の宗教だろうと思う光景であり、時々上げる彼等の声がまた妙な雰囲気を作っていた。

『何をやってるんだ、アイツ等は・・・ ・・・』



「あっ!!」

 異様すぎる光景に呆れながらギラムは前を見ると、そこに居た存在を目にし声を上げた。 彼の見た先にはT字路の路地があり、目の前に立つ自動販売機の隣には彼の探していた虎獣人の姿があったのだ。 よくよく見ると彼は転がっていた灰色のブロックの上に座っており、先日同様自分を見てもらえる存在を探している様だった。しかしあの日と比べると、あまり元気が無いように見えた。

 目的の探し人を見つけると、ギラムは少し安心した様子で一息ついた後、彼の前へと向かって行った。



 するとその行動を見た虎獣人も顔を前へと向け、彼も驚いたような声を上げた。そして、彼の元へと歩いていたギラムはゆっくりと足を止め、彼の事を見た。

「・・・見つけたぜ、グリスン。」

その後彼は静かに口を開き、彼に向けて優しい言葉を口にした。

「どうして・・・ ・・・僕の事、嫌いになっちゃったはずなのに・・・」

彼から向けられた言葉を耳にし、グリスンは驚きながらも目を見てそう呟く事しか出来なかった。自分から持ちかけた交渉は決裂し契約できないと思っていた彼から、自らが探して自分の元へとやって来た。 その上持ちかけられた言葉を聞いて、彼は涙目になる事しか出来ないでいた。 無論そんな行動をする存在を彼は見た事が無く、ギラムはとても優しい目を彼に向けていた。

「嫌いになっちまったら、俺はこんな事はしないさ。 ・・・お前が俺に配慮してくれてたっていうのは、もう十分解ったぜ。」

「ギラム・・・ ・・・ありがとう。」

話をしながら膝を曲げた彼は、グリスンの目の位置でそう言い優しく笑顔を見せた。

もし本当に嫌いであればこんなことはしないし、一生懸命に探そうとはしない。 ましてや自分の事を気にして言葉を選んでいた事を解った今だからこそ、自分はそう言うのだと彼はそう言った。

 その言葉を聞いたグリスンは彼の名前を口にし、俯きながら涙を流し礼を言った。


 そんな彼を目にしたギラムは「それ以上泣くんじゃない」と言いながら、彼の頭を優しく撫でた。まるでそこに居るかのような触り心地が彼の手に伝わり、毛皮の様な柔らかくも頭の骨格が分かる感触だった。その手の温もりを感じてか、グリスンは頑張って涙を拭い流れてくる滴を早く消そうと努力していた。

 本当に自分と同じくらいの年なのだろうかと、ギラムは再度意外そうに彼の事を見つめていた。 しかし彼が本当に優しいと言う事は十分わかった様子で、ギラムはそれ以上何も言わずただただ安心するまで彼の頭を撫でるのだった。周りに妙な目で見られても構わないと思い、彼はその行動をずっと続けるのであった。

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