その9覚醒
カーテンを開けるとそこには平和な町並、いつもと変わらぬ朝が来ると誰もが思っているだろう。しかし、10年の節目…この年に異変が起こり始めようとしていた…エルシフは静かに目覚めた。魔王の血と共に…
「な!なんだこれは!?」
二の腕に浮き出ている血管は黒く、大きく脈を打っていた。頭の中ではたくさんのわけのわからない言語が浮かびあがり、苦痛だった。
20歳になったエルシフはこの日が来るのを待ち望んでいたが、この日が来るまで体格以外毎朝昇る太陽のように何一つ変化がなかった。
エルシフ自身も疑い始めたが、それがついに証明された。
「皆殺しの剣が呼んでいる…デミウルゴスの血が…俺の頭を…」
体格も10年前よりはだいぶ大人らしくなり、今は近くのバーでバイトをしている身分だ。
エルシフは着替え終わるとすぐさま皆殺しの剣のある所に電光石火のごとく向かう。
「剣!無事か!」剣は前と同じく静かに木の下にたたずんでいた。
10年という年月を感じさせず、淡く鈍い光を放っていた。「ついに目覚めたかエルシフ。もう魔神マサカァになる機会はなくなるな…」
あの時エルシフは幼かった。
それゆえ剣の方が意識が強いため、魔神マサカァになったのだ。
エルシフは剣の柄をそっと掴み、天に掲げた。「デミウルゴス!あんたのやることはわかっている!まずは復活したラーマを再び倒しに行く!世界を救うための魔王なんて聞いた事ないが…それが使命だ!」
心に満ち溢れる魂の叫びがエルシフをいざなう。
スゥーと気が抜けた瞬間エルシフは暗い闇にいた。目の前に現れたのは魔王デミウルゴスだ。
初めて逢うのだが、もうすでに知っていた。
夢のお告げに何度も姿が現れているからだ。
オレンジの縮れた短い髪に黒い暗黒服。目付は鋭く、思った以上に若い。
「エルシフよ。今のままではラーマには勝てんだろう…だがワシの特訓を受ければ話は別じゃ。ここは闇の間…時は進んでおらん…」
こうしてデミウルゴス直々の武闘の特訓が始まった。