その5臆病
決戦の火蓋がきっておとされた。「エルシフ。俺にまかせろ。ブチ殺したらすぐに元に戻ってやる!」
エルシフの額に冷汗が落ちる。
たった一日でこんなたくさんの出来事で困惑しているのもあるが、ラーマの殺気がエルシフを臆病にさせる。
「こんなやつ無理だよぉ…俺なんかゲラダで精一杯なのにぃ…」
「俺に任せろ!必ず倒す!」
2人(エルシフと剣)のやり取りに静かにラーマが口を挟む。
「その剣を拾ってしまって残念だったねぇ。私と同じように支配者が死ぬと、宿った人間も死ぬんだよ…見たところ普通の子供じゃないか。死にたくないのなら剣を落としなさい。」
エルシフの手は震え、恐怖で涙ぐんでいた。
「うぅぅ…なんだってこんなことに…首を突っ込まなきゃよかった…」
その時、エルシフの体は光を放ち、湯気を吹き出した。
現れたのはやはり魔神マサカァ。この剣の真の姿だ。銀髪に赤い眼、身長は190もある大きな体つきだ。
銀髪に良く似合う銀のコートを着こなし、右手にはあの皆殺しの剣がある。
「ラーマ!借りを返すぜ。原形がなくなるまでぶちのめしてやる!!」
「魔神マサカァか…無駄な事を…デミウルゴスの二の舞だな。私のこの愛槍ペイントゥースで再び葬ってあげます!」エルシフが黒い剣だと思ってたのはなんと10枚ほどの刃がついた槍だった。
槍の先は丸くなっており、そのまわりに刃が付いている。
「いくぞ!はぁっ!!」
マサカァはラーマに向かって、皆殺しの剣で突進の突きを放った。
だが、あっさり避けられ姿が消える。
そして…マサカァの背中に青色の鮮血が流れる。
あの槍はそうとう鋭いらしく、背中がぱっくり切れる。
「ちぃ!やってくれるっ!」
しかしまたラーマの姿は見えず、今度は横腹に突きをくらう。
「フフフ…まさかこの程度だとは。失望ですよ。これならデミウルゴスの方が数倍ましですね。」
とラーマが言った次の瞬間!ラーマの体から無数の傷と赤い鮮血がこぼれる。
何があったのか全くわからないほどの早業だ。
「殺人藝蹈だ。お前に負けるわけねぇよ。」
凄まじい気だ。森の木々が激しく揺れわたる。