その4静寂
黒く、深くかぶった兜からでる異様な気…どこかの国の魔王でも不思議ではない。
大きな黒い剣を手に持ち、目のあたりは兜で見えず、胸には銀のペンダントがある。
「この子が次期魔王?随分小さいんだな…マサカァ。」
英雄ラーマはそう言うと、剣は答えた。
「貴様…あの時の借り…きっちり返すぞ!」
「そんな子供で何ができる?ましてやデミウルゴスでさえも敵わなかったこの私を。そんな貧弱な子供で勝てると思っているのか?」「黙れ!!今のお前に負けるわけがない!死神に魂を売ったお前に!」
衝撃的だった。世界を救った英雄は、死神に魂を売ったのだ。通常死神はこの世界にいないのだが、なんらかの方法で死神に魂を売ったのだろう。
魂を売ると無限の力が手に入るが、その代償も大きい。
その死神が消滅すると一緒に消滅してしまい、この世の存在すら忘れさられてしまう。「確かに私は魂を売った…だが無限の力を手に入れた!この力で世界を支配するのだ!」
なんだか話がごちゃごちゃになっている。
世界を救った英雄は世界征服を企み、世界を征服しようとした剣はそれを阻止するし…そしてラーマは
「日が明けたらガンムの森に来い。永遠に封印してやるよ。」
とそう言い残し去っていった。そして不穏な空気を残したまま、部屋での第二対談が始まった。
「おい!あれがほんとに英雄か!?それと俺の記憶がない時俺は一体どうなってるんだ?」
とエルシフが聞くと、剣は「奴のことは今はふせておこう…俺は剣を持つものを支配できると同時に、私が支配している者に力を貸すこともできる。だが、その者の意識はなくなり、私がその体の支配者になるのだ。」
「それって俺を乗っ取ってるんじゃないか!…でも、強くなるのか…その力があればゲラダにいじめられないのにねぇ…」
森を出る前に、剣はエルシフと話をしていた。
その時にエルシフはこの剣は悪い剣じゃないなとわかったのだ。
そして森の前に着いた。
決戦の夜明けまでまだ少し時間があった。
エルシフは剣を持ち、頭に鍋を被り、大きな木の盾のようなものを背に背負っている。
かなり不自然だが、エルシフなりの決戦防具なのだろう。「来たか。」
ついに奴は目の前に現れた。