その3過去
「ふぅ…この姿になるのも久しぶりだな。さてと。」
銀髪の男はそういうと、鋭い眼光でゲラダ達を睨み付けた。
「死にてぇ奴は前に出ろ。それともなにか?全員皆殺し希望か?」
皆殺しの剣をゲラダ達に突き付けて言った。
これを見て殺されないと思った奴はまずいないだろう。
「た、た、助けて〜!」
ゲラダ達は恐怖に怯えた表情で一目散に逃げた。
「フン!たわいもないな。ガキのくせに俺に逆らうからだ。」
と捨て台詞を吐いた剣は、この時ただならぬ気配に気付いてはいなかった…無事に家に着いたエルシフはただいま〜!というと素早く剣を二階にある自分の部屋に持っていった。
そして剣とエルシフの初対談が始まった。
「あんた俺に何したんだ!全く記憶がないうえに、ゲラダ達もいなかったじゃないか!」
「あぁ、あいつらは皆殺しにした。」剣の人間らしい冗談は、今のエルシフにはきつかった。
「はぁ!?何してんだ!バカヤロー!殺せなんて言ってないぞ!」
剣は小馬鹿にしたようにゲラゲラ笑う。
「嘘だ!あんなガキども皆殺し価値すらねぇよ!」
内心ホッとしたエルシフだが、明日は間違いなく違う目で見られるだろう。「そういえばあんたなんであんな所に刺さってたんだ?」
エルシフは首を傾げて問うと
「あぁ…あれは10年も前になるか…俺は魔王の剣として仕えていた。そうだ。世界を支配するために。」
今さら驚くことはないが、マサカァソードは魔王の剣だったらしい。
「まさかあんた魔王デミウルゴスの剣なのか?」
魔王デミウルゴス…この世界に10数年前から現れた異世界の魔王だ。
5年前に英雄ラーマに滅ぼされ、世界に平和が戻ったのだ。
「あぁ…そうだ。私はデミウルゴスに仕えていた。あのラーマの野郎に殺られるまではな。俺はその時洞窟の奥深くに封印された。しかし、誰かが私を解放してくれたのだ。そしてあの森に…」
静かに時が流れる。そしてエルシフは
「そうなのか…ありがとう。俺をゲラダから救ってくれて。」
おもいもよらないエルシフの言葉に戸惑う剣は
「助けたんじゃねーよ!あのガキどもがうざかったからだよ!お前も俺の第2の魔王にしたいだけだ!俺は誰かを支配しないと存在できないんでね!」その時だった!轟音が静かな夜空をかき消したのは。
「な、なんだ!地震か!?」
家が震えている。かなり強い地震か?と思ったが違った。
「エルシフ。奴だ。英雄ラーマだ。おそらく復活した俺を殺しにきたんだ。」
家に出ると確かにその姿があった。
しかし、英雄はおろかまるで地獄の牢番のような姿だった。
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