その2変貌
このガンムの森を出た頃には日がおちかけていた。
そもそもこのガンムの森に来ていたのも理由がある。
この森は大きな林檎がなることで有名だからいじめっ子に取りに行ってこいと言われたのだ。
そして偶然この剣と出会った。
呆然と恐怖で剣を持っている手は汗ばんでいる。
林檎もとれなかったので明日いじめられるのは確実だ。しかし、それを気にもとめない剣は
「エルシフ。そう暗い顔するなよ。世界をせいふ…みたらすぐに離れてやるって。ははははは。」
急にエルシフの足が止まる。
「おぃ!遅いぞエルシフ!!このゲラダ様をいつまで待たせる気だぁ!?」
目の前に現れたのはいじめっ子のゲラダと数人の部下(いじめっ子によくついて回る生徒)だった。
エルシフはじゃがいものようなゴツゴツした顔にナスビのへたがのったような頭のゲラダに向かって言った。
「林檎は…なかったよ…」「あぁん!?聞こえなかったからもう一回いってくれねぇか!?」
もう終わりだ…とエルシフは思った。
早くも短い人生にピリオドが打たれると確信したエルシフはただうつむいて剣を握っていた。「お前こんなナスビ野郎にいじめられてるのか?」
剣が言った一言は、この場を静まり返らせた。そして当然ゲラダは
「エルシフぅ…てめぇ…逆らうとどうなるかわかってるんだろうな…」
明らかに怒気を放ち、今にも飛掛かりそうな勢いだ。「フン!軽くアップだな。いや、お前なんぞ準備体操にもならんか…」
そう剣が言ったその時、エルシフの体から湯気が立ち込めてきた。
ゲラダ達は驚きを隠しきれずに見ていると、中から現れたのはエルシフではなかった。
黒髪のつまようじのような細い体つきのエルシフではなく、銀髪で長髪に赤い眼をした別人の姿がそこにはあった。