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風待月に君に  作者: ノベラー
第2章
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第6話 偽りの推理

僕は、咄嗟に閃いた事を口にする。

「そうだ!これも栗津さんが言っていたドラマのメイキング・ドッキリなんだよ」


「?……」


「栗津さんは、隠れていたスタッフに接触し、この計画の事を聞いたんだと思う。そして、彼らが隠れている場所に逃げるついでに血糊を撒き散らし、この現場を作り出したんだ。

 ……これなら彼の消失の謎が説明できるよ。

 彼の悲鳴だって、トイレから聞こえたとは限らない。隠し部屋か何かに逃げ込む前に、叫んだだけかもしれないからね」


これなら一応筋の通った話じゃないだろうか……な?


「……あ、そうか。そうなのね。……よかった。てっきり、栗津さんが殺されたのかと思ってしまって。たしかにそうよね。こんなところで殺人事件が起こるわけ無い。なによりも栗津さんは人に恨みを買うような人じゃないもん」


彼女は、ぼくの考えに同意したようだ。体中から緊張が解けるのが感じ取れた。

笑顔も戻る。そして、突然吹き出した。


「どうしたんだい? 」


「だって、せっかくスタッフのみんなが私を怖がらせようとして仕組んだ話なのに、新城さんが見破っちゃったから。

 これじゃあ、ちっとも怖くなくなっちゃった」


「そうだね、彼らの企画はパーかな」

僕たちは笑った。

本当は、笑う気分じゃなかった。全てが疑問だらけだからだ。

しかし、僕が感じているその疑問を解決させるような証拠はどこにもない。


「じゃあ、スタッフのみんなを捜してみようか? 何もせずにいるのは退屈だし。それに彼らもそれを待っていると思うからね」

僕は彼女を促し、この洋館を探索することを提案した。


何もせずにいるより、今は行動を起こすことだ。動いていれば余計な事を考えずにすむし、彼女も冷静になれると思ったのだ。


彼女は、さっきの出来事を忘れたかのように頷いた。


しかし……。

血溜まりを見たときの彼女の反応は異様だった……。

確かに血痕を見たら驚くだろうしショックも受ける。しかし、彼女のような反応は明らかにおかしかった。まるでかつて同じようなことに遭遇でもしたかのようだった。

今は落ち着いてるように見えるが、何時再び恐慌状態になるかもしれない。

何も考えずに集中できる状態をしばらく続けないといけない。


洋館の一階の構造は、玄関から一直線に伸びた廊下は、風化により薄汚れた赤い絨毯が敷き詰められていた。

その廊下は突き当たりの壁でT字に別れ、建物の四隅にあった円筒型の塔の部分の奥の塔で行き止まりとなっている。

また、玄関からこの廊下は、中央で館を横に分割する廊下と交差している。

建物を横に分断する廊下は、壁でL字型に折れ曲がり、これまた手前の塔の部分で行き止まとなっているだ。


つまり、左右対称の作りになっている。


廊下の壁はあちこちに漏水のあとが見られる。

……本当に手入れしているのか。


所々に作られた窓は内開きになっていて、がっしりとした鉄格子が外側に見える。


玄関を入ってすぐ、廊下の左右の部屋には、両開きの扉がある。

玄関からみて左の廊下にあるドアを開けると、食堂だったのか古ぼけたダイニングセットや長椅子、雑多な物が無造作に置かれてあった。

右側の部屋の方は、何もない、ただっぴろい空間があるだけだった。


食堂だった部屋の側の廊下を歩くと廊下は、食堂に沿ってL字に折れ曲がり、玄関側の塔へと到達し、そこは二階へと続く階段だ。


何もない部屋の側の廊下は、反対側と同様に玄関側に折れ曲がり、これまた塔へで行き止まりになっている。そこは倉庫になっている。

倉庫の中には、雑多な工具とかが置かれてあった。


そして栗津が消えたトイレへと続く廊下には、三つの部屋があり、一番手前の部屋には、何も入っていない本棚と、小さな椅子やテーブルが置かれていた。


二番目の部屋と三番目の部屋には何もなかった。


反対側のには、これまた同じように三つの部屋があった。

手前二つは、ベットルームらしい。一応泊まれるような状態にはなっている。

一番奥の部屋は、厨房のようだった。

壁沿いに左にまがると突き当たりの階段だった。


どう見ても、彼が隠れるような場所は無さそうだ。

かといって二階に行こうにも、ぼくたちの視界を通らずに行くことは、同じように不可能だった。


どこかに隠し部屋があるのか……。

そうして、そこに隠れているというのか。


しかし、撮影スタッフの数は、マイクロバス2台で来ていることから考えても30人近くいるのではないだろうか?


果たして、それほどの大人数が隠れる場所があるのだろうか。

建物の構造上、壁に隠し部屋があるとは思えない。だとすれば、地下室でもあるのだろうか?


「とにかく、二階へ行ってみましょう」

彼女に促され、僕たちは、二階への階段を上っていった。


二階の構造は、もっと単純だった。

四つの塔を起点としたH型の廊下が配置され、右側に大広間、左側に小さく分けられた6つの部屋があった。


大広間はリビングルームとして使われていたのか、ソファーやテーブル、書棚などが置かれてあった。 たしかに置かれた調度品は値段が高そうなものばかりに見えた。


左側の6つの小部屋には、ベッドが置かれてあったり、物置だったり、子供部屋だったらしい部屋があるだけだった。


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