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風待月に君に  作者: ノベラー
第2章
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第23話 闘い

再び、視界が暗転していく。


またか? と思った時、今度は、声が聞こえてきた。

地の底から響いてくるような声、初めて聞いた。


「誰だ、この平穏を乱そうとする者は……」

低く、低く、くぐもった声。

敵意に満ちあふれた意識が僕の全身に覆い被さってくる。


同時に、人の形をした影のようなものが具現化する。


それは、なんだか良く分からないけど強烈な意識だ。


何か得体の知れないエネルギーが、その影に満ちていくのを感じた。

僕を攻撃してくるつもりだ!!


破壊的なエネルギー波が、飛んで来る!!

そして交わす暇もなくまともに命中。


激しい痛みに、僕は呻き声を上げる。

何かがぶつかった痛さ、焼ける熱さ痛さ。

こんなの洒落になんない。


痛みをこらえ立ち上がる。

恐る恐る腕やら足やら体やらを見てみる。


どういうわけか無傷。

服も汚れてはいるが焼けたりしていない。


しかし、この痛み。

沸騰したお湯がかかったときのようなしびれるような焼けるような痛みはなんだろう。

ちょっと動くだけで服と皮膚が擦れ、全身に痛みが走る。

かなり酷い火傷をしているはずなのに外傷はまるでない。

この不思議な感覚。


逃げよう……。

でも逃げる場所はない。

そもそもいきなり戦闘かよ。


こちらには武器も防具も何もない。

そもそも経験値も獲ていない。


そして敵はスライムくんじゃあない。

いきなりの中ボスクラスだ。


そして、どう考えても物体ではない。

何かのエネルギー体だ。

こんなの殴ってもたぶん「すかっ」と空振りするだけなんだよね。

だめじゃん。


そんなことを考えてるうちに第二波の準備ができたみたい。


すっぱーん! と紅い光の球が飛んでくる。


一度くらっていたから予想できる動きだ。

痛みをこらえ、ぎりぎりまで引きつけてから、右に飛んで交わそうとする。


するとそのエネルギー体、まっすぐ飛ばずに僕の飛んだ方向へ、グイッとカーブしてきた。


「そんなんあり? 」

また直撃。


今度のは、さっきよりさらに痛かった。

火傷の上からさらに熱湯とかぶっかけられた感じ。

麻痺してるようで実は麻痺していなくて、さらに激痛が増す!


痛くて転がったら火傷箇所が擦れてさらに痛い。

その痛みでまた転がってさらに痛みが増すわけ。

地獄だ。


たすけてくれ……。

そんなこと言っても助かりそうにないし。


それにここでやられるわけにはいかない。

負けてばかりはもうこりごり。


奴の体にエネルギーが再び満ちてくる。


第三波だ……。


今度の食らったら、やばいかも。

頭の中で「死」の一文字が浮かぶ。


体は痛むばかりで、立っているのがやっとだ。

ダメージは、僕が一方的に受けるだけだ。こんなの拷問じゃないか。


それでも全身の痛みを堪えながら、僕は必死に奴を睨みつける。

それしかできないから。


いくら挑んでも、勝ち目が無い。このままではやられるだけなのかもしれない。

このまま攻撃を受け続け、黒焦げになって死んでいくだけなのか?


奴に再びエネルギーが漲る!!

いっそのこと、逃げるか? 降伏するか?


そんなささやきが聞こえてくる。

その声色はとってもやさしく、おだやかで、心地よい響き。


降伏すれば幸福になれるよ。←ダジャレか?

痛い思いより気持ちいいほうがいいでしょ?

泣くより笑う方がいいっしょ。

つらい思いするより、楽したいでしょ?

つらい思いばかりするより、楽して暮らしたいでしょ。

簡単だよ。

背中をむけて逃げちゃえばいいんだよ。

そしたらもうこんなつらい思いしなくていい。

あの時の連中のように君に背を向けて逃げだしゃいいんだよ。

どう?

どうよ。

どうなの?どうするの?

答えは分かってるでしょ。

さあさあさあさあさあさあさあ!


――さあ!!


「お断りだ」

思い切りクールに言い放った。

直撃食らったら多分死ぬんだろうけど、それでも構わない。


楽なほうがいいに決まってる。

おもしろい方がいいのあたりまえ。


でも今の僕はそんなのより大事なものがある。


それは約束。


「必ず帰るから」と約束したんだ。

だから絶対に帰る。

死んでも帰る。とにかく帰る。

何が何でも帰らなくちゃいけない。

そして彼女を無事この洋館から連れ出すんだ。


負けてたまるかあっ!!

発射され渦巻き回転をしながら飛んでくる熱球に僕は飛び込んでいった。


衝撃が来る。

激しく吹き飛ばされる感覚。




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