整理(帳簿の上に並べる)
セドリックは、幼なじみ三人の顔を順に見た。
エルネは布袋を抱えたまま、目だけで周囲を追っている。ロアンは苛立ちを飲み込み、護衛の位置を計算している。ヴィオラは帳簿を閉じ、指先で紙の端を揃えた。
「……明日の第二倉、俺ひとりじゃ足りない」
セドリックは淡々と言い、しかし語尾だけは柔らかくした。
「お前らを信じてる。だから頼む」
ロアンが眉をひそめる。
「急にどうした」
「急じゃない。ここから先は“念のため”が命綱になる」
ヴィオラが小さく笑う。
「念のため、って言うわりに、いつも核心を突くよね」
「核心は突く。人は突かない」
セドリックは紙を一枚取り、三本の線を引いた。
「一つだけ教えてくれ。“守りたいもの”の話だ」
「倉の中では、俺が勝手に決めると事故る。守りたいものがあるなら、先に聞いておきたい」
エルネが目を伏せる。
守りたいものほど、口にすると奪われる。
セドリックは追い詰めない。
「言いにくいなら今はいい。無理に言わせない」
「ただ、倉の中で何か選ばなきゃいけない場面が来たら――そのときは俺に合図しろ」
ロアンが低く言う。
「合図って?」
「“止めろ”でも、“任せる”でもいい。言葉は短くていい」
ヴィオラが指を立てる。
「じゃあ私は“計算が狂う”って言う。そういう合図でいい?」
「十分だ」
セドリックは最後に、三人を見た。
「お前らを疑ってるわけじゃない。逆だ。信じるからこそ、段取りを決める」
「明朝、第二倉。俺たちで抜ける」
——芯はまだ見えない。
だからこそ、言葉ではなく行動を記録する。
だが“口”は信頼で包む。信頼のふりではない。信頼の形を先に置く。
それが、紙の国で人を繋ぐ一番安い方法だ。




