第93話 この破壊力
父親が登城して騎士団長に会っている頃、私は普通に授業を受けていた。サクラやフィレン王子の誕生日プレゼントにする剣を完成させた事で、私はすごく上機嫌だった。
しかし、そのうきうき気分は、すぐさま打ち砕かれてしまう。
昼休みの事、食事をしようとして教室を出ると、なんと学園長と秘書に捕まってしまった。いくら私の体格がまん丸で、魔力とかがチート級だとはいっても、学園で問題を起こすわけにはいかない。そんなわけで、私はあえなく学園長の部屋へとドナドナされてしまった。
部屋に通された私は、そこで見た光景にひぇっと変な声が出てしまった。
なぜかというと、そこには父親とマントを羽織った見た事のない男性が座っていたからだ。少なくとも父親の顔が笑っていないせいで、私は恐怖を感じている。
「お、お父様? なぜこちらにいらっしゃるのでしょうか……」
私は恐る恐る父親に尋ねてみる。だがしかし、父親はそれには答えずに無言で私を見つめている。眉間にしわが寄っているので睨んでいると言ってもいい状態だった。私は震え上がる。
「マリー、こちらの方は私の友人であり、騎士団長を務めるサガリー・ハラミールだ。彼から話がある。そこに座りなさい」
父親がようやくを口を開いたが、非常に声が低い。間違いなく怒っている。
というわけで、私はものすごく恐怖を感じながら、対面の椅子に座った。ちなみに学園長も上座の椅子に座っていた。
「アンマリア嬢、と申されましたか。私、サーロイン王国騎士団の団長を務めるサガリー・ハラミールと申します。昼食時にお呼びたてした事を、まずはお詫び申し上げておきたい」
サガリー団長は騎士らしく丁寧に挨拶をしてきた。しかし、私は呼び出された理由が分からないので、とにかく黙って聞いている。
「本日、こちらに参った理由は、こちらの剣が原因なのであります」
そういってサガリー団長が取り出したのは、私が父親に奪われた魔石を使った剣だった。それを見て悟った。
(ああ、お父様ったら、団長様にこの剣を使わせたんだ)
私は天井を仰いだ。この剣、魔石とトレント木材を使った軽い剣なのだけれど、どういった効果があるのかなどはまったくの未検証だったのだ。
ともかく私は、あははと適当にごまかすしかなかった。
「ほぉ、これは面白い剣じゃな。見る限り、いかにも金属っぽいというのに、金属がまったく使われておらん。はてさて、これは一体どういう物かな?」
学園長もものすごく興味津々である。それを受けて、父親が事情を説明し始める。
「実はですね、この剣は昨夜、娘のアンマリアに見せてもらった剣なのですよ」
ほうほうと、学園長が相槌を打っている。
「それで、あまりにも見事だったので友人であるサガリーに使ってもらったわけですが……。ここで大問題が発生したのです」
父親が少し溜めて話をするものだから、私もすごく興味を持ってしまった。なにせ、この剣にどんな効果があるのか、私にも分からないからだ。
鑑定魔法を使う事はできるけれど、作る方に一生懸命になってしまって、その効果のほどを私はまったく知らないのだ。となれば、父親たちにもそれはまったく分からないはずである。予想がつくとすれば、魔石を使っている事から魔法との親和性がありそうだなーというくらいだろう。
この後は、父親とサガリー団長による、魔石剣を使用した感想がひたすらと続いた。いやまぁ、聞いているうちに私はどんどんと青ざめていった。まさかそこまで恐ろしいものになるとは思っていなかったからだ。
まず、簡単に片手で振り回せる事。思った以上に重量を感じないらしい。騎士団長のサガリーならまだしも、剣になじみのない父親ですらも簡単に振るえて、なおかつ恐ろしいまでの切れ味を発揮していていたらしい。
そして、魔石を材料にしているために、魔法を剣にまとわせる事が通常の剣よりも非常に楽だという事。前世のゲームで言うならば、魔法剣といったところかしら。それをいともたやすく作れてしまうらしい。
いや、私が気の回らなかった検証を、父親たちはしっかりと行っていたらしい。さすがだわ。
その結果、父親とサガリー団長は、この剣は危険と判断したとの事。それで私に忠告するために、わざわざ学園まで足を運んだらしいのだ。
「というわけだ。これは魔剣として製作を禁止する。いいな、アンマリア。二度と作るんじゃないぞ」
父親はこうは言っているものの、もうすでに二本完成しちゃってるのよね。ま、誕生日プレゼントとして渡すだけだし、言われるまでに作ったんだから、これはノーカンよね。
実は言うと、学園に出るまでにフィレン王子の分も作っちゃっていたのだ。一度作っちゃうとそんなに時間掛からないんだもの。そんなわけなので、
「……はい、分かりました、お父様」
私はしょげしょげした風に忠告を受け入れた。……すでに完成させている事は伏せておいて。
私に対して言うだけ言った父親たちは、学園長の部屋から立ち去っていった。その直後、昼休みの終了を告げる鐘が鳴る。あーあ、お昼食べ損ねちゃった……。
学園長にいろいろと慰められた私は、足取り重く午後の授業へと出向いたのだった。




