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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第三章 学園編

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第92話 騎士団長、現る

 アンマリアから預かった剣を持って、ゼニークは城に赴いた。ゼニークの城での役職は大臣だ。宰相ほどではないものの、場内ではそれなりの決裁権を持つエリート官僚なのである。

 数年前まではそこそこぽっちゃりしていたゼニークも、今やすっかり若々しさを感じる姿になっている。廊下を歩けば、女性の文官や使用人たちからは思わず声が漏れる程度の魅力を持っている。だが、彼は愛する妻と娘を持つ立場であるがゆえに、一切そのような嬌声に反応する事はなかった。

 この日のゼニークは、まっすぐ騎士団長のところへと向かった。

「サガリー、居るか?」

 騎士団長の部屋の扉をノックするゼニーク。すると、中から声が聞こえてくる。

「その声はゼニークか。どうしたんだ」

「ちょっと見せたいものがあってな。入ってもいいか?」

「お前が見せたいものがあるとは、珍しい事もあるものだな。いいぞ、入ってこい」

 ゼニークの言葉に疑問を感じたサガリーだったが、友人であるゼニークを断る理由もなかったので、部屋へと招き入れた。

 サガリー・ハラミールは、代々家が騎士団の要を務める騎士の家系だ。ミノレバー男爵家の上位互換であるハラミール侯爵家である。ゼニークと比べると爵位は上なのだが、幼少時からの付き合いが長いために気さくに付き合う間柄である。

 さて、そのサガリーの部屋に踏み入ったゼニークは、サガリーの前に布を巻き付けた細長い物体を差し出した。

「うん、何だこれは」

「娘が作った剣だ。どんな感じなのか、サガリーに評価してもらいたいんだよ」

 ゼニークの言葉に、サガリーはものすごく訝しむ。ゼニークの娘は太っているとはいっても今年学園に入学したばかりの正真正銘の13歳だ。しかも、伯爵令嬢が剣を打てるわけがない。だからこそ、サガリーはものすごく顔を顰めているのである。ふざけているのかと叫びたいのだが、ゼニークの顔が娘の自慢でほころんでいるので強く言えなかった。ゼニークは親バカなのである。

「……分かった。信じられない事ではあるのだが、早速見させてもらおう」

 巻き付いている布を取り払い、鞘に収められた剣を見るサガリー。この時点でサガリーは、剣の魅力に驚いてしまう。

「なんだ、これは。材質は木なのか? それにしては、この光沢……。あり得ないだろう……」

 あまりの美しさに声を詰まらせるサガリー。

「驚くのは早いぞ、サガリー。剣を抜いてみろ」

 ゼニークが言うものだから、サガリーは慎重に鞘から剣を抜いてみる。

「こ、これは……っ!」

 剣の刃の部分を見たサガリーは、その状態に驚いた。なにせこの剣、刃の部分が半透明なのである。向こう側が薄っすらではあるものの透けて見えるのだ。慎重に叩いてみると、しっかりとした硬さがある音が響く。なんとも不思議な感覚だった。

「うーむ、向こうが透けている割には、ちゃんと金属のような強度を持っている。この柄の部分も触り心地が木のような感じなのだが、光沢が不思議だ。どういう事なんだ、ゼニーク」

 サガリーはこの不可解な物体を前にして、ゼニークに詳細を問い質す。

「マリー、娘のアンマリアが言うには、剣の刃の部分は魔石、それ以外はトレント木材を使ったらしい。魔力を込めて変形させて、それを魔力で固めたというような事を言っていたよ」

「そんなバカな……っ!」

 ゼニークの説明に、サガリーは間髪入れずに突っ込んだ。

「あのペンの事があるから魔力で物質を変化させられる能力があるのは知っていたが、この規模の事ができるなど、前代未聞だ」

 サガリーは剣を鞘に収めると、部屋のドアの方へと歩いていく。

「ゼニーク、訓練場へ行くぞ!」

「試し斬りですな。私も早くその剣の切れ味を見てみたいものですな」

 焦ったような表情のサガリーとは対照的に、ゼニークの表情はものすごく高揚したように明るいものだった。

 訓練場へサガリーが姿を現すと、訓練中の騎士や兵士たちが一様に訓練の手を止めて直立する。サガリーはその動きには目もくれず、試し斬り用の藁人形の前にやって来た。

 一体何があったのかと騎士たちが騒めく中、剣を鞘から抜いたサガリーは、藁人形に袈裟斬りを決めていた。

 一瞬の事で、訓練場が一気に静まり返る。

 次の瞬間、藁人形はずるりと斜めに斬れ、上半分は地面に転がった。そして、それを見届けたサガリーは、剣の状態を確認した。

「……刃こぼれはない」

 剣を鞘に収め、藁人形の状態を確認するサガリー。その斬り口は鋭く、引っ掛かったような形跡もない。刃が素直に藁人形を斬り裂いた事がよく分かる。

「何なんだ。この剣は……」

 サガリーは驚愕の表情で剣を見ている。もう一度鞘から抜いて、片手で振り回してみる。恐ろしく軽かった。今までに見た事も聞いた事も触った事もない未知の剣に、サガリーの表情は完全に青ざめていた。

「ゼニーク」

「なんだい、サガリー」

 再び剣を鞘に収め、サガリーは突如ゼニークの肩を掴んで前後に激しく揺らしてくる。

「この剣は恐ろしいぞ。金属を使わずにこの切れ味だし、金属を使わないから軽い。この剣を表に出してはいけない」

「お、お、落ち着け、サガリー」

 がくがくとするゼニークが落ち着かせようと必死に叫ぶのだが、結局サガリーが落ち着くまでは10分近くを要したのだった。

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